#7

俺達はさっさとスロットの店を後にする。


ウエダさんは「他の台も打とうぜ!」と言っていたが、「スロットの後はメシの約束だろ!」と押し切った。


近くで発見したメシ屋に入ろうとしたんだが、「あいつキングじゃないか? ヒソヒソ」と聞こえてきたのでやめた。


結局、屋台で色々と10万円分も買ってカバンに入れ、これを帰り道の馬車の中で食べようと決定。


馬車置き場まで戻ったので、換金して帰る事に。




「すみません、帰るので換金をお願いします」


「はい、判りました。カードを出してください。


 …………では、90万9500円です。お確かめください」


「はい、ちゃんとあります」


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています、キング」


「な、なぜ、それを……?!」


「フフフ、もう有名になってますよ?」




半日で有名人になってしまった……。


まぁ2~3日も行かなければ、忘れられるだろう。




「そういえばさぁ、ウエダさんは全然ギャンブルしてなかったけど、いいのか?」


「あぁ、いいのいいの。あんなの見たら当たる気がしねぇよ」


「そ、そうか……」


「気にスンナって! 良いもの見れて幸運だったと思ってるぜ、キング師匠(笑)」


「合体させて言うな!!」




カジノの町を出てウエダさんの自宅に向かう。


ウエダさんの住んでいる所は「オオキの村」って名前だそうだ。


カジノの町から馬車で1時間で着くらしい。




村に行くまでにウエダさんと色々な話をした。


・結婚していて、子供もいる


・普段は雑貨屋をしている


・村の近くにはダンジョンがある


・ダンジョンが目当ての冒険者が来るので、村は結構栄えている


・ダンジョンにはモンスターが居る


・ダンジョンは10階まであるらしいが、そこのボスを誰も倒せない


・外にはモンスターはいないが、野生の動物がいるので夜は危ない




結婚しているとは驚きだ! しかも子供まで!


そんなんでギャンブルとかしてていいのか?




ダンジョンは気になるが、まだレベル1だしなぁ。HPも少ないし。


レベルが上がるとかHPが増えるアイテムが当たれば良かったのに……。


観光がてら、入り口くらいは見てみよう。




そうこうしている内に、暗くなる前に村に着いた。




「ここが俺の雑貨屋兼家だ!」


「お~! 結構大きいじゃないか!」


「冒険者のお陰で結構儲かっているからな。ささ、入った入った!」


「おう、お邪魔します」


「あなた、お帰りなさい。おら、その人は?」


「お父さん、お帰り~! お土産は~?」


「この人は福田さん。俺のギャンブルの師匠だ!」


「いえ、違いますからね?!」


「何言ってんだよ、師匠。ほら、ナミも挨拶しねぇか!」


「ナミです! 5歳です!」




奥さんは綺麗な人だ。黒髪で今はポニーテールにしている。前世にいたら女優でも不思議じゃない。


和服とか似合いそうだ。くそっ、ウエダめ、爆発しろ。


子供のナミちゃんも可愛らしい。大人になったらモテるだろうな。死ね、ウエダ。


今俺が魔法を使えない事を感謝しろ!




ナミちゃんがお土産を所望してたので、身代わりの指輪を1つプレゼントした。


ウエダさんが驚いてたが、多分いつでも当てれると思うので問題ない。


というか3個もいらない。


ナミちゃんは大喜びなので、いらない物を処分ついでというのは内緒。


奥さんにもあげようと思ったが、人妻に指輪を贈るのもアレなので、屋台で買った物を大量にあげた。


とても喜んでくれて、今晩のおかずにするそうだ。






翌日。


俺はダンジョンを見に行く事にした。


面白そうじゃないか、ダンジョン!


異世界に来た!って思わない?


ウエダさんと奥さんは雑貨屋の仕事があるからと、ナミちゃんが案内してくれる事になった。


指輪をあげたせいか、なつかれてしまったな。


あっ、俺はロリコンじゃないよ?!


指輪くらいしかあげる物が無かったんだよ?!




「哲司兄ちゃん、早く早く~!」


「はいはい、落ち着いて。初めてなんだから、村も見せてよ」


「村の中なんか後でも見れるよ~。早くダンジョンに行こうよ!」


「あ~もう、判ったよ」




俺は、ナミちゃんから「哲司兄ちゃん」と呼ばれている。


おじさんと言いかけたので、指輪を取り上げるような動作をしたら兄ちゃんに変更された。


俺は悪くない。いくらウエダさんと同じような年でも、子持ちとは違うのだ!!




ナミちゃんの案内でダンジョンに着いたのだが、これダンジョン?


どうみても洞穴と言うか、鍾乳洞の入り口って感じですけど……。

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