14.ナフィーさん
「エトくん、知ってるの?」
「はい! 探してたんですよ」
すると隣にいたルルが申し訳無さそうに「気付きませんでした……ごめんなさい」と謝ってきたので気にしなくていいと伝えようとした時、ずっと黙っていたナフィーさんがついに口を開いた。
「あっ! ごめんね。プライベートナフィー状態の時は髪の毛をおろしてて、仕事の時は髪を後ろでお団子にしてるんだ。だから気づけなかったのかな?」
「なんですか、そのプライベートナフィー状態って」
「全く〜そのまんまだよ。プライベートナフィーの字面そのまんま」
僕はこの変な人に命を助けられたのか。
なんだか不思議な気持ちになる。
「それで私を探してたって言ってたけど」
「あ、はい。先日は治癒をしていただきありがとうございます!」
「別にそれくらいのこと良いって」
「それでナフィーさんの家は鍛冶屋って聞いたんですけど」
「あ〜そうだよ! この都市じゃちょっとだけ有名なんだ!」
リーシアさんは特に何も言うことなく僕の隣にやってきて同じ様にナフィーさんの方を向いた。
どうしたんだろうと思い声をかけようとした時、先にリーシアさんが口を開いた。
「ナフィーのところの鍛冶屋はとても腕がいい。多分このダンジョン都市で一番」
「全く〜そんなことないって。まだまだしがない鍛冶屋だよ。まぁ、そこそこは稼いでるけど!」
最初は治癒をしてもらったお礼の為にナフィーさんの鍛冶屋を利用するつもりだったがリーシアさんの話しを聞いてより鍛冶屋を利用してみたいと感じた。
こうなったら日が暮れる前に行ってみたい。
「ナフィーさん、お願いなんですけど」
「なになに?」
「僕の剣を作ってくれませんか? 実はこの前、魔物と戦ったときに折れてしまいまして」
「ふむふむ、よい! んじゃあ、早速私のお家へ向かおう!」
こうして僕とルルはナフィーさんを先頭に向かい出した。
しかしここでよくわからないことが起こる。
なぜか僕の隣にずっとリーシアさんがついてきているのだ。
ただついてきているだけならそこまで不思議なことではないのだがリーシアさんは歩きながらこっちを見てきている。
僕の顔になにかついているのだろうか。
僕は気になって聞いてみることにした。
「どうしたんですか?」
「なんでもない」
「でもずっと見てきてたので、なにかあるんじゃ……」
「ほら見て。鳥が飛んでる」
「飛んでますね」
「そういうこと」
「どういうことですか!?」
リーシアさんの謎の行動についての理由を聞き出すことが出来ず数分が経った頃、ひとつの建物の前でナフィーさんが立ち止まりこちらに体を向ける。
「ここが私の家兼鍛冶屋だよ。さぁ、入って入って」
ナフィーさんは鍛冶屋の扉を開けながらそう言った。
僕達は案内通り鍛冶屋の中に入った。
鍛冶屋の中は沢山の装備や様々な種類の武器が置かれておりまるで宝の山だ。
鍛冶屋の奥にはガタイの良い男が二人、若い男が一人いた。
「ナフィー、帰ってきたのか」
「あ、お父さん! ただいま」
「それでリーシアの隣の人は誰なんだ?」
額にタオルを巻いているガタイの良い男はどうやらリーシアのお父さんのようだ。
僕は急いでリーシアさんのお父さんに自己紹介をすることにした。
「僕はエトです。こっちがルルです」
「エト、ルルか。俺はナフィーの父のクレイドだ。それでどうしたんだ今日は?」
「実は剣を作ってもらいたくて」
「俺は他の仕事も入ってて手が離せねぇ状況なんだ。だからナフィー、お前が作れ。これでもし上出来なモンが出来たら好きなとこにでも行って良い」
「お父さん、ついに言ったね。その言葉忘れちゃだめだから」
「ふっ。ただ分かってるな? 上出来じゃなかったらもう一年修行だからな」
「そんなの分かってる! 私は今度こそ傑作を作ってみせるから!!」
「まぁ、頑張れ。エトはそれで良いか」
「あ、はい。作って頂けるなら」
するとナフィーさんは店の奥に髪をお団子の様に結びながら「エト、私絶対に良いの作ってみせるから待ってて!!」と言い走っていった。
「おめぇ、はよ石を入れんかい」
「ってラロルドさんが出したんじゃないですか」
「良いから入れい」
クレイドさんの前にいたガタイの良いもう一人の男はテーブルの上に置かれていたいくつかの魔石を若い男にしまわせていた。
若い男は文句を言っているが布袋を広げその中に魔石を入れていく。
この光景……どこかで見たような。
気のせいか?
「んじゃあクレイド、俺達はそろそろ帰る。また今度な」
「あぁ! いつでも待ってるからな」
「あ、あ、なんかすいません、クレイドさん。またお邪魔します」
ラロルドという男と若い男はクレイドさんに挨拶をしたあとこちらに歩いてくる。
そして僕の横を通りかかる時に「じゃあな、若いの」と言って鍛冶屋を出ていった。
「エト」
「あ、はい!」
「あいつが完成するまでどうせ半年はかかるはずだ。いやもっとかもな」
いやいや流石にそれはかかり過ぎじゃないか。
頼んだことすら忘れてしまいそうだ。
「だからそこら辺に置いてる剣を一本くらい譲ってやる」
「え、良いんですか?」
「あぁ、ナフィーの成長に協力してくれるんだ。それくらいのことはする」
「ありがとうございます」
早速僕はナフィーさんが剣を作っている間に使う剣を選ぶことにした。
改めて見渡すがやはり種類が豊富だ。
どんな役職の冒険者でも対応することが出来る。それがきっとここがダンジョン都市で最も有名な鍛冶屋である所以なのだろう。
さてどの剣にしようか。
どれも良い見た目に良い性能をしている。これもあれもこっちもそれもどれもこれも良すぎて一本に絞る事ができない。
どうやって決めるべきか。
僕が剣選びで悩んでいると一緒に考えていてくれたルルが服の裾を引っ張って「この剣がエトさんに似合ってると思います!」と言ってきた。
ルルの言っていた剣を引っ張り出し鞘から出して良く隅々まで観察する。
どこを見ても完璧で難癖などつけることの出来ない完成度の剣だ。
手に握った瞬間これだと思わせるほどだった。
「見る目あるな。それは俺が最近作った中でも良く出来たと思ってるやつだ。まぁ、トップパーティーの人間に売りさばけるような品じゃねぇがな」
「これにします」
「おう、持ってけ」
「色々とありがとうございます。それじゃ僕達はこれで。それとナフィーさんによろしくお願いしますと伝えておいてください」
「あぁ、わかった。あんま期待はしないほうがいいと思うけどな!」
こうして新たな剣を腰に取り付けて僕は鍛冶屋をあとにした。
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