#15

事情聴取は昼までかかった。


ナミちゃんは途中で帰ってしまったけど。


強盗A&Bはギルドの認定剥奪の上、刑務所行きだそうだ。


聞いた話だが、冒険者ギルドに加入している者が犯罪を犯すと、一般人より罪が重くなるそうだ。


武器を持ってるからなか?


ついでに言うと、王族や貴族の場合は死罪になるらしい。(詳しい取調べをして有罪になればだが)


立場が上の人は大変だね。いや、上の立場だからこそか? 前世もそうだったら良かったのにと思う。




今度こそ帰る!


ポチよ、待たせてゴメンな!!


今帰るよ!! ヒャッハー!!




「おい、福田さんよ、依頼に応募があったぜ!」




俺はまだ帰れないらしい……。






冒険者ギルドの2階には会議室があり、そこで紹介される事になった。




「俺はカンダ。赤色だ。よろしく!」


「私はキジマ。同じく赤色よ。よろしくね」




応募してきたのは男女の2人組だった。




おっと、色についての説明をしておこう。


加入したばかりは青色、それから緑→黄緑→黄色→オレンジ→赤→ピンク→銅→銀→金、となってる。10段階だ。


どんなに強くても青色スタートで、ギルドが実績を認めると上がっていく。


実績とは、依頼の達成回数・依頼主の評価・達成した依頼の質、などなど。


青色でも実績次第ですぐ上がれる。逆に実績が悪いとすぐ下がる。最悪剥奪される。


ちゃんと真面目にやれば黄緑くらいまでは簡単に上がれるらしい。


ちなみに強盗A&Bは緑だったそうな。




つまり、この2人、赤色って事は結構上じゃないか!




「よろしくお願いします。しかし、何でこの依頼を受ける事にしたのですか?」


「あぁ! 敬語なんか使わなくていいですよ! 依頼主さんなんだから!」


「いえ、まだ決まった訳ではないので。それに自分は青色ですしね」


「色は関係無いですよ。登録が早いか遅いかの違いですよ」




おお、色での偏見無しか。なかなか良い人に見えるなぁ。




「で、何でこの依頼を受ける事にしたのですか?」


「恥ずかしいお話なんですが、カジノの町でお金を使いすぎてしまいまして。


 ダンジョンのあるこの村で稼ごうと思い来たんですよ」




カジノの町? なんかイヤな予感がする……。




「そうしたらキングが依頼を出してるじゃないですか! これを受けない訳無いですよ!!」


「そうです!! あの見事なガチャの腕前!! シビレました!! サインください!!」


「キングはやめろーーーー!!」




思わず叫んでしまった。


イヤな予感的中だよ!! こんな事で運を使いたくなかった……。




「す、すみません!! そうですよね。イヤですよね」




キジマさんは判ってくれたようだ。




「ほら、だから言ったじゃない! 今は皇帝なんだから、キングなんて呼んだら失礼よ!!」


「俺は帝王って聞いたぞ? どちらか判らないからキングにしたんだよ」


「どっちでも良いわ!!


 どうでもよいが、ガチャの所では「皇帝」と、トランプの所では「帝王」と呼ばれてたんだよ。


 統一しろよ! いや、呼ぶなよ!!」


「「では、やはりキングですね?」」


「やめろ! 俺の名前は福田哲司だ。そう呼んでくれ」




なぜか2人とも不満そうな顔だが、雇うのを止めようかと言ったら福田さんと呼んでくれる事になった。


しかも交換条件と言われて、キジマさんのカバンにサインをさせられた……。


『キングよりキジマさんへ』って書いてくださいっていうのだけは阻止したけどな。


何この羞恥プレイは?!




いかん、このままでは恥ずか死になる!


考えを変えよう!


そうだよ、これだけ(不本意だが)尊敬されてるならダンジョン内で裏切りにあう事もないだろう。


安い金額で赤色の冒険者を雇えるんだから得じゃないか。


うん、得だよ得。終始尊敬の目で見られても得なんだよ。……得なのか?




「ま、まあ、とにかく! 2人とも雇う事にするよ。明日の朝からで大丈夫か?」


「はい、大丈夫ですよ、キンいや福田さん」


「キン? まぁいいや……じゃあお願いします」


「「はい!」」




明日は頑張ろう。1日かけて話せば変な呼び名は払拭されるハズだ!


レベル上げ? それは後回しだよ! 名前が優先だ!!




そうだ、最後に聞いておきたい事があったんだ。




「そういえば、何故カジノの町に? いや、ギャンブルをしに来たのは判るけどさ」


「家が当たるガチャがあるんですよ! それを目当てに来たんですけどね」


「そんなのがあるんだ~。凄いなぁカジノの町」


「キンいえ福田さんならすぐ当てると思いますが、私達ではなかなか……」


「キン? キン?? キンとは何かな?」


「キンなんて言ったかな?! え~と、そう! 緊張するって言いたかったんです!」


「……そうですか。そんなにガチャ回すのに緊張するかい?」


「しますよ~。だって家が当たったら結婚するつもりですから。ね?」


「私は無理だと思ってますけどね。無難にお金貯めて買えば良いと思いませんか?」




チッ! ここにもリア充が居やがった!!


爆裂四散しろ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る