34.パーティー対抗戦⑤

「はぁ……、はぁ……」


「はぁ…はぁ…はぁ…」


 なんとなくこの男が次にしてくる動きはある程度予想出来るようになってきたけどそこまでに少し時間をかけすぎてしまった。

 体力の限界も近いはずだ。

 もちろん相手の男もだ。

 ここからは我慢の戦いになるだろう。


「やっぱり強いな、エトは」


 あの時から引き続き、この男はよくわからないことを口にしている。

 前の続きだとか、やっぱり強いなとか、平然にフルネームを知っていたりと。


 もしかしてこの男も僕と同じで相手の情報を見る事のできるスキルでも持っているのかもしれない。

 となると男が使っているスキルは冰化真刀グラセ・ブレイドと情報を見るスキル。

 どちらも厄介だ。


「なんのことだかわからないが早く決着をつけよう。ルルが暇になって寝てしまうかもしれないしな」


「そうか。仕方ないよな。望み通り早く決着をつけよう。ただし今回は俺の勝ちだがな!!!!」


 男はこちらに向かって走ってくる。

 

 次は何をする気だ。

 氷でも生成するのかそれともそのまま剣をぶつけにくるのか。


 男の冰化真刀グラセ・ブレイドは攻撃手段が様々で予測は立てられても一つに絞るということは到底不可能だ。

 導き出した複数の選択肢の全てに対応する。

 それがこの男の冰化真刀グラセ・ブレイドへの対抗策。


「行くぞ」


 第一の予測。

 最初と同様に剣を振ることで僕の周辺に氷を生成し行動を不能にする。

 これへの対抗策は一箇所に留まらないということ。

 距離を取るというのも兼ねて後方へと移動する。


「そう来たか」


 第一の予測は違うかったようで男はまだ走ってくる。


 第二の予測。

 後方へ移動したところを後ろから氷を生成し同様に行動を不能にする。

 これへの対抗策としてあえて男に近づく。

 こうすることで残された第三の予測だけが残される。


 第三の予測。

 両者の剣と剣同士のぶつかりあい。


「スキルを使わない純粋なあの時の戦い、成長した今に勝敗を決めよう、エト!!!!!」


「よくわからないが勝つのは僕だ!!」


 僕と男の剣は激しくぶつかりあう。

 辺りは衝撃で風が起こり地面に転がる石ころなどを巻き上げている。


「なんということでしょう!! 今、二人の熱い戦いがついに終わりを迎えようとしています! 近年稀に見るBリーグのこの熱い戦い、目に焼き付けましょう!!!!」


 ぶつかりあう剣を突き放し一瞬の隙に斬撃を放つ。

 しぶとく反応する男だがどうやらそれは完全ではなかったようで腹部にかすり傷が出来ていた。


「斬撃、厄介すぎるぞ、エト」


「君のスキルこそ厄介だと思うけどな」


「んじゃおあいこで」


 再び走り出した僕たちはこれまでよりも激しく剣をぶつけ合い互いに限界までの力を出そうとしている。


「なぁ、エト。聞いてもいいか」


「戦い中に聞くことなんてあるのか」


「あぁ、もちろん重要なことだ。もしこの戦いに勝って運良くAリーグのやつに勝てたら何を貰いたいんだ?」


「あんまり考えてなかったけど強いて言うならちょっとした家とかかな。今の僕の家はそこまで広くないし快適でもない。そこにみんなを住まわせているのはなんだか心苦しくて」


「そうか」


「みんながそれについてどう思ってるかはわからないけどどうであれ僕はその願いを叶えてみたい。僕についてきてくれたみんなにお礼をしたいんだ」


「随分自分勝手だな」


「まぁ、夢なんて自己満だから」


「…………」


 一度離れ互いに息を整える。

 

 今の僕の気持ちはただただ楽しい。

 それだけでしかない。それだけが僕の中にある。


 そして呼吸を整えた僕たちは再び剣のぶつかり合いを再開する。

 両者一歩も譲らない戦いを。


「君はもしもだけど勝ったら何が欲しいんだ?」


「そうだな、お前とか」


「えっ?」


「強いて言うならエトが欲しいな。もしかしたら気が合うかもしれないし」


「それは丁重にお断りさせてもらう!」


「全くそれじゃあ勝つ意味がなくなるだろ!!!」


「そんなことは良いから早く終わらせよう」


「わかった。負けたら罰ゲームだからな!!!」


「!?」


 僕の視界には一瞬かつての光景が浮かんだ。

 アルスと戦っている時のように楽しい。


「ウグッ!!!」


 まずい。

 余計なことに気をとられてしまっていたせいで僕の腹部に男の強烈な拳がめり込んだ。


 体力も限界に近いこのタイミングでこの攻撃を喰らったのは痛手すぎる。

 現に立っているのが辛く感じてきている。

 ここまで来たのに終わってしまうのか。


「エト!!!! 頑張りなさいよ!!! 何をしてるの!」


「エト、私の作った剣で勝利を勝ち取って!!」


「エトさん! 頑張ってください!!!」


「みんな…………」


 あぁ、こんなところでくじけてたらこの先また後悔してしまうかもしれない。

 もがけ僕、耐えろ僕、抗え僕。


 体に残る全部の力を剣を握るこの手に注力する。

 そしてあとはそれをぶつけるだけだ。


「おらぁああああああ!!!!!!!」


「くっっ!!?」

 

 防ごうとする男の剣を剣で薙ぎ払い防御を封じる。


「まだそんな体力があったのかエト!!!!」


「行くぞ!!!!!!!!」


***

***


 もし僕があの時、あんなことをしていなかったら会えていなかったのかもしれない。

 間違った行動だったとしても未来ではそれを良かったと思える。


 そして今、エトに再び出会えた。


 でもエトには新しい環境が出来て新しい仲間もいる。

 それにやっぱり強い。

 強くなった。


 出会えたこの瞬間からも時が流れる。

 もし俺を知らないのならどれだけの時間が流れようともエトが思い出すまで変わらず俺でいよう。


 どんどんと変わっていくエトの隣に俺は昔のように変わらず居られるのかな。


***

***


「リーダー対決を制したのはエト・アルハドール!!! そしてBリーグの勝者に輝いたのはピョコット!!!!!!!!」


 勝った、勝った、勝った。


「勝ったぞ!!!!!」



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