29.迫る何か

 それからも魔石回収を続け、ついに予選が終わりを迎えた。

 結果から話すと僕たちのパーティーは三位でこれまで停滞していたが最終的には二位と差をつけて一位に輝くことができた。

 二位と三位は前の順位の繰り下がりだ。


 これで僕たちは新規パーティーのリーグであるBリーグに進出することが決定した。

 アリアさんによるとBリーグは明日、第二闘技場というところで開催されるそうだ。

 第二闘技場はギルドから少し歩いたところにあるかなり大きな円形型の建物である。


 そしてAリーグなのだがBリーグと同日に開催されるそうだ。

 開催地はギルドから少し離れていて公共ダンジョンの近くにある第一闘技場で開催される。


 Bリーグで勝った上位一パーティーとAリーグで勝った上位一パーティーが第一闘技場で死闘を繰り広げる。

 

 一見、Bリーグで上がってきたパーティーはあまりメリットのない戦いにも思えるがもしAリーグで上がってきたパーティーに勝つことが出来ればトップパーティーの候補になれる可能性すら出てくる。


 勿論それを目標に頑張るのは当たり前だがその前に僕たちはBリーグで勝ち上がるという目標がある。


 対魔物戦闘は慣れているが対人戦はそこまで慣れていない。

 つまりは明日までにできるだけの対人戦の経験を積んでおいたほうが良さそうだ。


***

***


 薄暗い部屋に集まっている者達がいる。

 そして彼らは用意されていた椅子に座り何やら会話を始めた。


「皆、周知の通りファット達が作戦に失敗し何者かに殺害された。犯人に関しては既に特定済みである」


「簡単なことであろう。ファットが連れておったあやつを探れば良いこと」


「その通り。あの猫人族を連れた冒険者。その者こそが我々の目的を遮るものなのだ。そして五大幹部ペンタグラムから聞いた話によると邪魔者はどうやら明日開催されるパーティー対抗戦に出場するようだ」


「それに関しての策はあのお方や五大幹部ペンタグラムの者は何も言っていなかったのか?」


 すると薄暗い部屋の扉が静かに音を立てて開いた。

 そこには純白のコートを着た男が立っていた。


 椅子に座っていた者達はその男の存在に気がつくととてつもない速さで立ち上がり深くお辞儀をした。


「いいよ、いいよ〜。そんなかしこまらなくたって。あの方はいないんだから」


「はっ! アルベロ様はなぜここにおられるのですか。確か村に言っていたはずでは」


「あ〜それね。終わって戻ってきたらあのお方が今回の計画に加わってとか言うからここに来たんだよ。それで今どんな感じ?」


 アルベロと呼ばれる人物が椅子から立ち上がった者達の近くに近づき問いかけた。

 そして一人の男がその問いかけに対して応える。


「はい。現在指示に従い各々目的の箇所にて計画の下見を行っております。明日にはそれぞれが行動を開始し計画を遂行する予定です」


「そっか。了解したよ」


「ウチ的にはもっと遅らせた方がいいと思うけどね」


 全員の視線は一斉にその声の主の方へと向いた。

 視線の先には開いた扉にもたれかかっている純白のコートを着た女性がいた。


「フォーコ様までここにいらっしゃるとは……!!」


「あ〜ウチはこれの付き添いね。すぐ余計なことをするから。それで計画の実行日だけどあの方も言ってたんだけど明日はやめといた方がいいね」


「そうですか。私共の意見としましては明日の決行なら七のトップが片方にはいませんし遂行難易度は低いと考えたのですが」


「確かにそういう考えも出来る。でもウチらがすべきなのはこの地に存在と権威を知らしめること。だからより人が集まり力を誇示出来る瞬間、それはずばり対抗戦最終日ってこと」


「そういうことでしたか。私共はどうやら目的を微かに勘違いしていたのかもしれません。では決行日はフォーコ様の言う通りに従い最終日にするとします」


「うん、じゃあなんかあったら言ってね。ウチらは全員待機中だから」


「はい。ありがとうございます」


 フォーコと呼ばれる女性とアルベロが部屋を立ち去ろうとすると椅子から立ち上がっていた者達は一斉に深くお辞儀をする。

 二人の姿が見えなくなるまで、足音が聞こえなくなるまで。


「みな、今の話は聞いていたであろう。五大幹部ペンタグラムに負担をかけることのないようにそしてこの計画が決して失敗を迎えないためにも慎重に行動するということを肝に銘じておくのだ」


***


「そう言えば最近ギルドで噂になっている少年の話をフォーコは知ってる?」


「ウチはそこまで人を覚えるなんてことはしないからわからないよ。それに今、この場においてその少年の話は関係ないんだから。先のことを考えるってことを身に着けて」


「フォーコもフォーコだよ。もっと人を見た方が良い。案外脅威ってのは見落とすものだからさ」


「その少年がどんな存在であれただ一人の少年でしかないの。ウチにとって些細なことだよ」


 フォーコはそういい終えるとアルベロをその場において歩いていった。

 そしてアルベロは呟く。


「彼は僕の部下を殺した。だからきっとどんな形であろうと脅威になることは間違いないね」


***

***


「はぁ……はぁ……」


「エトさん、お水飲みますか?」


「あぁ、ありがとう」


 今僕たちは広くひらけた訓練場のようなところにいる。

 ここには様々な冒険者にあった特訓をすることができ設備も充実している。

 それもあってか周りには僕たちと同じように訓練に励んでいる人がたくさんいる。


「陽が暮れてきたね〜。そんなに時間経ってたなんて、恐ろしや」


「そろそろ帰る? これ以上練習したら明日に影響出ちゃうかもだし」


「そうだな。今日のところは引き上げよう」


 そして僕たちは荷物をまとめて家に帰った。


***


「はぁー、もう私疲れた。部屋で寝てくる」


「さすがに風呂には入れ」


「っんも、そんなのわかってるよ! ほら、ルル、ナフィー、一緒に入ろうよ」


「は、はい!!」


「エトの分まで堪能してきてあげるよっ!」


「何言ってるんですか」


 僕は剣を壁にたてかけて椅子に座りディア達はそのままはしゃぎながらお風呂に向かっていった。


 それにしても久しぶりに一人になった気がする。

 これまで一人だったのにここに来てから毎日が一人じゃなくなってる。 

 これからもこんな時間が続いて欲しい、心からそう思う。


 僕は背もたれに完全にもたれかかり天井を見上げてステータスパネルをなんとなく開いた。



================

レベル:1

筋力:795

体力:745

耐性:655

敏捷:93


スキル

能力明晰ステータス・クラリティ

特殊能力適応スキル・アダプト

獲得耐性

*弱毒耐性

*恐怖耐性

*弱物理攻撃耐性

*ステータス増加阻害耐性

================



「はっ!!!?」


 思わず大きな声を出して反応してしまった。

 なぜこれほどまでにステータスが伸びているのか、それに獲得耐性に入っているステータス増加阻害耐性とは一体何なのだろうか。


 特殊能力適応スキル・アダプトは倒した敵に関する耐性が手に入る可能性のあるスキル。

 魔物はステータス増加を阻害していたというのだろうか。


 ここに来て色々と知ったことがあるのだがそのうちの一つに冒険者はみんなステータスの上がりが遅いと聞いたことがある。

 その理由は未だに判明しておらず人々はもうそういうものなのだと受け入れている。


 もしかすると上がらない原因はこの魔物によるステータス増加阻害なのかもしれない。

 そして僕はそれの耐性を手に入れた。

 これが意味することはただ一つ。

 他の人よりもさらにステータスが上昇し強くなれる。

 また一歩、最強の道へと近づいた気がする。

 

 これに関してはあまり口外しないほうがいいのかもしれない。

 聞いたとしても耐性を手に入れることなんて特殊能力適応スキル・アダプト

がないと出来ないわけだし。


 それよりまずは明日のBリーグをなんとか勝ち進まないと。

 もしかしたらリーシアさん達とも戦えるかもしれないし。


「よし、頑張るか!」




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