少女の暴走と大団円、そしてビキニパンツ。


 ここで、菜々花は判断を誤った。


 目の前の男性を興奮させるほどの肌の露出、というものの見当がつかない菜々花。


 だが、無理もないと言えよう。勉学に励み、街の人々に平和と安心感をと願う菜々花は蓋を開けば、友達と耳年増な話を盛り上がる、ネットで恋愛物語を紐解いて自分の未来に思いを馳せる乙女でしかない。


 合意であれば今や親の承認がなくとも結婚できる年頃とはいえ、普段は自警団のコスや言動と反比例した可憐な少女であった。


(興奮。肌を見せるのは本当に恥ずかしい。でも自警団のお姉さんや同年代からは私はスタイルがいいって褒められる。で、でもでも。しょんぼりされちゃったらどうしよう。……それに)


 菜々花は顔を赤く青くさせながらビキニパンツの耐久力に驚く魁人をちらりと見た。


(ビキニパンツ。コイツ……いや、服を着たこの人を本部で見た。街で追いかける時は気付かなかったけどイケメンで、みんなで騒いだ事もあった。それにこの人の会社のサプリはどれもすごい効果をもたらす。この人ならきっと、あの悪党を懲らしめてくれるに違いない。でもでも、どこを見せる? けっこうおっきくなったお胸? でも、薄い桜色のトップってそれ系の動画を見てもあんましいない。私が変なのかも、却下。じゃあ、お尻? 自警団の活動と鍛錬でキュッ! でシュッとしてて褒められるけど、お肉がついてなくて貧相だって言われたら泣く、却下。じゃあ、どうするの? どうする?! あ、あそ……ダメダメ! さすがにあれは……あれは見せれない! でも、でもでも。この人なら。大人なこの人なら……ああああああもうわかんないよどうしたらいいの私何が興奮してしょんぼりしてとか意味わかんないばかばかばかばか)


 菜々花が混乱のあまりに取った行動は、デニムのショートパンツの前をずり下げる事だった。


 そこには。


 そう、そこは。


 可憐で涼やかな、あどけない顔立ちからは想像がつかない大人の証がしっかり、そう、しっかりと自己主張をしていた。


 顔を真っ赤にしながらくろぐろと生えた部分を見せつけた菜々花は、その勢いのままに叫んだ。


「応えてくださいっ!」















「下衆でゲス・ムーンライトっ!!!」















「史上の眼福!! おおお、滾るぅ!」



 ほっと一安心の息をついた菜々花の視線をよそに、ビキニパンツ改め『下衆でゲス・ムーンライト』はドローンを瞬時に破壊し、魁人を拘束した。


 『下衆でゲス』は足の怪我で歩けない菜々花をお姫様抱っこし、で自警団本部に送り届けたその足で、警察と自警団協力のもと『邪眼神』を壊滅に追い込んだのだった。



 その後。


 夜を駆けるビキニパンツの男を、可憐な少女が追走している姿がよく見られるようになった。


『私以外に見せちゃダメ!!』


 と、少女が叫んでいたりいなかったりは、また別の機会に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

【KAC20245】はなさない。 マクスウェルの仔猫 @majikaru1124

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ