13.救世主の彼女

「いらっしゃいませ〜。店主のサリーです〜」

「彼女に似合う服を用意してもらうことは出来ますか?」

「それならお安い御用ですよ〜」


 店主のサリーさんという方は僕が注文するとすぐに沢山置かれている服を見始めた。

 その間、待っている僕の服の裾をルルがくいくいと引っ張る。

 どうしたのかと声をかけると申し訳なさそうな目で僕を見つめて来る。


「エトさん、私の為に硬貨を使わなくていいですから、頑張った自分にどうか使ってください。それに私はディアさんから余っていた服を頂きましたので」


 今ルルが来ている服はディアだったのか!?

 でもだからといってこのままなのもなんだか良くない気がする。

 猫人族のルルにとってディアの服は少しばかり違和感がある。なのでここは思い切って全部ディアのから取っ替えてしまおう。


「遠慮はするな。ディアには言っておくから」

「……そうですか」

「選ぶ終わったので可愛い猫人族の彼女はこっちに来てください〜」

「ほら、ルル。行ってこい」

「は、はい!」


 サリーさんに案内されてルルは試着室の中に入っていた。

 

 ルルが試着室に入ってから少し経つと中から声が聞こえてくる。


「あ、あの着替え終わりました……。でも、こ、これはちょっと」

「絶対似合ってますから〜」


 サリーさんは勢いよく試着室の布を引っ張って開ける。

 すると中にはメイド服を着たルルの姿があった。


 だが普通のメイド服とは違う箇所もあり胸元は大きく空いていたりスカートが短かったりと問題大アリの格好だ。

 流石にこんな格好で街中を歩かれては色々と困る。


「サリーさん、もっとちゃんとしてください」

「若い女性連れの男性はよくこれを買われますよ〜?」

「たまたまですよ、それは。なのでちゃんとしたのを選んでください」

「全くお客さんはまだ子供ですね〜」


 何なんだこの店主は。

 ちょっとおかしいんじゃないか。


***


 今度はしっかりサリーさんを見張り服を選ばせた。

 着替え終えたルルの声が試着室の中から聞こえてきたのに反応しサリーさんが勢いよく布を引っ張る。

 

 姿を見せたルルは少し照れながらこちらを見つめてくる

 ルルの着ている服はルルという存在の良さを残しつつ猫人族が来ても違和感のないものだった。


 僕はリュックから硬貨の入った袋を取り出しながらサリーさんに「これを買います」と言って会計に進む。

 

「ちょうどですね〜。着ていた服はどうしますか? お持ち帰りになりますか〜?」

「一応持って帰っときます」


 僕はルルから脱いだ服を受け取るとそれを畳んで硬貨の袋と一緒にリュックの中にしまい込んだ。

 買い物を済ませた僕達はそのまま服屋を出ることにした。


「またのお越しをお待ちしてます〜」


 服屋を出た僕達は今回の新たな本題であるナフィーさんという人がいる場所に向かている。

 ルリアさんによるとナフィーさんは公共ダンジョンの近くの鍛冶屋の娘と言っていた。

 だが公共ダンジョンの周りは冒険者の為の鍛冶屋が沢山ありどれか全くわからない。

 それに僕はこの都市に来てから一度も鍛冶屋などに行ったことがないのでどんな人達が鍛冶屋を営んでいるのかもわからない。


「あ、あの服、ありがとうございます!」

「いいよ。ディアのよりこっちの方が似合ってるし」

「……はい!!!」


 明るく返事をしたルルはすぐによそを向き顔を合わせようとはしてこなかった。

 そこにどんな意図があるのかはわからないがそこまで気にするようなことではないだろう。

 今はとにかくナフィーさんがどんな人でどこの鍛冶屋にいるのかが知りたい。


 歩きながら考えていた僕はナフィーさんを見つけられる方法を見つけ出した。

 それはなんともシンプルで今まで見つけ出せなかったことが不思議で仕方がない。

 ナフィーさんを見つけ出す方法は――そう、ひたすら公共ダンジョンの周りを歩き回る。


 一見頭のおかしい方法だがルルもあの場にいたということはナフィーさんを目撃しているはずだ。

 となればルルの記憶を頼りにナフィーさんを探し出せばいいだけなのだ。


「なぁ、ルル」

「どうしたんですか!」

「僕を助けてくれたっていうナフィーさんの特徴を覚えているか?」

「凄く凄く詳細なことは覚えてはいないですけどある程度なら覚えています! だからお役に立てると思います!」

「それは助かる。もし歩いていてナフィーさんらしき人がいたら言ってくれ」

「はい!」


***


 あれから公共ダンジョンの周りをまるで不審者のごとく徘徊し早一時間、それらしき鍛冶屋も無ければナフィーさんの姿も見当たらない。

 もしかしたらどこか違うところに出かけてしまっているのではないかと思い探すことを断念しようとしたその時、歩いている僕達の後ろから「エトくん」という名を呼ぶ声が聞こえてきた。


 振り向くとそこにはリーシアさんと見たことのない知らない女性がいた。

 見たことのない知らない女性は綺麗な水色髪をしており一瞬だけ見惚れてしまうほどの容姿をしていた。


「リーシアさん!?」

「久しぶり。また会えたね」

「あの時は本当にありがとうございました!」

「別にいいよ。それよりギルドで聞いた。エトくんの噂を」

「噂ですか?」

「ついに悪質パーティーに喧嘩を売ったやつが出たって。それがエトくん」

「あぁ〜、ちょっと色々ありまして……」

「私は分かってる。だから安心して。出来るだけ協力はする」

「それはありがとうございます!」


 会話をしているとリーシアさんはさらに近づいてルルのことを見つめていた。

 どうやら見たことのないルルに興味があるらしい。


「あ、彼女はルルで」

「もしかして悪質パーティー関係の?」

「一応そうですね」

「そっか。悪質パーティーも随分汚い手を使うようになったみたい。あっ、そう言えばパーティーを募集してたね」

「はい! 言われた通り集めようと思いまして。まだ一人しか集まってないですけど」

「ここからだから大丈夫。継続が大事だから」


 さっきからリーシアの後ろで一言も発することなく大人しく立っている女性がずっと気になってしまう。

 あの女性はリーシアさんの友人なのだろうか? それともパーティーメンバーなのだろうか。それならば早く挨拶をしておいた方が良いかもしれない。


「あの、あちらの女性は一体……」

「ナフィー」

「!!!?」


 こ、この女性がナフィーさん!!!!!?


 僕は心の中で思わず叫んだ。








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