第6話 スキル

 ブルースライム討伐を無事に終え、俺たちはパーズに帰ってきた。クロトの実体化は解除している。ギルドで報酬を貰い、今日の宿を探しているところだ。


「アンジェさんが言ってた宿屋はあそこか」


 アンジェさんから宿屋の情報を教えてもらい、ここを勧められた。


『新人冒険者のお財布事情にも優しい、アンジェ一押しの宿屋! らしいですね』

「精霊歌亭、ここで間違いないな。入るとしよう」


 扉を開けると、カウンターの大柄なおばさんが出迎えてくれた。宿の女将だろうか。


「おっと、お客さんかい? 精霊歌亭へようこそ」

「ええ、一泊お願いしたいのですが」

「気に入ったら次も泊まってくれると嬉しいね。あたしゃクレア、よろしくね」

「ケルヴィンです。ここの料理はとても美味しいらしいですね。今から楽しみですよ」

「ははは、こりゃ今日は腕によりをかけて作らないとね!」


 宿泊費を払った後、クレアさんに部屋を案内された。夕食の時間などの宿屋の簡単な説明を聞く。ふう、ようやくゆっくりすることができる。


「予想はしていたが、風呂はないんだな……」

『風呂は王族の城、貴族の屋敷でもない限りありませんね。庶民は水浴び、もしくは湯で体を拭くのが一般的です』

「日本人に風呂なし生活はきついぞ……いつか風呂付の家に住んでやる」


 新たな目標に闘志を燃やしながら、ステータス画面からスキル項目を開いた。項目を絞りながら目当てのスキルを探す。


「……あった」


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隠蔽(F級) 必要スキルポイント:10

 F級までの鑑定眼を防ぐことができる。F級までの探知を防ぎ、物を隠蔽することができる。

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 最優先で取得すべきスキル、それは情報の隠蔽だ。前回のメルフィーナの話を聞く限り、俺の所持スキルの取得難度は尋常ではない。レベル2の俺がそんなスキルを所持していると知られてしまえば、絶対に不審に思われるだろう。そんな訳で、隠蔽スキルをD級まで上げておく。戦闘方面は今のところ過剰戦力になってるしな。


「これで鑑定眼対策は一先ずOKかな。できればB級までは近いうちに上げておきたいんだけど……」


 その為にも、明日からは討伐依頼を中心にこなしていきたいと考えている。クロトとの連携力も高めておきたい。そうそう、あの後、クロトも5匹目のブルースライムを倒したところでレベルアップした。得た成長ポイントは10。結構優秀なんじゃないか? その10ポイントでこのスキルを取得したようだ。


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吸収(F級) 必要スキルポイント:10

 魔力の一部を吸収し、エネルギーに変換する。魔法による攻撃にも有効。スキルランクが上がることにより、吸収力が上昇する。

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 なかなか面白いスキルだ。吸収したエネルギーは自分の回復にも使えるし、攻撃手段にも応用できる。スキルランクが高まれば、魔法も完全に無効化できるかもしれない。クロトにはこれからも頑張ってもらわないとな。


「しかし、今日の戦いは楽勝過ぎたな。俺もクロトもダメージ食らわなかったし」

『ブルースライムは新人の冒険者でも安全に狩れるモンスターですからね。この強さで負けられると逆に困ります。個体の中には抜きん出てレベルの高い者、進化して別種に至る者もいますから、油断大敵です』

「進化? モンスターはレベルが上がると進化するのか?」

『レベルが絶対条件という訳ではありません。周囲の環境、好む食物、その他にも条件は様々です。クロトの種族であるスライムは特に進化先が多様、私も何に進化するのか予想できません』


 メルフィーナにも分からないのか、それは進化する時が楽しみだ。


「へぇ、クロトもいつかは進化できるかもしれないな。期待してるぞ、クロト」


 クロトは勇んでいるようだ。それじゃ、ひとまず飯を食いに行くとするか。昼飯はバトルに夢中で食べれなかったからな。異世界の初食事を楽しむとしよう。

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