3.情報
「でもどうにかなるから大丈夫」
てきとう過ぎないですか……リーシアさん。
もしかしたらまだ上がる段階じゃないから上がっていないって可能性もまだ少なからずあるから大丈夫って言えば大丈夫だけど。
「それより飯でも食おうぜ。エト腹減ってんだろ」
「そんなことないので僕はもう帰りますよ!」
その時僕のお腹が鳴った。
恥ずかしさのあまり顔を赤らめ僕は下を向いた。
ドッグを笑いながら「ほら、行くぞ」と言って部屋を出た。
「行こ」
「は、はい……」
僕は剣とリュックを持って立ち上がりリーシアさんのあとをついていった。
少し長い廊下を歩く。相当立派な建物なんだろう。作りが凄い。
しばらく歩いているとリーシアさんは足を止め扉の前で止まった。
「ここがいつもみんなでご飯を食べているところ」
リーシアさんは扉を開ける。
するとそこには大きな円型のテーブルが置かれておりその周りには囲うように椅子が置かれている。
奥には厨房らしき場所もありまるで城のような感じだった。
部屋の中に入っていくリーシアさんのあとをついていく。
「エトくんはここに座って」
「はい」
指定された椅子に座る。
隣にはリーシアさんが座ってきた。
横目にリーシアさんを見たが綺麗な女性だ。容姿端麗でやわらかな長めの金髪。手入れをかかさずしているのがわかるほどサラサラとした毛質だ。
「エトくんはこのダンジョン都市出身?」
「いや、遠い村から来てまだちょっとしか経ってないです」
「ならまだ色々とわからないこともあるだろうしどんな質問でも答えるよ」
こんなチャンスはアーブル戦の時以来のことだ。
ここで色々と聞いておけば今後に役に立つはずだ。遠慮なく聞くとしよう。
「そのレベルってのがよくわかってないんですけど……」
「レベルは最大10まであって称号みたいなもので高ければ確かに実力はあるし低ければ実力はそれほど。でも全員がそういうわけでもない。レベルがそこまででもステータスやスキルが強いっていうこともある。この世界は努力と諦めの悪さが重要」
「努力と諦めの悪さ……。ありがとうございます。他にもいいですか?」
「どんどんいいよ」
***
その後も僕はしばらくリーシアさんに色々な質問をした。
これからこのダンジョン都市で生きていくためのことやレベル上げやステータス上げの効率のいい方法などを。
そんなことをしているとドッグさんが何やら器の様なものを二つ持ってきてそれをテーブルの上に並べた。
置かれたのは肉の入った何かだ。村では見たことのない料理で戸惑っているとドッグさんが迷わず口に料理を運んで美味しそうに食べる。
それを見ているとなんだか食べてみたくなってきた。
「エト、お前も食べろよ。これ美味いから」
ドッグさんがそう言うと隣に座っていたリーシアさんがフォークを使って肉を取る。
するとそれを僕の口もとまで運んできた。
「じ、自分で食べれますから!」
「そう?」
「甘えとけばいいものを。勿体ないことするなよ、エト」
流石に助けてもらったうえに食べさせてもらうとなると気が引けて食べられない。
僕は肉が刺さったフォークをリーシアさんから受け取って口に運ぶ。
たった一回噛むだけで口の中に肉汁が広がり食欲をそそる。
どんだけ美味しいんだこれ!!!
僕がもう一度肉にフォークを刺して食べるとリーシアさんが声をかけてきた。
「エトはパーティーって作ってる?」
リーシアさんの教えてくれたことによるとパーティー、それはダンジョンなどで役割を分担し攻略の効率を上げる事ができるそうだ。さらには人数がいることで複数人必須のダンジョンにも行けるらしい。
さらにさらにギルドにパーティー結成申請をすると様々な特典があるとか。
それと定期的にパーティーの対抗戦も行われるそうで優勝すれば大金が手に入るそうだ。
つまりパーティーを組んでいて損することなどない。むしろ組まない方が損なのである。
「まだレベル1ですし……無理かと……」
「それでも組んだ方がいいと思う。ダンジョンで一人の人を見つけて声をかけたりしてみて」
「わかりました。一応やってみます」
「パーティーの地位が大きくなればダンジョン独占とかも出来るから良いぞ! でもそれが原因で争いがちょくちょく起こってんだけどな」
このダンジョン都市――リトルリアでは年間で何人もの人が死んでいるそうだ。
ダンジョン内で魔物に殺されたり不慮の事故でなくなる者は多々いるが最も多い死因が他殺だそう。
どこでも人間は同じことを繰り返しているのだ。
「もう食い終わったのか」
「お腹が空いてたのでつい……」
「まだ作り置きがあるから食べる?」
「お腹は満たされたんで大丈夫です!」
「待ってて」
リーシアさんは椅子から立ち上がると奥へと急いで向かっていった。
どうしたんだろうと思っているとドッグさんが声をかけてきた。
「エト、そういや知ってるか? 寝たっきりの間ずっとお前の部屋にいたんだぜ」
「ドッグさんがですか?」
「居てほしかったのか? ってちがう。リーシアだよ、リーシア。まぁ、昔から人の面倒とかは見るタイプだったけど見ず知らずの男にあそこまでするなんてな。もしかしてダンジョン内でなんかしたのか?」
「な、何もしてないですよ! 変なことを言うのはやめてください!」
「悪い悪い。まぁ、リーシアはあんな感じでちょっと冷たい態度を取ってるように見えるけどいい奴だから仲良くしてやってくれ」
「助けてもらいましたし勿論です」
「ドッグ」
僕達が話していると紙袋を両手で持ったリーシアさんがいつの間にか僕の隣に立っていた。
「何話してたの?」
「なんでもないぜ。な、エト?」
「は、はい。特に何も」
「そう? それとこれ、よかったら食べて」
「これは……?」
「作り置きを入れておいた。何かあったら食べて」
「ほ、ほんとですか! ありがとうございます」
僕はリーシアさんから紙袋を受け取る。
「あ、それじゃあ、僕は色々とやらないといけないこともあるので家に戻ります!」
「そうか! なんかあったら俺達を頼ってくれよ!」
「はい!!」
「またどこかで」
僕はリーシアさんとドッグさんに別れを告げて部屋を出た。
「……あ、あのぁ……。どっから出るんですか……」
「私が教える」
別れを告げて数秒で再会を果たした僕はリーシアさんに連れられて建物から出る扉に向かい出した。
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