23.セレンティバイト
「治癒されるってこんな感じなんだぁ」
「なんか変態みたいだからそれやめてよ」
「ディア!? 起きたのか!」
「少し前から起きてたけど」
戦いを終えた僕は疲弊しきっており地面に座り込んでいたらこれまで怪我をしていたディアを治癒していたナフィーさんがこちらに走ってきて僕のことも治癒をしてくれた。
「どうしたんだ、ルル」
「…………あ」
僕が治癒されている間も隣に座りこちらをただ見つめてくるだけで何も話してくれはしないルル。
別に無理に聞き出すような話題でもないだろうしルルが自分から言い出してくれるまで待つことにしよう。
「エ、エトさん。ご、ごめんなさい……」
「え?」
「わ、私のせいでみんなをこんな目に合わせてしまって……」
どうやらルルは自分のせいで僕やディアが怪我をしてしまったと思っているらしい。
ルルは優しい子だからそういう発想になってしまうのも仕方ないだろう。
「そんな風には思わなくていい。僕達は守りたかったから守っただけだから」
「そうそう。こんなこと気にしてたらちょっとしたことで心がだめになっちゃうわよ」
「…………はいっ!!」
ルルは泣きながら返事をして僕の体に飛びついてきた。
これまでどれほど過酷な人生を歩んできたのかは僕にはわからない。
でもただ一つ分かるとすればルルはまだ子供で誰かが守ってあげなきゃいけないってことくらいだ。
僕はきっとこれからもいつまでもみんなを守り続けたいと思うだろう。
なぜならもう誰も手放させたりはしない、そう誓ったからだ。
僕はもたれかかるルルの頭に優しく手を乗せ撫でてあげる。
すると安心したのか涙は少しずつ収まりリラックスし始めた。
「もう大丈夫か?」
「はいっ! この恩は必ずお返しします! 出来るだけ早く!!」
「別にそんなに急がなくてもいいよ」
「いえ、急ぎます!!」
ルルが離れると僕は立ち上がった。
「それじゃこっからはそれほど怪我をしてない私が探すからエトにディア、ルルは戻っておいて!」
「いやいや僕も一緒に探しますよ」
「治癒したとはいえ怪我は完治するってわけでもないから戻って安静にした方がいいから!」
何を言っても納得してくれなさそうなナフィーさんに対して僕とディアは飛び跳ねながら両腕を上下に動かし全然動けるということを主張した。
「動けます! 動けます!!」
「ほらほらぁ〜こんなにも動けるんだから私達も連れて行きなさいよ!」
「そこまで言うならわかった。でも無理は禁物! 今度は私が先行するからみんなはゆっくりきて!」
なんとか納得してもらえた僕達は最大の目的であるセレンティバイトを探しに再度ダンジョン内を歩き出した。
ただもう九階層。
この階層にもなければもう十階層にすべてをかけるしかない。
でもその最後の希望である十階層目にも生成されていなかったら絶望でしかない。
***
「十階層に来てしまった」
「ついに来てしまったわね」
「なぁぁぁぁ!! 聞いてた話しだと九階層までの間に生成される確立は0.02%だからもしかしたらあるかもしれないって思ってたのに!」
「その確率は流石に無理ですよ……」
「こうなったらあそこに踏ん反り返ってる如何にも我階層ボスなりを倒すしかない!」
十階層は他の階層とは内装が異なりやたら広い四角形の空間だった。
その中にポツンと明らかに怪しい魔物が立ち止まっている。
僕はひとまず安全圏からあの魔物の詳細について知るために
================
名前 リヒトリア小規模ダンジョンボス ゴブリンキング
レベル:3
筋力:199
体力:499
耐性:499
敏捷:77
スキル
*
================
ゴブリンキング……言われてみれば少しゴブリンに似ているところもあるがそもそもゴブリンにキングなんているものなのか?
ひとまずこのボスの面倒なところは筋力が低いけど代わりにやたら体力、耐性が高いところか。
あの鎧をどうにかする必要があるみたいだ。
高火力の攻撃を連続して与えないと倒すのは一苦労かかるな。
「みんな、あのボスに攻撃するときは一発一発を出来るだけ高火力で出してくれ」
「わかったわ!」
「ルルはここでそのリュックを守っててくれ!」
「はい!!」
「よし、みんな行くぞ!!」
このとき僕はまるで無敵の人間のように感じていた。
なぜだか負ける気がしない。
たとえそれが格上だとしても。
「
「ナフィー流 ”
ディアはスキルで炎を放ちナフィーさんは剣術で攻め、僕は斬撃をゴブリンキングへと放った。
すべての攻撃が見事命中し激しい爆発音と煙に階層内が包まれる。
「この威力、相当のダメージを受けたんじゃない?」
しかし煙が消えていく中にまだ立っている大きなシルエットが見えてくる。
「やっぱりこれだとダメか」
「なによ、あの理不尽的な耐久能力は!!」
「もっとこれを連続してやらないとだめみたいだ」
「限度はあるからね。使いすぎると一定時間使えなくなっちゃうから」
「わかってる。それまでになんとかしよう」
ゴブリンキングが叫んでいる間に僕達は次の攻撃の準備をした。
ディアは既にスキルを発動しいつでも放てるようになっている。
ナフィーさんは常に準備万端だ。
「ふふーん。ちょっと私も本気出しちゃうよ!」
「よしっ、行くぞ!!!」
僕はみんなにそう言ったあと連続で斬撃を放った。
しかし未だ完全体とは言えない斬撃を連続で行うと回数に伴って威力も低下してしまう。
それでも少しでもダメージになるように一回一回を全力で行い放つ。
「連続ナフィー流 ”
僕の斬撃と共にナフィーさんが連続の技を行った。
それが終わると次にディアがタイミングを見てスキルの炎を放つ。
ドカーンッ!!!
ディアのスキルで再び大きな音と煙に包まれる。
しかし今度はここでさらに畳み掛ける。
「もっとだ!!!!」
僕は休むことなく斬撃をナフィーさんは離れては近づいてを繰り返し技を当てる。
ディアは十個の炎を一気に一塊に放ちそしてまた発動しを繰り返した。
連続攻撃の繰り返しを三十秒ほど行った。
煙の中にはやはりまだゴブリンキングの姿があった。
「これでもダメなの……」
このままだと全員の体力の限界が来てしまう。
そう思ったその時、ゴブリンキングの鎧の一部がかけているのが見えた。
鎧の壊れているあそこならもしかしたらゴブリンキングに大きなダメージを与えられるのかもしれない。
僕はすぐに行動に移し煙であまり前が見えていないゴブリンキングへと走り出した。
「耐久野郎!! これで終わりだッ!!!!!」
鎧のかけている部分に勢いよく僕は剣を突き刺した。
「ウォォォォォォォ!!!!!!!!」
刺されたゴブリンキングは叫びながら暴れる。
それでも僕は諦めず着実に剣を体の奥へと突き刺していく。
「行けっ! エト!!」
「頑張ってください! エトさん!!!」
「私の分も頑張って!」
刺した剣はしばらくすると止まった。
もっと刺さないとまずいのに。
そう焦っていた僕だが気づくとゴブリンキングは声も出しておらず暴れてもいなかった。
「やったのか……?」
ゴブリンキングは消失した。
「あっ!! エトさんあれ!!」
ルルは消えたゴブリンキングの落とした魔石を取りに行った。
「あれ……これは……」
ルルが手に持っていたのは今までに見たことのない黒色の魔石だった。
僕もディアも一体何なんだろうとルルのもとに行き見ていると後ろからうるさすぎる声で「あぁあああああ!!!!!!!!!!」と叫ぶナフィーさん。
「どうしたんですか?」
「こ、これがセレンティバイト!!! こんなとこに落ちてたんだぁ!!」
「「「えぇええええええ!!!」」」
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