第13話
花見との通話から数日が経って、今日は花見の誕生日。
かすみ:『佐野君おはよー!』
Ryou:『おお、花見、おはよー』
かすみ:『へへ、朝から佐野君とLINNE出来るの幸せ』
Ryou:『なんでだよw』
かすみ:『だってwじゃあ、また学校でね!』
あれからなんとなく毎日LINNEするようになって、たぶん己惚れなんかではなく、花見は俺に好意を持ってくれていると思う。
Ryou:『あ、花見。誕生日、おめでと』
かすみ:『う、わ、嬉しい! 嬉しくて死にそう』
Ryou:『死ぬなw』
かすみ:『じゃあ、生きてまた学校で会いましょう』
Ryou:『おうw』
そして花見も、俺が花みんを推してるというのは知ってる。けど……俺がリアルでの花見の事が気になってるということは、まだ知らないかもしれない。だって、まだ言っていないから。
花見とLINNEしてても、通話してても楽しいし、リアルの花見も仕草とか可愛いと思ってる。でも、花見と仲良くなったのはほんの最近の事だし、それになにより……
「あ、花見、おはよー」
「あ、あ、あ、お、お、おは、……よっ」
登校して実際に教室で会った時の花見は、こんな感じ。
LINNEや通話、そして花みんとしての配信の時とのギャップあり過ぎなまま。
だから、告るとか付き合うとか、そういうことはまだ今は考えずに、ゆっくり、ゆっくり仲良くなれたらそれでいいかなと。今のこの時間を大切に出来たらいいかなと思っている。
とはいえ。
「あ、花見。これ。あげる」
「え?」
「誕生日プレゼント。大したものじゃないけどよかったら」
「え、え、あ、ありがとっ!」
誕生日プレゼントくらいはあげたい間柄だとは思ってて、けれどまだ仰々しいものを上げるほどの関係でもないと思っていて。
プレゼントしたのは、簡単にラッピング包装したくすみブルー色したカスミソウ柄のシャーペン。
シャーペンくらいなら、あっても被っても困らないだろうし、花見の持っているくすみブルーの花柄のペンケースとも合ってて好きそうだと思った。
そして、わざわざ呼び出して渡すほどのものでもないと思ったから、教室でさりげなく渡したつもりだったのだけど。
「あっれー? 亮太、今、花見に何あげたの?」
しっかりと忍に見られていた。
「ん? あー。ただのシャーペン。今日、花見の誕生日だから」
隠すつもりもないからそう言った。
「えー。花見とそういう関係なの? 俺の誕生日には何もくれなかったのに」
「いや、お前も俺の誕生日に何もくれてないじゃん」
「そうだけどー。言っちゃなんだけど花見って地味じゃん? あんまりそういうプレゼントをあげる対象になる相手だとは思わなかったというか」
「ああ」
「亮太って花みんみたいな子がタイプじゃん? あ、そう言えば明日、花みんの誕生日配信だな!! もちろん見るだろ!?」
少し突っ込まれつつ、話は花みんの話になっていて。
「いや、それが、俺明日バイトなんだよなー」
「マジかよ。俺は今回スパチャ送るって決めてるんだ!! 花みんマジで可愛いよな―。あんな子と知り合いになってみたいわ。特定厨がこの学校の生徒だとか言うからあれから少し期待して探してるけど、やっぱり絶対うちの学校の生徒なんかじゃないよな。あんな可愛い子いたらすぐ分かるっての」
そして『実際はクラスメイトなんだけどな』と心の中で突っ込みたくなるような会話になっていたけど、何も言えないまま朝礼前の予鈴が鳴った。
『花見と花みん』という似た名前、そして一日違いの『誕生日と誕生日配信』、そして『この学校の生徒らしい』という特定厨の話。こんなにも花見が花みんであるというヒントがあるにも関わらず、案外分からないものなんだなーと思う。けれど、知ってるのは俺だけでいい。そう思う自分がいて。
俺だけが知っているという特別感に今更嬉しくなりながら今日も授業中の花見の姿を見てみれば。
花見は早速俺があげたシャーペンを使ってくれていて。
休憩時間になるなりLINNEをくれた。
かすみ:『シャーペンめっちゃ可愛い!! ありがとう!! 大切にするね』
きっとその言葉は本心で。喜んでもらえて嬉しいなと思いつつ返信をして、本人の方に目線を送ってみれば。
――花見は体育の時ですらずっとかけてるメガネを外していたから驚いた。
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