15.三人で食事

 家を出てからそれなりの時間が経過した。

 そろそろお腹が空いてきた。どこかの店に入って腹ごしらえでもしよう。


「ルル、お腹空いてないか?」

「す、空いています!」

「よし、じゃあどっか食べに行くか。こんなのが食べたいとかあるか?」

「……お肉を食べたいです!」

「いいなぁ。行こうか!」

「ちょっと待って。私も行く」

「リーシアさんもついてくるんですか?」

「だめ?」

「あ、いやだめとかそういうのじゃないんですけど、時間は大丈夫なのかなと思いまして」

「大丈夫。だから行こう。お肉」


 こうして僕とルル、そしてついてくることになったリーシアさんの三人で近くのお肉の料理を売っているお店を探すことにした。


***


 リーシアさんの隣で歩いていて思ったのだが周りからの視線が凄い。

 それは周囲がリーシアさんという存在への尊敬的な意味合いと僕に向ける誰なんだあの子という意味の視線が入り混じっているものだ。


 まぁ、無名な僕が隣にいたらそうなるよね。


 トップパーティーに所属しているだけでも凄いのにリーシアさんはいくつかあるうちの一つのトップパーティーのリーダーをしている。

 やはりそれほどの人物になるとこのダンジョン都市でも知らない人はいないのだろう。

 トップパーティー。

 他にどんな人達がいてどれほどの実力なんだろう。


 僕がそんなことを考えているとリーシアさんが僕の肩に触れてなにか話しかけてくる。


「ここのお店、美味しそう」

「ルルはここでも大丈夫か?」

「勿論です!!」

「じゃあリーシアさん、ここでお願いします」

「うん」


 僕達はリーシアさんの見つけたお店に入る。

 中には既に色々な人達がおり中には冒険者もちらほらいた。


 入口付近で止まっていると店の人らしき人物がこちらにやってくる。


「いらっしゃあああああああ!!!!!」


 店の人はリーシアさんの顔を見た瞬間言っていた言葉を止め「あああ」とだけしか言わなくなってしまった。


「リ、リーシア様ですよね!」

「うん。私はリーシア」

「まさか来てくださるなんて! 今すぐ席をご用意しますね!」


 僕達は周りの客の視線を浴びながら店の人についていき席についた。


「ちゅ、注文が決まったら私を呼んでください! そ、それではッ!!」

「わかった」


 店の人はとてつもない速さでこの場を去った。

 あの速さ、もしかしてステータスを相当上げているのか?


「どれにする?」

「じゃあ僕はこのオックスステーキで」

「あ、私は食べ切れないと思うのでエトさんのを少し貰いたいんですが……」

「別にいいよ。それでリーシアさんはどれにします?」

「私はこの野菜にする」

「じゃあ、お店の人を呼びますね! すいませーん!」


 僕が声を出すと先程の店の人がまたもやとんでもない速さでこっちに走ってきた。


「ご注文は何でしょうか!!!」

「えーっとこれとこれでお願いします」


 僕は頼む料理に指をさして言った。

 お店の人は紙にメモをすると「わかりましたッ!!!!」と言ってとんでもない速さで去っていった。


 なんだか凄い人だな。


***


 注文してから七分ほどが経過した。

 リーシアさんといろいろな会話をしているとようやく僕達の頼んだ料理が運ばれてきた。

 さすがにあのお店の人も物を運んでいる時はゆっくりなようだ。

 料理をテーブルの上に乗せて注文の品を確認する。

 それを終えるとやはり店の人はとんでもない速さで去っていった。


 運ばれてきた料理はとても良い匂いで食欲をそそる。

 早速一切れをフォークで取り口に運ぶ。

 一度噛んだだけでも肉汁がじゅわっと溢れ出してくる。


 言葉に表すのは難しいが簡単に言うと美味い。この言葉に尽きる。


 僕がお肉を食べていると隣に座っていたルルが目を輝かせてこちらを見つめていた。

 どうやら僕が食べているところを見ていたルルは待つのに我慢が出来なくなってしまったらしい。


 僕はお皿をルルの方に動かして食べれるようにしてあげようとしたのだがその時ルルは口をひらいてなにかを待っているようだった。

 まさか僕に食べさせて欲しいのか?


 フォークにお肉を刺した僕はそのままルルの口にゆっくり持っていく。

 するとルルはがぶっと噛みつきよく噛んで食べ始めた。


「おいひいです!!!」

「だよな!」


 僕とルルの反対側に座るリーシアさんの視線を感じる。

 なんだろうと思い見てみるとリーシアさんは野菜をもぐもぐと食べながらこちらを見ていた。

 もしかしてお肉がほしいのだろうか?


「リーシアさんも欲しいんですか?」

「私は大丈夫」

「じゃあなんでそんなに……」

「エトくんはもうすぐパーティー対抗戦が開催されるけど知ってる?」

「あ、いや知らないです! 前にそういうのがあると聞いたくらいで」

「じゃあ説明してあげる」


 リーシアさんは最後に野菜を口に入れてもぐもぐと咀嚼しそれが終えると話始めた。


「パーティー対抗戦はパーティーで協力しあい最強のパーティーを決めるもの。この対抗戦に際して予選が行われる。予選は魔石の量や質で競い合う。それが終わると予選上位パーティーがリーグというのに進んでいく。このリーグにはAリーグとBリーグっていうのがあってAリーグでは既に登録されているパーティーが戦いあい、Bリーグでは直近に出来たパーティーが戦い合う。それでAリーグとBリーグの上位同士が戦って最強パーティーを決める」


 つまりは僕達の場合、Bリーグで勝ち抜きAリーグと戦い勝つことが出来ればこのダンジョン都市に名を轟かせる事ができるというわけか。

 でもたとえBリーグの上位パーティーだとしてもAリーグの上位パーティーと戦って勝てるものなのだろうか。

 Aリーグの上位パーティーということは恐らく殆どがトップパーティーが食い込んでくるはずだ。

 そんな人達を相手に戦うなんて無謀すぎる気がする。


「あ、あのリーシアさんは対抗戦に出るんですか!」

「私出ようと思ってる」

「もし僕達が勝ち抜けばリーシアさんのパーティーや他のトップパーティーと戦えるんですよね」

「いいや、私達はパーティーでは出場できない」

「それはどういうことなんですか?」

「トップパーティーは対抗戦においてある条件がつけられていて参加する場合単独じゃないとだめ」


 流石にトップパーティーだからといって複数人の強者相手に勝つなんて無理だと思ってしまうがきっとこの人達は簡単にやってのけてしまうのだろう。


「あの! リーシアさんってどれくらい勝ったことがあるんですか!」

「私はそれほど参加していないからあれだけど、過去に五回優勝したことがある」

「す、凄いです!!」

「あっ」


 リーシアさんは話の途中で立ち上がるとポケットの中から数枚の硬貨を取り出しそれをテーブルの上に置く。

 いきなりのことだったので戸惑ってしまった。

 

「いきなりどうしたんですか?」

「今日はザットに呼ばれてたんだった」

「ザット……?」

「私のパーティーメンバー。エトくん、また今度一緒にゆっくりご飯食べよ」

「あ、はい!」


 そしてリーシアさんは店を去っていった。

 テーブルの上に置かれていた硬貨は僕が食べているステーキの値段をあわせても支払うことが出来る金額だ。

 どこかで返すしかないか。


 僕とルルは二人でステーキを頬張った。


「おいひい!!」

「美味しいな!」







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