20.

 現在の階層は第八階層。

 最終階層までは残り二階層だ。


 一応、悪質パーティーの存在には警戒しながら進んできたが未だに居たというはっきりとした痕跡など手がかりになるようなものは見つかっていない。

 このままただの落とし物として終わってくれることを願うしかない。


 だが八階層も五階層と同様に魔物の気配がまったくない。

 これが意味することはそう、また魔物がどこかに集まっている。

 それしか考えられない。


「あっ! 見て階段があるよ!」

「これで次は九階層目か。案外早く来れてるな」


 僕達はゆっくりと九階層に繋がる階段を降りていく。

 九階層に辿り着くと少し長い廊下の先にひらけた場所が見える。

 あの空間は一体何なのだろうか。


 不思議に思いながらも廊下を進み出すとすぐに嫌な匂い、直近に嗅いだことのある匂いが鼻を刺激してくる。


 これはまさか――。


 やはりその匂いの正体は血の袋だった。

 その周りには五階層よりもさらに数が多い上にゴブリンのような低階級の魔物ではない。

 少なくともレベル1の冒険者を翻弄させるくらいは力があるだろう。


 だがこの僕はただのレベル1冒険者ではない。

 ステータスの高いレベル1だ。

 昨日のを試してみるとしよう。


 僕は皆をその場に残し鞘から剣を抜きながら魔物が集まるところへと駆けていく。

 このパーティーのリーダーとして最低限の力をこいつらで見せる。


「おいおい魔物!! これでも喰らえッ!!」


 剣を握る手に力を集中させる。

 そして走りながら剣を横に振った。


 横に振った瞬間に空を斬った感覚がした。

 すると横に振ってから一秒もしない間に物凄い速さで魔物へ斬撃が飛んでいき次々に腕、足、体、首などを斬り落としていく。

 気づけばそこら中に集まっていた魔物は散り魔石に変化していた。


 この放った斬撃にはまだ名はない。

 実はこれが出来るようになったのは昨日の出来事で食事を終えた僕はルルを一度家に連れて帰ったあとダンジョンに一人で向かった。そこでいつものようにステータスを上げていたら空を斬る感覚に陥り今のように斬撃を放てるようになったのだ。


 ちなみにだがここ最近の様々な出来事で僕のステータスはかなり成長している。きっとディアの方が上だがそれでも構わない。

 成長出来るということだけで十分だ。



================

名前:エト・アルハドール


レベル:1

筋力:388

体力:356

耐性:312

敏捷:89


スキル

能力明晰ステータス・クラリティ

特殊能力適応スキル・アダプト


適応

*弱毒耐性

*恐怖耐性

*弱物理攻撃耐性

================



 このステータスプレートに刻まれた数値を見ているとここに来た時の数値がなんだか遥か昔のことに思えて懐かしく感じる。


 適応。

 何度かダンジョンでもぐりこれについて色々試した結果これについてようやくわかった。


 僕が手に入れたこの【特殊能力適応スキル・アダプト】というスキルはどうやら殺した者に対しての耐性を手に入れる事ができるらしい。


 例えばこの間倒したブラックハウンドは【*毒唾ヴェレーノ・サリーヴァ】という毒のスキルを使っていた。

 そして僕がブラッドハウンドを殺したことで【特殊能力適応スキル・アダプト】が発動し弱毒耐性というのを手に入れたというわけだ。


 だがここでこのスキルには二つ難点がある。

 ひとつはたとえ殺したとしても耐性を確実に手に入れる事ができるわけではないということだ。

 何度か様々な耐性がつきそうな魔物を殺してみたがつかなかった。

 もしかしたらなにか耐性がつく条件があるのかもしれないがそれは今後解明するとしよう。


 ふたつめは敵の持つスキルに耐性がないと勝てる可能性が下がってしまうのに殺さないと耐性がつかないという点だ。

 これは正直言ってかなり致命的な問題だ。


 確かに耐性というのは強力な力だがそれでもこのデメリットはあまりにも大きすぎるんじゃないかと思う。

 でも殺す事ができて耐性がつけば今後そのスキルや似たスキルを使う敵が現れた場合、こちら側が優位に戦う事ができる。

 その点ではこのスキルは最強と言っても過言ではない。


「エト凄いじゃん! いつの間に私より凄くなってるのよ!」

「まだまだだよ。それにディアがいなかったらそもそもここに居なかったしな」

「そ、そうよ! 感謝してね! それとステータス上げに行くなら私もちゃんと誘いなさい!」

「だっていなかったし」

「呼んだら帰って来るわよ」

「それ意味あるのか?」


 僕は会話をしながら剣を鞘にしまう。

 ディアとルルとナフィーさんは僕のいるところに歩いてきた。


「これは新しい剣を作ったらエトはもっと強くなってしまうよ〜!」

「そうなんですか!」

「なんせ私が作る剣だからね! そりゃあもう凄いよ」

「期待しておきます!」


 ルルは一つ一つ魔石を拾いながら僕に向かって「流石エトさんです!」と微笑んで言ってきた。

 そんなルルに対して僕も笑顔で「ありがとう」と礼を言う。


 カツカツ

 カツカツ


 僕らはそんな音が聞こえてきて喋るのを止めた。

 その音はまるで足音。しかも二人分の。


「ルル、こっちに来るんだ」

「あ、え、はい!」


 ルルは僕の後ろに隠れる。

 徐々に近づいてくる足音。

 僕は暗闇の中をよく目を凝らして見つめる。


 すると微かに二人の人物の姿が見える。


「また会ったな。泥棒」


 そこにはあの時の悪質パーティーの二人が立っていた。






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