28.彼は一体……
今日もダンジョンに来ている。
前回のダンジョン攻略で十四階層まで行くことができあと六階層進めば階層ボスに出会える。
今回のダンジョン攻略でその階層ボスを目指すためにさらに進んでいくということも考えたがみんなと話し合った結果、最終的には最低でも十九階層までしか進まないという風に決めた。
階層ボスを倒せばそれなりの魔石が手に入るかもしれないが時間がかかることには違いない。
ならばうじゃうじゃといる魔物を狩って狩って狩りまくって魔石を手に入れた方が効率が良い。
さらにはもし予選を勝ち上がるとすぐにリーグ戦が始まるとのことなのでここで大幅な体力を削られるのは避けた方がいい。
それらを加味したうえでの判断である。
「そういえばこの公共ダンジョンってあまり人がいないわよね。一階層はたまに人がいるけど」
「確か公共ダンジョンは初心者向けとされていたんですが時間が経過するにつれこのダンジョンの規模が大規模であることが判明し気づけば中級者や上級者の冒険者が沢山来始めたんです。その冒険者達は階層を進むついでに魔物を片っ端から狩ったせいで低階層でぬくぬくしていた初心者冒険者は魔石を手に入れることができなくなり人が減少したとか」
「そうなのね。ならその初心者冒険者達はどこに行っちゃったの?」
「他にも初心者向けのダンジョンはありますからきっとそっちに行かれたんだと思いますよ」
公共ダンジョンが初心者向けのダンジョンだったなんて初耳だ。
「なぁ、ルル気になったんだが、この階層ってどこまであるんだ? 前、ディアが三十階層、以下略とか言ってたから三十階層まであるのはわかってるんだけど」
「噂なら聞いたことはありますよ! 過去にいた伝説のパーティーが確か……九十五階層だったと思います!」
最低でも九十五階層あるとか絶対初心者向けダンジョンにしていたのが間違いとしか思えない。
「ルルは物知りだな。それと伝説のパーティーって何なんだ?」
「トップパーティーになれたはずなのにならなかった唯一のパーティーだそうですよ。昔のことなのでこれ以上わからないです。すいません」
「いいよ。少しでも知ることが出来たのはルルのおかげなんだから」
近づいてくるルルの頭を僕は軽く撫でる。
ルルの顔はいつも通り何だか嬉しそうだ。
「な、なんか私忘れられてない!? ちょっと喋らないだけでこんなにも影が薄くなっているように見えるって、みんな濃すぎるんじゃない?!」
「あ、みんなあそこに魔物がいるぞ」
「行きましょう!!」
「
「ん? あれ私透明ってこと!!?」
「ほら、ぼさっとしてないで行きますよ、ナフィーさん」
「おぉ!! やっぱり! 私が全部やっつけてやっちゃうよ!」
よっぽど存在に触れられたことが嬉しかったのかナフィーさんはすぐに双短剣を取り出しサササッっと数体の魔物がいる方へと走っていった。
「やっ! はっ!!!」
魔物はそれほど時間がかからないうちに魔石へと変わっていた。
ナフィーさんの僕とはあまりにも差のある速さの要因はステータスにあるということが
================
名前:ナフィー・レイリット
レベル:3
筋力:502
体力:254
耐性:234
敏捷:119
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見ての通りナフィーさんは僕だけでなくディアよりも敏捷の数値が高い。
それ以外にも筋力の数値も高い。
だがその分体力と耐性の数値が低いのだがそこはナフィーさんのスキルである
つまりナフィーさんはかなりバランスの取れているステータスになっている。
そしてしれっとレベル3である。
「それにしても魔石を拾うのいちいち面倒くさいよね」
「確かにそうだよな。沢山倒せばなおさら面倒くささは増すし、なんか良い方法とかないのかな」
「レアアイテムか装備なのかはわかりませんが
「へぇ、でもそれってアイテムならめちゃくちゃ低確率だろうし装備なら相当な硬貨が必要になるんだろうな。しかもどこに売ってるかもわからないし。今度あった時にリーシアさんとかにでも聞いてみるか」
「それがいいと思います!」
魔石を拾い終えた僕たちは再び進み始めた。
***
魔物を狩りながら進み十五階層に到達した。
「そろそろ戻ってギルドに行くか?」
「そうね。一階層しか進んでないけど魔物を狩りながらだったから結構時間もかかったし」
「そうだよな。よし戻るか」
ディアの賛成意見を聞いた僕はみんなを連れてダンジョンから出ようとした時、ルルが服の裾を引っ張り「あそこに誰かがいます!」と言ってきた。
ルルの言う方を見ると少し薄暗くてはっきりとは見えないが確かに人影のようなものは見える。
その人影は地面に座っているのが一人、その周りに数人いるという構図だった。
なにかあったのだろうか。
気になった僕はダンジョンを出るのをやめその人影の方へと進んだ。
少し歩くと足から血を出した女性が地面に座り込んでいた。
そして周りにはそれを心配しながらもどうすることも出来ずただ立っている男性が二人、女性が一人。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「大したことはないと思うんだが怪我をしたのが運悪く足みたいで歩けないんだ」
「魔物とかにやられたんですか?」
「そうだ。俺らはパーティー対抗戦に出るために即席で作ったパーティーなんだがその分、相性もそれほど良くなく連携も上手く取れない。それらが絡み合った結果、こうなってしまったんだ」
そう話す男はずっと下をうつむいていた。
「そうなんですか。それじゃあ、ナフィーさん、お願いできますか?」
「まっかせて! こういう時の私だから!!」
ナフィーさんは怪我をしている女性のもとに行きしゃがみ込む。
そして怪我をしている部分に手を近づけ「
すると女性の怪我はどんどんと傷が消えていき五秒ほどで完全に消えてなくなった。
「あ、ありがとうございます! おかげで傷も痛みもなくなりました! あ、あのお名前をお伺いしてもいいですか! いつかお礼がしたいので!」
「僕が――」
名前を言おうとした時それまでうつむいていた男が僕の方を見つめてきた。
そして
「エト……」
と教えてもいない僕の名前を小さな声で呟いた。
「え、?」
「あ、いや、なんでもない。続けてくれ」
「じゃあ、僕がエトでこのパーティーのリーダーです」
「私は一番最初のメンバー、そう大先輩のディアよ」
「私は見ての通り猫人族で名前はルルです!」
「私は一流鍛冶職人を目指してるナフィー! よろしく!!」
一通り自己紹介を終えると男性一人と女性二人がなにやらテンションが高くなりなぜか喜んでいる。
「ナフィーってあの鍛冶屋のだよな。まさかあの鍛冶屋の娘にこんな形で会えるとは思ってもいなかったぜ。俺はルグリアだ! よければいつか武器を見てくれ」
「わ、私ダンジョン都市で有名な鍛冶屋の娘さんに救ってもらった……! あの私、アリアです。どうぞよろしくおねがいします!」
「フィアですフィア!! 私もいつか武器を見てください!」
「いいよ〜」
三人が黄色い歓声を上げる中、僕の名前を呟いた男は元気がない、いや考えごとをしているようで全く喋らないし名前も名乗らない。
「それじゃあ僕たちはそろそろ戻りますね。ダンジョン攻略頑張ってください!!」
「あぁ!! ありがとな」
「「はい!!!!」」
僕たちはダンジョンを出ようとしたその時、またしてもあの男が呟く。
「エト、エト・アルハドール……」
そして僕たちはダンジョンを出た。
彼は一体……何者なんだろうか。
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