第6話 家と幼馴染
家に着いてみると、そこは立派なレンガ造りの家だった。まあ、シェアハウスというものらしい。
遼の言っていた「隣」というのは、私の住むシェアハウスの隣のシェアハウスに住むということだそうだ。
私はシェアハウスに着くなり「ありがとう。またね」と言って、さっさと中に入ろうとした。
いや、だって……。普通に考えたら、もさっとした一般人な私と、端正な顔立ちで高身長で綺麗なロングの黒髪の男の遼が一緒のところなんて、あまり見られたくないじゃない。
恥ずかしい……。
まあ、やっぱり自分に自信がないから恥ずかしいという気持ちになってしまう。
恋人に間違えられても、嫌だし……。申し訳なくて。
なんて思っていると、遼が私の額をぴしっとデコピンしてきた。
「ちょっと! 何するの!」
「ん、なんか元気なかったからな。元気出たか?」
「……出たかというと、出たけど、うん」
「出てねえじゃねえか、心配だなぁ。あ、そうだ。お前の部屋に泊まってやろうか。うん。いい考えだ」
……この顔面偏差値が高い男は頭はどうやらあまりよくないようで。そう。貞操観念のような、そんなものが足りていない。
イケてるメンズを前にうら若き乙女が何もしな…いやいや、私は今一瞬何を考えた。
逆よね。普通。
女の子の部屋に男が入るもんじゃありません! って、なるところ。
「お、あ、あの、男の人が簡単に女の子の部屋に入っちゃいけません!」
そう言うと、遼はきょとんとしながら「あ、そっか」と言った。
「でも、俺達の仲だろ。前はよく一緒に寝たじゃん。昼寝」
「ただの昼寝も、もうダメ! 年齢考えてよ!」
「おっ、調子出てきたな。よかった。じゃあ、俺帰るわ。また明日、学校に行く前に迎えに行くから待ってろよ。じゃーなー」
遼は私の返事を待たずに隣の家に入っていった。
……あの、宇都宮さん。
私、こんなギフト要りません。
だって、嫉妬されるの目に見えてるじゃないですか!
「はあ……。ただいま、です」
私が家に入ると、そこには共有スペースがあって、他の住人達が集まっていた。
よくよく見てみたら、どこから集めてきたのっていうくらい、美男美女が勢ぞろい。
……そっか、ここ、男女共同だった。
というか、これも宇都宮さんの仕業だな……!
次に会った時には覚えていなさいよ!
「あ、新入りちゃんだ。こーんにーちは。私、
背の小さな、ふわふわのウェーブのかかった長い髪の可愛らしい女の子がそう言った。
「刹那さん……ですね。よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をすると、その刹那さんは品よく笑った。
他の皆も笑っているけど、でも嫌な感じはしなかった。
月の光のような色の長い髪をした女性が、私に微笑みかける。
「そんなに緊張しないでくださいね。皆、結構親しみやすいタイプですから……。とりあえず、立ち話も何ですから、こちらへどうぞ。ソファーに腰をお掛けくださいな」
私はなんだか恐縮しながら、ソファーに腰を掛けた。
一緒にやっていけるか、不安だ。
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