24.ナフィーの夢

 リヒトリア小規模ダンジョンでの目的を達成した僕達は外に出てきてナフィーさんの家まで向かっていた。


「これが目当てのセレンティバイト……。本当に真っ黒な宝石だ」


「ちょっと私にも見せてよ!」


「おい! 無理やり取ろうとするなって。落ちたらどうするんだよ」


「いいから触らせてよ!」


「あ!」


「あ!!!」


 ディアがしつこく迫ってきたせいでうっかり手からセレンティバイトを離してしまった。

 セレンティバイトはゆっくりと地面へと落ちていく。


 まずい割れる! と思ったその時、近くにいたルルが見事セレンティバイトをキャッチしてくれた。


「ルル!! た、助かった!!」


「ちゃんと持たないからそうなるのよ。私が持っておくから!」


「こ、ここは私が持っておきます。リュックもありますから!」


「残念だったな。ディア」


「なんだか前より色々行ってくるようになったね」


「慣れだよ慣れ」


 後ろにいたナフィーさんが手を叩きながら僕とディアの前に出てきて「治癒はしたけどそんなに暴れたら血が吹き出るから大人しくしてね」と言った。


 僕とディアはとりあえず謝って大人しくすることにした。


「ルル、家についたからセレンティバイトを渡してくれる?」


「はい!」


 ルルは手に大事そうに持っていたセレンティバイトをナフィーさんに手渡した。


「それじゃあ、みんな今日はありがとう。これで立派な剣が作れると思うから期待してて!! では早速集中モードに突入するから、じゃ!!」


 そう言ってナフィーさんは走っていき勢いよく扉を開け家の中に入っていった。


「ナフィーってなんかテンション高いよね」


「職人ってそんなもんじゃないのか。それよりこれからどうするか」


「ギルドでも寄っていく?」


「そうだな。ちょうど魔石もルルの持ってるリュックの中にたんまり入ってることだし」


「そうとなれば早速行くよ!」


「あぁ!」


「はい!!」


***

***


 とうとうセレンティバイトを手に入れる事ができた。

 ようやくお父さんに認められてもらえるのかもしれない。


 私はナフィー・レイリット。

 私の家系は代々、このダンジョン都市で鍛冶職人をしている。


 小さい頃は治癒というスキルしかもっていなかった。

 治癒ってだけで強いんだけどね。


 でも私が目指していたのは別に誰かを治癒するってことじゃない。

 パーティーを組んで仲間と一緒に戦いに行き、時には泣き、時には喜び、そしてそんな大切な仲間の武器を作りたい、治したい。


 ずっとそう思ってきた。

 でも私には戦う力はなかった。


 それで悩んでいた私を見かねてある日お父さんが私にこんなことを言ってきた。


「鍛冶職人ってのは戦いに参加する役割じゃない。あいつらが生きて帰って来るかもわからない中、俺達鍛冶職人はただ仲間の無事を祈りながらひたすらに魂の籠もった武器を作るのが仕事だ」


 私はお父さんの言っていることには納得出来なかった。

 だってそんなのは耐えられないし、助けられるのなら助けてあげたい。


 もしかしたら孤独になるかもしれない。

 大切ななにかを失うかもしれない。

 そうなった時、鍛冶職人は一体何に感情をぶつければいいの。


 私は一緒に戦える鍛冶職人になりたい。

 どれだけそれが大変だろうとも最期は大切な仲間と迎えたい。

 それなら悔いの無い人生だったって言えるから。


 そして私はお父さんと約束した。

 戦いの基礎を教えてもらう代わりにお父さんの雑務をすること。

 そしてもしパーティーを作って仲間と戦いたいならその仲間が危険な目に合わないようにするためにお父さんが納得する完璧な武器を作ること。


 毎日毎日、武器と向き合ってきた。

 それを今ここで惜しみなく発揮する。


「よしっ!!」


 私は髪を後ろで結んだ。


***

***


「ルリアさん、こんにちは」


「あ! エトさんにディアさん、そしてルルさんこんにちは!」


「ちょっと魔法石を受け取って欲しいんですけど、今大丈夫ですか? なんだか今日はやけにギルドが混んでますけど」


「こちらとしては全然大丈夫ですが今、提出しても大丈夫なんですか?」


「それはどういうことですか?」


 僕はルルの背負っていたリュックを受け取りカウンターに乗せる。


「明日からギルド主催のパーティー対抗戦の予選が始まるんですけど、その時の予選突破条件が魔石量、質の上位パーティーなので今出しても大丈夫なのかなと」


 そう言えばこの間の食事の時にリーシアさんが言っていたやつか。

 すっかり忘れていた。


「すっかり忘れてたわ!!!! エト、早く参加登録をしなさい! 出るわよ!!」


「参加登録をしないといけないのか。それでなんでディアはそんなにやりたがってるんだ?」


「何をあほみたいなこと言ってるのよ」


「あ、あほ……?」


「パーティー対抗戦の予選を突破するだけでもギルドからかなりの報酬がもらえて、しかもリーグ戦で勝ち抜けばとてつもない量の報酬が、そしてそして本戦で優勝すればそれはもう一生生きていけるくらいの硬貨とかがもらえるのよ!」


「確かにそれはやらないといけないな。よし、ルリアさん、参加登録をお願いします」


 僕がそういうとルリアさんはなぜか少し気まずそうな顔をしていた。

 どうしたのだろうか。


「エトさん達の場合、参加登録は出来ないです……。申し訳ございません」


「それは一体どういうことなんですか! 今後の人生がこれにはかかっているんです! 教えてください!」


「実は今回からルールの変更がいくつかありまして、これまで予選では人数制限がなかったのですが今回からはトップパーティー以外のパーティーは最低四人になったんです」


「き、聞いてないわよそれ!!」


「すいません。あまりエトさん達がギルドに来なかったので言う機会がなくて……」


 今日に限ってギルドに沢山の人がいるのはこのルール変更で最低四人を満たすことが出来ていないパーティーが追加のメンバーを探すために集まってるということか。


 ということは僕達もここで早く探さないと人数不足で参加できなくなってしまう。

 早く探さなくては。


「エトさん達のパーティーは現在二名なのであと二名集めていただければ参加登録が可能です。参加登録受付期間はまだ少しあるのでぜひ追加のメンバーを探してみてください! 応援しています!!」


「ありがとうございます」


 そう言って僕達はギルドをあとにした。


***


 ひとまず家に帰ることにした僕達は三人横並びで歩いていた。


「どうする? あと二人も」


「そうだな。待て、こんなパーティーに入る人いまさらいるのか!?」


「なんでそんな発想になるのよ。どこも冒険者は入りたがってるわよ」


「パーティー募集の紙は未だに掲示してもらってるけどディア以外一回も来たこと無いけどな」


「パーティー対抗戦で注目されれば誰かは来てくれるわよ」


「予選に参加出来ないんだよ。やっぱり拠点が悪かったのか……もっと大豪邸とか? 特典とかもつけるべきだったか?」


「あ、あの!!」


「いや! ディア、その頭につけてるよくわからないのを外そう!」


「なんでよ! これは私のトレンドマークだからむり!」


「自分でトレンドマークなんて言うなよ」


「あ、あの!!!」


 僕の憶測では拠点、そして特典なしという点とパーティーに変な人がいるという点の三点の要素により来ないと考えた。


 家を変えるなんて無理だし特典つけるとかも無理だからせめてディアの頭の変なのを取ってしまおう。


「入ります!!!!!!」


「「え?」」


「わ、私、エトさんのパーティーに入りたいです!!!!!!!!」







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