第20話 育成方針
部屋に戻った俺はベッドに、エフィルを椅子に座らせる。問題はさて置き、現状について説明しておこう。
「さて、まずは色々説明しないとな。俺の職業は召喚士なんだが、召喚士って何だかわかるか?」
「ええと、わかりません……」
まあ、奴隷商で育ったんであれば、そうだよな。徐々に覚えて貰うしかないだろう。
「こんなことができる」
俺は左右にクロトとジェラールを召喚する。
「御機嫌よう、お嬢さん。ワシは配下のジェラールと申します」
「え、ええ!? ご主人様、突然人とモンスターが!」
ジェラールは騎士らしい挨拶をしたが、エフィルは驚きのあまり聞いていなかったようだ。どんまい。
「エフィル、落ち着いて。順々に説明する」
召喚士、クロト達配下について、そしてこれからの方針を教えていく。
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「―――ってな訳で、極力俺が召喚士ってことは秘密にしたいんだ」
「なるほど、ご主人様は凄い方だったんですね」
エフィルは感心したように、しきりに頷いている。
「ジェラールさん、先ほどは驚いてすみませんでした。クロちゃんもごめんね」
「ハッハッハ、構いやせんよ」
クロトは元の膝下サイズに戻り、エフィルの膝上に乗って撫でられている。どうやらお互い打ち解けたようだな。
「もう一人、メルフィーナという天使もいるんだが、まだ俺の技量が足りなくて召喚できないんだ。時がきたら紹介するよ」
「天使様ですか!? はい、楽しみにしてます!」
『私も楽しみにしてますよ』
エフィルには聞こえていないが、非常に優しげな声で答える。メルフィーナも純真な彼女を好んでいるようだ。
「それで、エフィルのスキル配分についてなんだが……」
本日の主題について話を振る。
「先ほどのスキルの件ですね。ご主人様にお任せします」
「いや、最初に俺が指定したスキルを2つ取った後は、エフィルに任せようと思う」
これはメルフィーナ達と相談して決めたことだ。これまで自分で選択することができなかったエフィルには、少しでも自分で選ぶ権利を与えてやりたい。
「え? でもそのようなこと、私にはもったいないです」
「なら少し付け加えようか。自分でしっかり考えて使いなさい」
スキルの数はそれこそ全て見ようとすれば、百科事典の厚みに達する。それを全て把握するのはまず不可能なので、普通はキーワードを思い浮かべ、検索にかけて探すのだ。だが、この世界の人間は検索にかけるのも面倒なようで、一般的に使える! と評判になるような有名所のスキルしか覚えない傾向にある。まあ、スキルポイントは限られている。失敗しないように、そうなるのは当然と言えば当然か。
「私自身が、考えて……」
「時間はある。ゆっくり考えるといい」
それでいい。自分で考えることで、エフィルの成長にも繋がるだろう。
「ああ、そうそう。先に取ってほしいスキルなんだが、成長率倍化とスキルポイント倍化を取ってくれ」
俺がチートである所以の1つ、倍化スキル。他に持っている奴を見たことは、なぜかまだない。もしかしたら、倍の成長率やスキルを得るって考えがないのかもしれない。それに加え、取得するにも結構なポイントが必要なのだ。レベル1で得るのがベストだが、とてもじゃないがポイントが足りない。だが、エフィルの場合は……
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エフィル 16歳 女 ハーフエルフ 奴隷
レベル:1
称号 :なし
HP :8/8
MP :15/15
筋力 :2
耐久 :2
敏捷 :4
魔力 :4
幸運 :1
スキル:
補助効果:火竜王の加護
スキルポイント:400
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才能値ポイントが400もあったのだ。一般的な才能値ポイントが50、なんと8倍だ。これは十分に成長率倍化、スキルポイント倍化を取得できる値だ。
そこに俺の経験値共有化スキルが加わる。パーティを組む際、経験値は敵を倒した者が多く貰える。だがこのスキルがあれば、パーティ内の誰が敵を倒しても、倒した者と同量の経験値を全員が得ることができるのだ。まずはこれを利用し、エフィルの育成に役立てようという魂胆だ。ちなみに経験値倍化スキルも探してみたが、なぜかこれだけ必要スキルポイントが一桁大きい。頑張れば取れない事もないが、無理して取る必要もないか。
『あ、それ設定間違え…… いえ、何でもないです』
おい。
『冗談です』
本当かよ。まあいい、これら倍化スキルの情報は今のところ俺達が独占していると思われる。他言しないようにとエフィルにはよく言っておいたが、そうなるとエフィルのステータスの隠蔽はどうするか、という問題が浮上する。だが心配はない。最近発見したことなのだが、ステータスの隠蔽はパーティ内であれば自分以外にも使える。俺の隠蔽スキルを早いとこS級にまで上げればいいだけの話なのだ。
ちなみに、隠蔽の効果時間もスキルランクに影響する。F級なら1分足らず、E級なら10分間、D級なら1時間といった感じだ。S級ともなると、1年くらいは有効なんじゃないだろうか。
話が脱線してしまったな。エフィルの補助効果を見てみると、呪いが反転して火竜王の加護になっていた。これは
「ご主人様、この加護はどういったものなんですか?」
「火属性の威力と耐性を高めるらしい。赤魔法と相性がいいかもな」
「火、ですか……」
まだ、エフィルは火に対しての恐怖があるように見える。
「エフィル、火は何も戦いだけに使うものじゃない。クレアさんが料理をする時だって使う、人の生活に不可欠なものだ。夜には灯りにだってなる。要は使い方次第なんだ。それに、無理にこの加護を使う必要もない」
「……いえ、私、ご主人様の手伝いをするって決めたんです。戦闘でも、きっと使いこなしてみせます!」
……本当にいい娘だな。言葉ではああ言っているが、本当はまだ怖いんだろうに。
「わわっ、えへへ」
思わずエフィルの頭を撫でてしまった。ま、本人が笑顔で喜んでいるので良しとしよう。
「おっと、そろそろ夕食の時間だ。喜べエフィル、クレアさんの料理は絶品だぞ!」
「はい、頑張って味を盗んで覚えます!」
頑張る方向が明後日に飛んでいきそうだ。
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