第2話 俺たちこそ正義だ クロキ視点

【クロキ視点】


 俺はタイホ系ダンジョン配信者だ。

 自分の正義を貫く男……

 ダンジョンに蔓延る犯罪を取り締まっていた。


「この男が犯人に決まっている――」


 探索者カードを見たら、この男の名前は「田中誠」というらしい。

 俺たちは魔石が盗まれたらというパーティーの通報を受けて、渋谷ダンジョンへやって来た。

 警察を呼んでもいいのだが、ダンジョン内は警察でも危険な場所。

 だから警察は通報してもすぐ来ないことが多い。

 俺たちは24時間すぐに出動できる。

 魔石を盗まれたパーティーの話を聞くと、盗んだ男の特徴は「白いシャツで青いジーンズ。やせた男で、20代半ばくらい」だと言う。

 俺たちは周囲の階層を捜索していたら、このクソ田中が見つかったわけだ。

 パーティーから聞いた特徴のすべてに当てはまるから、田中が犯人に違いない。

 魔石は持っていなかったが、きっとダンジョンのどこかに隠したのだ。


「おらァ! 早く真犯人を見つけろ!」


 ガンっと、俺は田中の背中を蹴る。

 田中はよろける。


「さっさとカメラの前で土下座しろ……っ!」


 俺たちが犯人を間違えるわけない。

 今まで何人ものダンジョン犯罪者を逮捕してきた。

 全部配信して、全国に顔を晒してやった。

 で、俺たちのチャンネル――「氷獄チャンネル」は、チャンネル登録者数をガンガン伸ばしてきたわけだ。


【コメント欄】

「氷獄チャンネル応援してる!」

「クロキさんイケメン!」

「投げ銭しておくよ!」


 コメント欄は俺たちを称賛するリスナーばかりだ。

 投げ銭も30万円を超えている。


 (うんうん。やっぱり俺たちが正義だよな……)


【コメント欄】

「おいおい。証拠もないのに犯人扱いするのは……」


 一匹、俺たちを疑うリスナーがいた。


【コメント欄】

「↑のヤツ。バカすぎwww」

「クロキさんが間違うわけないじゃん」

「死ねよ」


 他のリスナーたちが、疑うリスナーを叩き始める。


 (うんうん。リスナーは俺たちの味方だ)


【コメント欄】

「いや……だって、田中さんは魔石を持っていなかったんだろ。なら、盗んだ証拠はないわけだから……」


 (こいつは、俺たちのリスナーじゃない……!)


 ダンジョン内の正義を決めるのは、俺たちだ。

 氷獄チャンネルの正義を疑うヤツは、リスナーじゃない。

 ただの「荒らし」だ。


「ブロック……と!」


 俺は田中を擁護するゴキブリを、ブロックした。

 ついでにDTUBEの運営にも「荒らし」として通報。


「田中が犯人なんだ……っ! 俺たちは絶対に正しい」


 田中の土下座を配信すれば、同時接続はかなり伸びるだろう。


「ははは! 犯罪者は惨めに土下座させてやる……っ!」



 ――しかし、クロキは間違っていた。

 実は田中は犯人でないことを。

 冤罪が晴れた瞬間に、自分たちが大炎上することを。

 気づいた時には、もう遅い。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

★あとがき


この話は連載候補です。


「続きを連載して欲しい!」

「この後のざまぁとバズが見たい!」


 と思ってくださっ方は、ぜひ作品のフォローと星での評価をお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョン犯罪の犯人と決めつけられて配信されたけど、真犯人捕まえたら相手が炎上して俺の配信がバズった件 水間ノボル🐳@書籍化決定! @saikyojoker

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ