19.血の袋

 跳躍するナフィーさんは宙でなにかを叫ぶ。


「ナフィー流 ”双頭飛竜そうとうひりゅう” !!!」

「!!?」


 ナフィーさんは二つの短剣を持った状態で集まる魔物に斬撃の様なものを放った。

 その斬撃はまるで頭が二つある竜が飛んでいるかのように見える。


 斬撃は一気に魔物を飲み込んでいき細かい切り傷を無数につけていく。

 そしてしばらくし斬撃が消えた頃には魔物の姿はなくただ地面に沢山の魔石だけが落ちていた。


 ん〜、ナフィーさん有能すぎじゃないですか。


「流石ナフィーね!」

「す、凄いです!!」

「鍛冶職人してるけど一応冒険者だから当たり前っ!」


 ルルは急いで落ちている魔石を回収する為にリュックを体の前に持ってきて広い始めた。

 僕もルルの元に行きひとつひとつ魔石を広いそれをルルに受け渡していく。


「ありがとうございます!」

「まだ重くないか?」

「はい! まだまだいけます!」

「そっか」


 僕達が魔石を拾っているとディアとナフィーさんもこちらに近づいてきて会話をし始めた。


「でもこんなところに魔物が集まってるって変よね」

「確かに不自然な感じするかも〜。これは事件の香りが、ふむふむ」

「そんなことなんてあるのか? ましてや今日はこのダンジョンには僕達しかいないのに」


 魔物の集合を不思議に思っているディアとナフィーさん、でもそれくらいのことはたまたまという可能性もあるし気にしなくても良いのではと思う僕。

 話を続けているとちょっと離れたところに落ちていた残りの魔石を拾っていたルルが「これって何ですか!」と言いながらこちらに戻ってくる。


 ルルの方を見ると手には良くわからない布の様なものを持っていた。

 食べ物とか硬貨を入れておくものだろうか。僕も似たようなものを使っているからそのはずだろう。


 ルルは僕のところまで来るとそれを渡してくる。

 それを受け取ると拒絶したくなるような異臭が鼻を刺激してくる。


「なんだこれ!?」

「それって……」

「そうかも」


 ディアとナフィーさんはこの異臭のする布の正体が分かったのか二人は見つめ合い不安そうな顔をして一度頷く。

 一方僕とルルは全くこの異臭のする布の正体がわからずポカンっとしていた。


 とにかく何なんだこの臭い布は。


「エト、それはきっと血の袋よ」

「血の袋?」

「確か色々な腐敗した物を入れ込んだあと人間の血を入れるの。すると人間の血に敏感な魔物は反応して袋に集まる」

「ということは誰かがあそこに置いたってことか?」

「そうなるね。本来血の袋はダンジョンで沢山魔石を手に入れたい時とかに使って魔物を集めるのよ。もしそれと同じ用途でここに置いていたとしても今日このダンジョンにいるのは私達だけ」

「そうなると本来の使い方をしたとは言えないな」

「つまりこのダンジョンには私達を狙ってる何者かがいるってわけ」


 一体誰が誰を狙っているんだと一瞬思ったが何となく察した。

 狙われるような原因があるとすれば恐らく直近で一つ。

 きっとルル関係のことだろう。となるとこんなことをしてきているのはこの間いた悪質パーティーということか。


 でもなぜ悪質パーティーはそこまでルルに固執するのだろうか。

 言い方は悪くなってしまうが囮の代わりなどいくらでもいるはずだ。

 それなのにこんなことをしてまでなぜあの悪質パーティーはルルを狙っているんだ?


 ルルになにか重要な秘密でも握られていたりして一刻も早く処分したいのだろうか?

 まぁ、どんな理由であれルルに危害を加えさせるようなことは絶対にさせない。

 ルルは僕が僕達が守る。もう一度同じ世界に戻らせない為に。


「とにかくこれを置いたやつに気をつけながら進もう」

「そうね。そうしましょ」


 こうして僕達はどこかに潜んでいるであろう悪質パーティーに警戒しながらもセレンディバイトを求め次の階層に行くために歩き出した。


***


 カツンカツンと階段を降る音が二人分、ダンジョンに微かに鳴り響く。

 鋭利な剣を持つ二人の男が階段を降り終えると長い廊下を歩き始める。


「ロント、絶対にあの猫人族を奪い返すぞ」

「わかってますよ。じゃなきゃ他の連中にどんな顔して会えば良いんだって話ですから」

「もしかしたら他のやつも知っているかもしれない。猫人族を捕獲したあとは殺すなり好きにしろ」

「そのつもりっすけど二人で勝てるんっすか?」

「調べはついている。駆け出しの冒険者、エト。レベル1、スキルは一つだが戦闘向きではない。トータルして才能なし。強いて言えば周りのやつらが厄介なくらいだ。パーティーメンバーのディア。こいつは最近少し有名になりつつあるからな」

「その実力で猫人族入れて三人。二人でも行けそうっすね」

「あぁ、あのガキが助けるべきではなかったと思えるほどに痛みつけてやる」


 男は歩きながら地面に赤い血のついた袋を投げ捨てた。





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