27.裏の存在
いつもお世話になっている公共ダンジョンについた僕たちはすぐに十階層に辿り着いた。
僕、いや僕たちは長らくダンジョンに通っているが知らなかったことがいくつかあった。
自身が行ったことのある階層を上限としその内では自由に階層移動をする事のできるレアアイテム、
それは一緒にいる人の中で到達した最高階層が最も高い人の階層まですぐに移動出来るというものだ。
これはもとから備わっているダンジョンの仕様らしい。
外に出るために他階層から出るときに行う仕様と同じようなものなのだろう。
それにしても僕は知らないのは仕方ない、そう仕方ないのだがなぜディアはこれについて知らなかったのだろう。
ナフィーさんは鍛冶の仕事であまりダンジョンの奥深くには行ったことがないと行っていたのでこれも仕方ない。
仕方ないが増える度にディアが知らなかったことが不思議で仕方がない。
だが今そんなことを考えていても特に何の意味もないのでひとまずは忘れ階層を進めつつ予選でさらに上位に入り込めるように魔石を沢山集めるとしよう。
「ルル、もしリュックが重くなったら行ってくれ。今日はきっと沢山の魔石を手に入れることになるからな」
「わかりました!! 私の限界が来るまでみなさんはどんっと魔石を集めてください!!」
「さぁ!! 行くわよ。一位になるのはこの私達なんだから!!」
「私も全力でこの腕と双短剣を振るいます!!!」
「みんな、よろしく」
***
一階からの階層移動で到達した十階層にはボスはおらずそのままスムーズに十一階層への道を進んでいく。
「見てください!! ちょうどいい魔物の集団がいますよ!!!」
「あれなら結構な得点を稼げるかもな!!」
「まぁ、見てなさい。あれくらいなら私で一撃一掃よ。
ディアのスキルによって僕たちの目の前にいたざっと十五体の魔物は一瞬にして散り魔石と化した。
「なんだか結構すぐ集まりそうな気がしてきたな」
「もっとじゃんじゃん手に入れちゃいましょう!!」
「そうだな。よしっもっと行くぞ!!」
魔石を拾いながら僕たちはさらに先へと進んでいく。
***
***
薄暗くひらけたどこかの一室で椅子に座る一人の男とその者の前で片膝を地面につける男がいた。
二人の男はシルエットが見えるだけで姿ははっきりとはわからない。
「人々はすべての存在という尊き価値を理解していないのです。故に無差別的な狂気満ちた行動ばかりを選択してしまう」
「その通りでございます」
「秩序、公正、公平、並べればいくらでも湧き出る人々を統一させる言葉を実現させるには必ず絶対的地位の存在が必要不可欠とは思いませんか? そう思うならば今や世界の中心的な完全独立都市と成ろうとするあの地を想像して考えてみてください」
「はっ! 七のトップとギルドの両者対等の関係、その上には誰も存在しておりません」
「その通りです。故に一度の崩壊が起こればあの地の全ては再起困難となってしまいます。私は特に人々を困らせたいというわけではありません。いずれ世界は一つに、それこそが未来にあるべきこの世の姿なのです」
「そうでございます」
「私の目的を果たす上で時間、人、場所、様々なことが必要となってしまいます。ですから利用できることはなんでもしてください。それがどのような行為であろうと神は許してくださる。それが望みなのですから」
「承知致しました。現在、意に背いた二十六の村は過去に抹消済みです。そして今は最大の目的の地で数年前より人員を送り込んでおりましたがいずれも結果はゼロです。現在も試行錯誤しながら崩壊の糸口を探っております」
「それの原因は……七のトップでしょうか。それなら貴方達が苦戦を強いられてしまうのは仕方ありません。なんせかの者達は同じなのですから」
そういうと男は椅子から立ち上がり片膝を地面につけている男の背後に移動した。
そして軽く肩に一瞬だけ触れると歩き出した。
「そう言えばもうすぐでちょうど良い舞台が開かれますよ。ぜひ貴方達も参加してみてはいかがですか? どのような形であれ私も神もきっと貴方を許してくれるでしょう」
「はっ! 考えておきます」
「それでは私はこれから行かなければならないところがあるので行きますがなにかあったらまた呼んでください。それと魔石もよろしくお願いします」
***
***
どれくらいの時間、ダンジョンにいたかはわからないが陽が暮れているということが全てを物語っている。
そして今、僕たちはギルドへの魔石の提出をし終え家に帰っている。
正直言ってダンジョンは今になっても疲れが物凄い襲ってくる。
特にそれが今日は酷い。
それの原因はナフィーさんにある。
途中まではみんなでなにか談笑しながら魔物を狩っては魔石を拾うという繰り返し作業をしていたのだがしばらくしてナフィーさんが暇になったとか言い出しいきなり先へと一人で走り出してしまった。
さすがにダンジョンで一人にさせるのはまずいからと僕たちも必死に追いかけたのだが無駄にナフィーさんは足が早く結局まともについていけていたのはディアだけだった。
おかげで減る必要のない体力を大幅に失った。
でももう終わったことだからそこまで気にしてはいない。
「いやぁ〜今日も疲れたわね。それにしても二百八十点まで上げたのにまだ二位になれないって……上位二パーティーはどんだけダンジョンに潜ってんのよ」
「それは僕らの下のパーティーもきっと同じこと思ってるよ」
「そんなの関係ない! 私は狩って狩って勝つ! ただそれだけだから! さぁ、みんな予選も残り二日、じゃんじゃん明日も稼ぐよ!」
「頑張りましょう!!」
いい感じにディアがまとめたかと思ったその時、僕の後ろにいたナフィーさんが徐々に接近してきていることに気づいた。
「エト、エトォォ、剣、治してあげるよ〜?」
「そっそんな近づいてこないでくださいって。それにまだ全然使ってないので大丈夫ですから!!」
「だめだよ〜、治すべき、そう! 治すべき。そしてこれは私の剣だ!」
「いや、僕の剣ですけど」
「確かに。…………いやでも治す!!!」
「ちょっとはほっといてあげてください!!!!」
「ほんとっ、ダンジョン帰りに何してるのよ」
僕はその後しばらくナフィーさんと剣の奪い合いを道のど真ん中で繰り広げたのだった。
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