31.パーティー対抗戦②

「エトさん、起きてください! もうすぐで始まります!!」


「……そんなに寝てたのか」


「えぇ、それはもうぐっすりと寝てたわ。私の太ももの上でね」


「これはこれはどうも」


「いいから早く起きなさいって。もう番来ちゃうんだから」


 どうやら干し肉を食べたあと眠ってしまったらしい。

 朝も早かったうえにこんな暇な時間が出来てしまったら仕方ない仕方ない。


「これより勝者を決める試合が始まります!! 見事の最終戦に残ったのはピョコット、ガチデカチマス、アルアルです!! 最終戦では一パーティーごとに一戦行います。そう、最後は運も味方にする必要があるのです! これから行う最終戦では勝ったほうが勝者決定戦へ、負けた方は三位となります。そして選ばれなかったパーティーはそのまま勝者決定戦に進めます。さぁ、最初の戦いは――ピョコット対ガチデカチマスです!!!! さぁ、どんな戦いが繰り広げられるのでしょうか! 期待が高まるばかりです!!」


 最初の相手はガチデカチマスか。

 名前からして勝つ気満々ということはすごい伝わってくる。


 しかし重要なのはそこじゃない。

 このパーティーがどれだけの実力なのかだ。

 やはり観戦出来ないってのは相手を分析することもできない。

 ぶっつけ本番の戦いだな。


「行くか!」


「次もけちらしてこー」


「なんか足濡れてる……よだれよだれ? はぁ?」


「ディアさん、さっき自分で水こぼしてましたよ!」


 僕たちはいつもの調子で待機室を出た。


***


「やっと骨のありそうな人と戦えるってことでいいんですかね。これは」


「は、はぁ」


 ガチデカチマス。

 パーティーの人数はこっちと同じで四人のようだ。

 リーダーは恐らく先ほどから話してきているこのメガネをかけている人だろう。


「あ、一応よろしくお願いします」


「こちらこそお願いするよ。一位の座をこんなところで譲ってくれるということに対して」


 なんだこのメガネ。

 嫌味を言うのがそんなに好きなのか。


「それでは始めますよぉ!!!!」


 僕たちはその声に反応して鞘から剣を抜いて構える。


「試合開始!!!!!」


 大きな歓声の中試合が始まったがその瞬間、メガネの人がいつの間にか僕の目の前に剣を持ってやってきていた。


「反応が遅いのは致命になりかねないですから、御用心を」


「!!?」


 とっさに剣をぶつけなんとか攻撃を防ぐことが出来た。

 そして僕とメガネの人の剣が交差してぶつかりあう。


「これは……良い剣ですね。しかしッ!!! 私の剣も負けてないということをお見せしようと思います!」


「……速いッ!!」


 メガネの人は一瞬僕から離れたあといつの間にか背後にいた。

 これは恐らく高速移動化、敏捷性向上、身体強化とか何かしらのスキルなのだろう。


「はッ!!!」


 メガネの人は移動しては何度も僕に剣を振りかぶってくる。

 その度に僕は剣で防いでいるがその全てが明らかに一秒遅い。


 メガネの人の速さについていけていない証拠だ。


「ルゼル、俺らも入れろって。忘れるな」


「そーですよ! 忘れられると困ります」


「私達もいつも通りにやりましょ」


 ついにあっちも動き出す気のようだ。

 僕はディア達に視線を送り合図を出す。


「わかったわ! ナフィー、行ってきて!!」


「お任せあれ!! このナフィー勝利へ導く奥義を披露しますよぉ!!!」


 ナフィーはもうひとりの少し難いの良い男の方へと双短剣を両手に持ち走っていく。


攻撃力向上アタック・プログレス!!!!!」

速度向上アジリティ・プログレス!!!」


 後ろの方にいた二人の女性はそれぞれ別の言葉を発した。

 その瞬間からメガネの人ことルゼルが一段と早くなった気がする。


「ナフィー流 ”双頭飛竜そうとうひりゅう” !!!!」


「――ッ!!!! これは効くぜ」


 男は全力でどうにかしてナフィーの攻撃を受けきった。

 しかしあいつの様子も先程よりも少し変に感じる。

 一応確認でも――。


「どこに気を取られてるのですか!! 戦いは目の前にあるのに!!」


「悪かったって!! とっとと終わらせてやる!」


 僕はルゼルの剣を押し返しその隙に能力明晰ステータス・クラリティを使用し二人の情報を見ることにした。



================

名前:ルゼル・バルッセル

レベル:2

筋力:323

体力:245

耐性:229

敏捷:136

================


================

名前:キダ・グロリア

レベル:2

筋力:566

体力:323

耐性:333

敏捷:79

================



  やはり先程の女性が行ったのは仲間を強化するスキルだったようだ。

 それのせいでルゼルの敏捷は130超え。

 キダの方は僕の筋力に匹敵するくらいにまで向上している。

 サポートスキル恐るべし。


「エト!! こっちは私とナフィーでどうにかするからそのメガネどうにかして!」


「あぁ!! わかった」


「メガネ、メガネだと……? これは伊達ということを覚えておけ!!!」


 ルゼルはこちらに向かって走ってきた。

 その速度は早まっていくがもう同じことを繰り返させたりはしない。


「何を企んでいるのかはわかりませんがそれも無意味です。今や私を捉えることなど不可能なのですから!!!」


「そんなのはわかってる。だから――」


 僕は剣を強く握り横に大きく振った。

 すると斬撃がルゼルの方向へと飛んでいく。


「――ッ!!!!!」


 バーンッッ!!!


 斬撃の衝突した音が聞こえてくる。

 ルゼルは両膝を地面につけ血を吐いている。


「私の速さに……」


 速さ、それは時に自身を苦しめることになる。

 それは速ければ速いほどだ。

 不意に予想外に放たれる攻撃にたとえ反応出来たとしても急に速度を曲げることなどできない。


「だが私はまだ終わりませんよ……」


 ルゼルはふらつきながらも立ち上がる。

 だがこれ以上戦いを長引かせるわけにはいかない。

 結局のところ一番厄介なのは高火力のキダだからだ。


 僕は立ち上がるルゼルに近づき剣を振るう。


「なっ!!!」


 攻撃を防ごうとするルゼルの剣にぶつけて遠くへ弾き飛ばした。

 そして剣を喉元に近づけ止める。


「ッ――。この戦いは私の負けのようです。大人しく退場するとしましょう」


 僕は剣を下げルゼルが場外に歩いていくのを見送りその後ディア達の方を見る。

 ディアとナフィーさんはそれなりにキダにダメージを与えているようで血を流している。


 だがキダは未だに戦闘不能にはなっていないようだ。


「まさかルゼルが負けるとはな。だがまだ俺がいるぜ!」


 こうなるとキダを最初にどうこうするというよりも先に後ろにいる二人の女性を倒した方が早いだろう。

 でも先程からの戦いを見ている限りディア達も同じことを考え女性達をどうにかしようとしている。

 だがその度にキダがどんな状況でも女性を優先して守りに行っているせいで落としきる事ができない。


 ここからはもう片方の女性が恐らくだがさらにサポートとして加わる。

 そうなると厄介さはさらに増すことなるな。


「ディア! スキルであいつの後方にいるやつらをどうにかしてくれ」


「わかったわ!」


「僕とナフィーさんであの男を止めましょう!」


「まっかせて!!!」


「そう来るかァ!!!!!!!」


 僕とナフィーさんはキダに向かって走っていく。

 その隣でディアはスキルを発動し後方にいる二人の女性めがけて放った。


「させるかァ!!」


「こっちのセリフだ!」


「ナフィー流 ”双頭飛竜そうとうひりゅう”!!!!」


 ナフィーさんは高く跳躍し攻撃をしかけ、僕は斬撃を放った。

 僕たちの3つの攻撃はそれぞれが上手く噛み合い一つの結果をもたらす。


「――ッ!!!! クソ!!」


 ドカーンッッ!!!


 斬撃、ナフィーさんの攻撃を受け止めるしかなかったキダは二人の女性へと飛んでいく炎を止めることはできなかった。


「おっと!! ここで一気に二人も脱落しました!! 残りは一人、さぁここからどうするのでしょう!!!」


「三対一なんて無謀すぎんだろ。ったくよ」


 キダは後がないとわかりこちらに爪痕を残すべく駆けてくる。


「行くぞ!!」


 そのキダに対して僕たちも真正面から向かう。


「おらァァ!!!」


 それぞれがキダの剣を避け隙を作る。

 一瞬、ほんの一瞬に生まれたその隙に僕たちはキダのお腹に剣を持っていない方の拳を思いっきりぶつけた。


「グハッ――」


 そしてキダは意識を失った。

 そう僕たちは思ったのだがキダは嫌な顔でにやつきこちらを見てきた。


「まずい!! 離れろ!!!」


「お前らも脱落だァァァァ!!!!!!!!」


 キダが何かをしようとしたその時、「えいっ!」という声と共に頭上に石が飛んできた。

 その石はキダの頭に直撃し意識を失った。


「今のは――?」


 石が飛んできた方を見るとそこにはルルがいた。


「ルル、よくやった!!!!!」


「勝者決定戦へと進んだのはピョコット!!!!! ピョコットです!!!」


 会場は歓声で包まれた。






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