18.魔宝石
リヒトリア小規模ダンジョンの中を歩きだしてしばらくした。
まだ一階層だが明らかに他のダンジョンとは異なる景色だ。
辺りはいくつかのキラキラとした石のようなものが壁に埋まっており幻想的な空間になっていた。
「すごくキラキラしていて凄いです!」
「これって魔石とかなの?」
「これは所謂魔宝石って言うやつなんだ。魔物の血とかがたまたま原石に触れることで魔の力が染み込んで生まれるんだよ。魔宝石には普通の宝石とは違って力があったりするんだ!」
「確かリヒトリア小規模ダンジョンは元々原石が多く存在していた場所だって聞いたことがあるわ」
「そう! だから他のダンジョンでは見られないこういった光景が見られるんだよ。でも私が探してるものはここにはないからどんどん行くよ!」
***
何体かの弱い魔物を処理しながら僕達は歩き続けてついに五階層まで辿り着いた。
残すところもあと五階層なのだが未だにナフィーさんの求めているものが見つからない。
道中に聞いた話によるとナフィーさんはセレンディバイトという黒い魔宝石を探しているそうだ。
セレンディバイトは魔物から低確率で落ちることもあれば一階層の時のように壁に埋まっていることもあるらしい。
だが壁にあるセレンディバイトは滅多にないそうで魔物を倒さず必死に壁を見続けるのはあまりにも非効率で現実的ではない。
なので先程から魔物を狩っているのだがさすが低確率と言ったところだろうか。
普通の魔石しか落ちない。
本当に落ちるのかと疑ってしまうほどに黒い要素すらも見えない。
「これは相当時間がかかりそうね」
「でもセレンディバイトが見つかればエトはさらに強くなるから!」
「エトが強くなってくれるならどこまでも協力はするけど本当にこの弱い魔物達から落ちるものなの?」
「昔酒場で盗み聞きした話によるとそうだよ」
「絶対に違うやつね。そもそも十階層までっていう小規模ダンジョンなんだから大体貴重なアイテムとかは最終階層にあるもんじゃないの?」
「た、確かに。ディアは天才だね〜」
「それほどでも〜って違うから。ほらこうなったら早く十階層まで行こ!」
僕が歩きながら無言で頷いているとディアがこちらを向いて「何、その顔は?」と聞いてくるので再度頷いて「たまに頼りがいのある人になるよな。ディアは」と言った。
「私はいつでも頼りがいのある真面目な女の子ですけど」と言いながら先を歩いていく。
それに僕達は続いてついていく。
みんなで歩いている中、少しだけルルの歩く速度が落ちているように思える。
その原因はきっとリュックだろう。
僕のいつも背負っている魔石などを入れておくリュックをルルが持ちたいと言い始めたのが発端だ。
重いうえに負担も大きいから大丈夫だとは言ったのだがそれでも何か手伝えることがしたいというのでひとまずルルにリュックを任せている。
だがやはりリュックが負担になっているようで体力も奪われ始めたのだろう。
「ルル、やっぱり僕が持つよ」
「大丈夫です! 私一人で何とか出来ます!」
「そんなに無理しなくてもいいんだよ」
「それでも持ちます!」
「そろそろ体力だって限界が来たりするぞ?」
「その時は安心してください! どうにか出来ますから!」
「まぁ、わかった。本当に無理だったら僕に渡して」
「わかりました!!」
これだけルルが僕の為になにかをしたいと言っているのだ。
あまりそれを無下にするのもよくない。もう少しだけルルにリュックを任せておくことにしよう。
「ねぇ、みんなあれ見て」
先行していたディアが足を止め僕達にそう言ってきた。
ディアが指さす方には魔物が多く集まっている。こんなにも魔物が集合しているところを見るのは初めてだ。
パッと見る限り一体当たりの強さはそこまでかぼちぼちと言ったところだ。
ただそんな魔物でも集合体を作り一気に襲ってくると気を引き締めていても被害が出る可能性もある。
ここはルルやナフィーさんはもう少し後ろに下げるべきだろう。
「ルルとナフィーさんは後ろに下がってください!」
「いいや、私もやるよ!」
「え?」
「私、一応戦えるから。力になるかはわからないけどね」
「そうなんですか!」
「まぁ、見ていなさいな。私流の戦い方を」
ナフィーさんは歩きながら一つの筒のようなものを腰から取り外し手に持つ。
「これは私のお気に入り短剣でね、一つの鞘に短剣が二つも入っているのさ!!」
その言葉通り鞘を左右の手で外側に引っ張ると短剣が二つも現れた。
さすが鍛冶屋の娘。
不思議な武器を持っている。
「それじゃあ行くよ!!! バトルナフィーの時間だ!」
ナフィーさんはそのまま走り跳躍した。
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