#27
宝くじの抽選会場は結構込み合っている。
各々が宝くじを手に、抽選はまだかと待ち望んでソワソワ。
俺もアイテムボックスから宝くじを出して手にしておこう。
んん? これ、よく見ると、『宝くじ(交換補助券)』と書いてある……。
詳しく読むと『10枚で宝くじ1枚と交換できます』だと?!
なんてセコい手を使うんだエンドウ!!
手持ちの補助券は115枚。
全部交換してもらい、11枚の宝くじを手に入れた。
補助券5枚はいらないから、交換所の近くにいた女性にあげよう。
丁度5枚足りなかったそうで、感謝されたよ。
俺もいらないものを処分出来たので、WINWINと言えるね。
俺の宝くじは『ぬ-175』~『ぬ-185』。
……どういう仕組みなのだろう?
カンダさんに聞くか? いや、キジマさんに聞こう。
「この宝くじの抽選方法って知ってる?」
「知ってますよ。ステージ上に2つ、金網で出来ている球体があるじゃないですか」
あっ、あれは知ってる。ビンゴで使うヤツだ。
「まず左の球体を回します。そうすると文字の書いてある玉が一つ出てきます。
その文字が当たりの文字になります。
福田さんの場合は、『ぬ』が出れば当たりに近づきますね」
昔の富札方法だな。槍では刺さないけど。
「次に右の球体を回します。こちらからは数字の書いてある玉が出てきます。
福田さんの175~185の数字が出れば当たりになります。
つまり、左右の玉に書いてあるものが完全一致したら当たりです」
「判りやすい説明、ありがとう」
「いえいえ。ちなみに景品は1~5等まであり、5等から抽選します。
出た玉は戻すので、奇跡的に同じ文字・数字が出て2度当たる可能性もあるそうですよ」
「へ~、それはすごいな。過去に当たった人っているのかな?」
「1人だけいるらしいですね」
凄いなぁ。強運の持ち主がいたんだね。
俺はそうならないようにしないとね。また変な名前付けられるから。
「ところで景品は何か知ってる?」
「先ほどチラシを貰ってきました」
なんて使える人なんだ!
でもカンダの彼女。ケッ!
今回の宝くじの景品は、
1等:鑑定の眼鏡…1個
2等:運気底上げのイヤリング…1個
3等:「髪神温泉」ペア旅行券…5枚
4等:10万円分のカード…10枚
5等:選べるカタログ(5万円)…10枚
となっていた。
欲しいのは1等と3等だ!
特に1等の鑑定の眼鏡は欲しい! すごく便利だと思う!
どおりで商人っぽい人が会場に多いと思ったよ。これが目当てなのか……。
3等も悪くない。
髪に効く温泉で、往復移動費・宿泊費(1泊)が出るそうな。
会場には商人と同じくらい、薄い人が多い。何が薄いかは察せ!
ペアチケットなので、当てた場合は相手を探さないと……。ウエダ? 男と2人旅なんてイヤだ!
とりあえず3等までは当たらなくてもいいや。
ステージに司会者が出てきたので、そろそろ始まるようだ。
「早速、第257回宝くじ抽選会を始めま~す!!」
ワー、パチパチパチ
「本日は帝王も参加してますよ~! 皆さん、景品は一つ少ないと思っててくださいね~!」
なんて事を言うんですか、司会のお姉さん!!
「ギャー!!」「マヂか?!」「別枠にしろよ!!」「詐欺だ!!」「ヒドイ!!」
「人でなし!!」「フサフサのくせに!!」「ハゲロハゲロハゲロ…」「高く売りつけてやる!!」
「今度の商売に支障が……」「すでに強運のくせにまだ上げる気か?!」「モゲろ!!」
周りの人からの罵声がヒドい。
罵声だけでなく、呪いや恨み、悲壮感が漂っているモノまであるのだが。
しかし、誰だ! モゲろなんていったヤツは! 俺はリア充じゃないぞ?!
「帝王さんには、スペシャルゲストとしてステージに上がってもらいましょう!!」
何でだよ!!
俺の抵抗も空しく、周囲の人間によってステージに上げられてしまった……。
抵抗出来ない自分が悲しい。ちゃんとレベル上げしよう……。
「はい、帝王さん! 挨拶をお願いしま~す!!」
何この羞恥プレイ。
イジメですか? イジメですよね?!
グイグイとマイクを押し付けてくるお姉さん。
「え~、何故か紹介された福田です」
その途端、帝王コールが始まった!
中には「金返せ!」「帰れ!」「ハゲろ!」「モゲろ!」という声も混じっているが……。
「帝王さん、もっと何か盛り上がる事言ってくださいよ~」
何このお姉さん!! ムチャ振りばかりしてくるよ~!!
え~い、なら言ってやろうじゃないか!!
「俺は宝くじを11枚持ってるぞ! 全部『ぬ』だからな。
だから『ぬ』が出たら、全員諦めろよ!!
特に1等と3等は狙ってるからな!! 地獄に落としてやるぜ!! ゲハハハハ!!」
……調子に乗りすぎました。
でも会場はかなりヒートアップした。
これで満足だろ? お姉さんよ?!
「ちょっと言い過ぎですね~。面白くなくなるから、全部当てるのは止めてくださいね~」
ヒドイ!! 俺頑張ったのに?!
チラリと仲間を見ると、二人揃って笑いを堪えてやがった……。
よし、同じ舞台に上げてあげようじゃないか。
二人を見ながらニヤリと笑う。
するとキジマさんは察したのか、ひたすら頭を下げている。
よし、キジマさんは許そう。だがカンダは犠牲になってもらうぞ?
「司会のお姉さん、あそこに俺の仲間のブルーが居ます。呼んでも良いですかね?」
「えっ? あ~本当だ~! ブルーさん、ステージへどうぞ~!」
カンダさんは予想通り固まった。だが、周囲の人間の神輿作業によってステージに運ばれてしまう。
キジマさんはとっさにしゃがんで隠れたようだ。
「はい、ブルーさん登場で~す! 一言お願いしま~す!」
ほれ、俺を笑ったのと同じ状態だぞ? 気の利いた事を言ってあげなよ。
「……い…………」
「い?」
「依頼主の勇姿ゆうしを見て! 感動で震えてただけなのに!
変な名で呼んでステージに上げてさらし者にし! さらに何かを言えと言う!
正に! ゲスのきわ『言わせね~よ!!』」
お前はハマ○ーンか?! カンダだからか?! あれっ、言うのはカンダだったっけ? 相方だったっけ?
それよりも! 今はそれを言ってはいけない気がする!!
とあるバンドを思い出すから!!
「はい! ヤバい気がする一言頂きました~! 自重してくださいね~! では抽選に入りま~す!」
お姉さん、プロだな! さらっと流したぞ!
「不正の無い様に、観客の中から抽選する人を決めま~す!
まず最初は5等の抽選をするので、帝王さん、適当に二人選んでくださ~い!」
なるほど。適当に選んだ人が抽選するなら不正のしようが無いって訳ね。
俺は最前列にいた2人の薄い人を選んだ。何が薄いかは内緒だ。
タカシとツカサという名前だそうだ……。
ステージにはボタンが4個あり、2個がスタートボタンで2個がストップボタン。
2対になっており、それぞれが文字と数字の球体と連動してるそうな。
まずはツカサがボタンを押し、文字を決定させた。
「はい、出ました~! 文字は! 『さ』で~す!」
観客は動揺している。
俺の持っている宝くじの『ぬ』じゃないからだろう。
俺は5等には興味無いのです。スルーです。
こんな所で運を使ってる場合じゃありません。
そんな事を知らない観客は『さ』を引いたツカサを賞賛している。
ツカサは気分が良くなってきたようで、マイクを持っていた。
「これくらい当たり前だろ? 俺を誰だと思ってるんだ? 『ツカサ』さんだぞ?」
ネタはいいから、はよ次にいけよ!!
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