第73話 加護
―――ケルヴィン邸・食堂
「ああ、漸く口にすることができました…… 噂に違わぬ味、流石ですね」
「S級調理スキルを取ってからも日々美味くなっているからな。エフィルは慢心することを知らないんだよ」
「いえ、ご主人様の従者として当然のことです」
「うんうん、今日も食事が最高だわ! エフィル、おかわり!」
「はい、どうぞ」
「……………」
メルフィーナの召喚に成功した翌日の朝。今は食堂にて朝食をとっているところだ。俺にエフィル、ジェラール、セラ、クロト。そしてメルフィーナが席に着き、ついに現全てのメンバーが我が家に集った。
「それにしても、このような屋敷を購入していたとは夢にも思いませんでした。宿にいなかったので、探すのに苦労しましたよ」
「意思疎通で言えばよかったじゃないか」
「折角の感動的な再会なのですよ? 驚かせたいじゃないですか!」
「ドッキリかよ」
「……………」
変なところに拘る神である。 ……さっきからジェラールが黙っているな。どうしたんだ?
「ジェラール、さっきからずっと黙りっ放しだが、腹でも痛いのか?」
「いや、そうではないのだが…… 王よ、そこの凄い別嬪さんはどちら様じゃ?」
「そういえば見たことない顔ね。誰?」
ああ、そうか。まだエフィルにしか紹介していなかったな。セラが普通に会話していたから、すっかり忘れていた。
「失礼、ご挨拶が遅れましたね。この場合、初めましてが正しいのでしょうか? 昨日召喚に応じました、メルフィーナと申します」
「ひ、姫様ですかな!?」
「はい、姫様です♪」
お前、案外その愛称気に入っていたんだな……
「へ~、あなたがメルフィーナだったのね。顔を合わせるのが初めてだったから気が付かなかったわ。改めてよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
二人は握手を交わすが、メルフィーナが少し暗い表情になる。
「セラは私に対して色々と思うところがあると思います。魔王グスタフについては―――」
「いいのよ。あれは父上が力に固執して暴走した結果なんだから。それに、その時の勇者を召喚した神はメルフィーナじゃなかったんでしょ? ケルヴィンに聞いたわ。だったら何も問題ないじゃない!」
「……ありがとうございます」
「礼を言われる筋合いもないわよ」
……どうやら、神と悪魔ってことでの縺れはないようだな。俺だって陰ながら心配していたのだ。だが二人の様子を見る限りだと、これ以上心配する必要はないだろう。
「ワシはてっきり、早くも王が新たな愛人を連れて来たのかと思ったぞ。いやはや、血の雨を見ないで済んだわい」
「いやいや、何でそうなる」
「そうですよ。私は正妻なんですから!」
「ブフォッ!」
思わず寸前に口に含んだ牛乳を吹き出してしまう。メルフィーナ、君さっきまでシリアスモードじゃなかった?
「わっ! ちょっと、汚いわよ!」
「ご主人様、お口を」
「悪い……」
エフィルにナプキンで口を拭いてもらう。卓上の朝食はセラが神速でどかしたので何とか無事だ。
「王よ、やはり……」
「違う! 誤解だ!」
「この程度で動揺するとは、まだまだ未熟のようですね。あなた様」
「お前、久しぶりだからって色々飛ばしてんな……」
実体化したことで相当はしゃいでいるようだ。俺に被害が被らない程度に留めてほしい。
「ところで、メルフィーナって名前をここで呼ぶのは不味いんじゃないか? 神として結構名は通っているんだろ? 一応、今は使用人達を外出させているから大丈夫だが」
「そうですね…… ちょうどいいですし、この義体のステータスを公開致しましょう」
メルフィーナが意思疎通を通して、ステータス画面を皆の眼前に表示させる。
「こちらが完全武装した状態の私のステータスです」
=====================================
メル 17歳 女 天使 戦乙女
レベル:86
称号 :共鳴者
HP :900(+635)
MP :900(+635)
筋力 :900(+814)
耐久 :900(+814)
敏捷 :900(+814)
魔力 :900(+814)
幸運 :900(+814)
装備 :聖槍ルミナリィ(S級)
エーテルグリーブ(A級)
スキル:神の束縛(隠しスキル:鑑定眼には表示されない)
絶対共鳴(固有スキル)
槍術(S級)
青魔法(S級)
白魔法(S級)
錬金術(S級)
補助効果:召喚術/魔力供給(S級)
=====================================
「待て、ツッコミどころが多過ぎるぞ!」
「何分義体は特殊ですので。では、順々にツッコミをどうぞ」
「お、おう」
俺が順番に疑問点を口にし、それに対してメルフィーナが答えていく。まず、この不自然に揃ったステータスだが、俺のステータスと共鳴しているらしい。具体的にはスキルによる強化を含めた俺の能力の平均値だ。
「これは固有スキル『絶対共鳴』の効果です。ステータスだけでなく、あなた様のレベルからスキルポイント、挙句の果てには状態異常まで共鳴します。したがって、私が剛力などの強化スキルを会得しても無効化されてしまいます。あなた様の召喚術による強化も同様です」
「メリットデメリットを織り交ぜたようなスキルだな。どうしてそんなスキルにしたんだ?」
「義体は神の依り代となる特性上、その能力を制限する働きがあるのです。それが『神の束縛』、今はステータスに表示させていますが、他者からは絶対に見られることのない隠しスキルですね。全ての義体にこのスキルが備わっています」
神の束縛による効果は、レベルアップによるステータス・スキルポイント上昇値の制限らしい。普通に運用してしまうと、一般人並の実力しか出せなくなってしまう程。これは神が義体で降りた際に、世界に余計な影響を与えないようにする為の処置だそうだ。他にも細かい制限が色々とあるようだが、ステータス面での問題は俺を軸とした絶対共鳴のスキルによってクリアした訳だ。正に法の穴を狙った作戦。俺が強くなればなるほど、メルフィーナも強化される。所持するスキルポイントも俺基準なので、かなり持て余しているな。
「何より、これで更に一心同体ですね♪」
「そうだねハニー」
「見事な棒読みね」
あとは名前か。メルフィーナではなくメルになっている。
「これが先ほどの件の解決策ですね。意思疎通以外の会話ではメルとお呼びください」
「なるほどな。安直だが分かりやすい。了解だ」
「メル様、ですね。エリィとリュカにはそちらのお名前で伝えておきます」
「お願いしますね、エフィル」
メルフィーナを呼ぶ時は気をつけないとな。む、そう言えば歳については―――
「何か言いましたか? あ・な・た・様?」
「……いや、何でもない」
満面の笑顔から危険察知が反応する。歳について触れるのは絶対にタブーだわ。外見は17歳だし、別にいいんじゃないかな、うん。
「さて、私についてはもう良いでしょう。次に、前々から約束していた加護についてです」
「メルの召喚に成功したらって話だったよな」
「そうです。あなた様、よく頑張りました。花丸あげちゃいます」
メルフィーナが俺の右手の甲に人差し指で花丸を描いていく。
「うわ、くすぐったいって! 褒められるのは嬉しいけどさ」
「はい。加護の賦与、完了です」
「え、ええー……」
これが加護を渡す儀式ですかい。
「お渡ししたのは『転生神の加護』。デラミスの巫女にも与えている加護ですね」
「して、その効果は?」
「2つあります。1つ目の効果は一月に一度だけ、致命傷に成り得る事象からあなた様を完全に護ります。不慮の事故、予想外の攻撃からの絶対防御ですね」
この加護、それだけでも滅茶苦茶強力じゃないですか! 一度発動してしまってからのクールタイムがあるとは言え、致命傷の回避はありがた過ぎる。腕が鈍らないように、ジェラールやセラと練習試合をすることも最近多いからな。模擬戦とは言え、それなりに力を出し合う戦い。耐久の低い俺はいつもヒヤヒヤもんなのだ。戦闘狂だって命あってのものである。
「やったわね、ケルヴィン! これで次の模擬戦で、私の本気の本気を撃ち込んでも問題ないわね!」
言ってる傍からこれだ。ははは、受けて立とうじゃないか。
「お二人とも、ほどほどにお願いします。地下の強度を考えてください」
「「はい」」
エフィルに諭されたところで、次にいこう。
「2つ目の効果は――― あなた様の魔力を使用した、勇者の召喚です」
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