#20

先ほど聞いた話なのだが、このカジノの町は19時になると花火が上がるらしい。


毎日の事で、それが目当てのお客さんもいるくらい人気だそうだ。


いつも暗くなる前に帰っていたから知らなかったが。


その事を知った時、それが全ての始まりだった……。






現在時刻は18:50。今ならいける!!


俺は、ウエダさん・カンダさん・キジマさん・オザキさんを集め作戦会議を始める。




「これから俺の言う事をよく聞いてくれ!


 このバカげたガチャを攻略する方法だ!


 1人3回だから15個の当たりを手にするには、当然5人必要だ。協力して欲しい!」


「協力ってどうするんですか?」


「お金は俺が払う。だから1人3回ガチャを回して欲しい」


「回すのは良いですけど、当たりませんよ?」


「当たらなくても怒らないから心配いらない。それどころか、回してくれれば報酬を出す。


 その代わり、当たった場合の商品の権利は俺に譲って欲しい」


「まぁ、金を出してもらってるんだから、当然そうなるわな。


 ただよぅ、それは俺達が当たりを引けたらの話だろ?」


「その通り。普通に考えたら不可能な事だ。


 だが、俺には全員の運を爆発的に上げる方法を知っている!」


「「「「おーーーーー!!」」」」


「今からそれを教授するので、皆覚えて欲しい!」


「まかせな、師匠!」


「やらせてください! キング!」


「え~と、私も参加するのかしら……?」


「ふむ、私の店の参考になるかもしれませんな。協力しましょう」


「よし! じゃあ皆、こっち来て。ボソボソボソ……」


「え~マジ?!」「本気ですか?」「私もやるの……?!」「面白そうですな」


「一言を考えておいてくださいよ!」






店内の時計を確認し……よし! それじゃあ行くぜ!!






まずは俺がガチャの前の舞台に上がる。


「今日も赤いガチャを回すぜ、レッド福田!」




次はカンダさんだ。


「今日は頑張ります? ブルーカンダ!」




そしてお笑い枠。当然ウエダさん。


「ジャックと呼ぶんじゃねぇ! イエローウエダ!」




紅一点。


「え~と、巻き込まれました……。ピンクキジマ!」




最後に支配人。


「同じ支配人でも手加減はしませんよ! グリーンオザキ!」




「5人揃ってガチャ回す! 俺達、「「「「「5レンガチャ!!!!」」」」」


ドーーーン




決めポーズと同時に19時になり花火が上がる!!






ふっ、決まったぜ(笑)




えっ? なぜ戦隊モノみたいな事をしたかって?


運を上げる為に決まってるじゃないか。




はい、ウソです。


これで俺以外にも変な名前が付いたよね。俺だけ恥ずかしいのは許さん!


ポーズや花火は意味ありません。




観客という野次馬は全員ポカーンだ。


よし、今の内にガチャをしてしまおう。




「じゃあ回しますよ~」


「ちょっとちょっと! 何5人で回そうとしてるんですか?!


 このガチャは福田様専用ですよ?!」


「そんな話は初めて聞きましたが?」


「前回も同じ色のガチャで、そう説明したじゃないですか!」


「でも、今回は場所も大きさも確率も違いますよね? 同じでは通用しませんよ?」


「そう言われても困ります!」




言い合っていると、オザキ支配人からの援護射撃が来た。




「おいおい、エンドウ君よ。自分の説明不足はどうにもならないぞ?」


「しかし……」


「ギャンブルにとって、説明は契約と同じだよ。説明をしないのなら書いて張っておくくらいはしているのかね?」


「……していません」


「ならば後から変更する事は無理だよ。


 くじ引きでもそうだろう? 誰も詳しく説明しないが、壁に当たりの玉の色は書いてある。


 だから白の玉が出ても『当たりだ!』と誰も言わない。白はハズレと書いてあるからだ。


 何も書かずに出た玉の色を見て、後から『その色はハズレです』って言われても納得できないだろ?」


「……その通りです」


「今回は自分のミスを認めたまえ。何、私も回すんだ。全部当たる事は無いだろう」


「……判りました。認めます。その代わり、ここの5人のみに限定させてください」


「それでいいだろう。どうですかな? 福田様?」


「はい、問題ありません。


 では、最初はブルーカンダさんからお願いします」


「……もうブルーはやめませんか?」


「当ててくれたらもう言いませんよ」


「じゃあ言われ続けるって事じゃないですか! もう判りましたよ、回しますよ。恨まないでくださいね!」




俺は心の中で『当たったら譲ってもらえるんだ! 嬉しいな! 幸運だな! ラッキーだな!』と唱え続けた。

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