30.パーティー対抗戦①

「さぁ!! ついに開催されます。待ちに待ったパーティー対抗戦が!! 今回Bリーグ第二闘技場の司会を担当するギルド広報部のアスロです! おっとどうやら予選を勝ち抜いたパーティーが早速入場するそうです。皆さん大きな拍手を!!!」


 盛大な鐘の音と共に僕らは光が差し込む方へと歩いていく。

 光に近づくに連れて闘技場にいるであろう人々の歓声が聞こえてきて余計に緊張してしまう。


「まず最初に入場するのは予選を突破した十位から七位のパーティーです!!」


 僕たちの少し前の方にいた人たちが一斉に闘技場の中心へと歩いていくと歓声は一気に激しさを増した。


「そして予選三位、アルアル!! ややアンバランスな構成と思われていたが個々の力の集結でここまで上り詰めてきました!」


 アルアルと呼ばれるパーティーは闘技場の中心へと歩いていく。

 その時一瞬だけ彼らの姿が見えたのだがあれはきっとこの間ダンジョンで助けた冒険者達に間違いない。


 どうやら向こうはまだこっちに気づいていないようだ。

 でもどの道これから出るんだからバレちゃうけど。


「続いて予選二位、ガチデカチマス!! 見た目によらずバランスの取れた構成でここまで上り詰めてきました!!」


 このパーティーは前々から思っていたがどんなことを考えたらこんなパーティー名にしようと思うのだろうか。

 負けた時の恥ずかしさは尋常ではないだろうな。


「そして最後は予選一位、ピョコット!! 三位で停滞していたが一気に一位へ駆け上がりました!」


 ついに僕たちも闘技場の中心へと向かった。

 足を踏み入れるやいなやとてつもない歓声が耳を襲う。


 辺りを見渡すとほとんど全ての席が埋まっている。


 同時刻にAリーグもやっているというのに案外Bリーグを見に来る人もいるのか。

 未来を担うパーティーの最初の晴れ舞台でも見に来たのだろう。


「主役は場に揃いました。ここからは箱に入った紙をランダムで二枚引きそのパーティー同士で戦ってもらいます。負けたチームの紙は消え勝ったチームは新たな箱へと移動します! そして一位は二箱目進出した場合、シード枠となります。もし二箱目に予選一位がいない場合は二位がシード枠になります。以降も同様に一つ下の順位のパーティーがシード枠となります。 それでは第一回戦目に戦うパーティーはっ!!!!」


 会場に響く声のあとにマイクに当たって聞こえる箱の音か紙の音がガサガサと聞こえてくる。


「引きました、引きましたよ!! さぁ! 一回戦目はガチデカチマスと新規決死隊です! では他の冒険者の皆さんは控室へ!!」


***


 その後スムーズにBリーグは進んでいき四回戦目が終わりを迎えた。

 この時点で残っているのは僕たちのパーティーとあとはドラゴンパーティーというところだけだ。

 つまり五回戦目はそのドラゴンパーティーとかいうところと戦うことになる。


「さぁ、Bリーグ五回戦目は予選一位のピョコットと予選五位のドラゴンパーティーです!! 火力型のドラゴンパーティーがどのようにして格上のピョコットと戦うか、見どころです!!! それでは入場ー!!!!」


 合図と共に僕たちは闘技場の中心へと歩いていく。

 そして僕達とは反対側の入口からドラゴンパーティーの人たちも歩いてきている。


 いかつい男の人が四人に女性が一人で計五人。

 人数は差は一人か。

 

「よぉ! お前らが予選一位のやつらか。どいつもパッとしねぇな……と思ったらあの鍛冶屋の娘がいるじゃねぇか。戦えたのか。こりゃ面白い。予選一位の実力を見せてみろ!!」


「望むところだ」


「それでは試合開始!!!!!!」


 鐘の音とその音がかき消されるほどの歓声の中、戦いは幕を開けた。


「ルル、待機室で話した通りだ。わかったか?」


「はい!!」


 この試合が始まる前に全員で作戦のついでにあることについて話し合った。

 それはルルに関することだ。


 ルルには戦闘をする術がない。

 守ることも反撃することもできないのだ。

 だから出来るだけルルには安全な位置で待っていてもらおうとなった。

 そしてもしルルに危険が及びそうなら必ず誰かが駆けつけるということも決めた。


「さぁ、行くわよ! 円型創火クライシス・ブレンネン!!」


 ディアが円型創火クライシス・ブレンネンを放つと男三人は一気にこちらに走ってきた。

 一体なぜ自らスキルに向かっていくのか、その時はわからなかったが後ろで立ち止まっている女性を見てなんとなく察した。


 あの女性はきっと遠距離から何かをするスキルなのだろう。

 ならばそんなことはさせない。


「おらぁ!!」


 僕の斬撃は男達の間を抜け何かをしようとしている女性に近づいていく。

 斬撃に気づいた女性は驚き避けようとしていたがもう遅い。

 これは当たったに違いない。


 ドカーンッッ!!!!


 ディアのスキルが爆発を起こすと大きな音と共に煙が舞う。

 少しして煙は消え去り地面に倒れている三人の男の姿があった。


「お前ら、何してんだ。避けやがれ」


「あ、いや、いつも通り――」


「頼り切ってんじゃねぇ。ちょっとくらい自分で対処しろ」


 僕が斬撃を放った女性の目の前にいる最初に声をかけてきた男は三人の男にそう言った。

 どうやら僕の斬撃はかき消されてしまったらしい。


「ったく。お前、本当に新米なのか? まさか斬撃を打ってくるなんて思っても居なかったぜ」


「そっちこそあの反応速度、常人とは思えないけど?」


「察しの通り、これはスキルだ。どんな状況でも瞬時に適切な方へと行動を移すことが出来る。これぞ最強の――」


「ナフィー流 ”双頭飛竜そうとうひりゅう”!!」


「なっ!!!!?」


 ナフィーさんの攻撃により女性は負傷し行動不能になったが男はしぶとく攻撃を受け止め続けている。


 しかしそれこそが狙い目。

 ディアは意気揚々と「円型創火クライシス・ブレンネン」を口にする。


「お前ら! あの炎をどうにかしろ!!!」


「「「は、はい!!!!!!」」」


 ディアの邪魔はさせない。


 僕は三人の男に斬撃を放ち闘技場中心の土俵から弾き飛ばした。

 そして男までの道が開きディアは円型創火クライシス・ブレンネンを全て放った。


「やめろやめろ!! 敗退なんていやだァァァ!!!!!!!」


 爆発と共に男は吹っ飛び土俵の場外へ。

 

「か、勝てました!!!!」


 終わりを告げる鐘と共に歓声が沸き起こる。


「楽勝だったね! これも私のおかげよ」


「確かにそうだな。これに関しては否定しようがない。次も任せた」


「エトもね」


***


「これより残った五パーティーの戦いを始めます。そして対抗戦進行重要事項第六十六に基づいて予選一位のピョコットはシード枠とし勝者決定戦への進出が決定しました!!!」


 長っ。

 そして一位だからと言ってこんなにあっさり進んでもいいものなのか。


「引き続き待機するパーティーは他パーティーの観戦を禁止にします! ではパーティーの皆さん準備をお願いします!!」


 対抗戦のよくわからないルールその一。

 他パーティーの試合の観戦禁止。

 これは新規パーティーが初めての相手に対して瞬時にどんな行動を取れるかが期待されているかららしい。


 確かにAリーグのようなど迫力のある試合をするならまだしも僕たちみたいな新規パーティーはそんなことは出来ない。

 となると考えて行動し連携する、それがBリーグの面白みであり人が見に来る価値なのだろう。


 だとしても待ってる時間暇だからそればかりはどうにかして欲しい。


 待機室に帰りながらそんなことを思っているとディアが隣にやってくる。


「干し肉たべる?」


「あるのか!」


「食べるかと思って一応持ってきたのよ!」


「おぉ!!!! ディアがMVPだ!!」


「エトさん……ちょろすぎますよ」




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