第4話 契約
さてさて、街を出てすぐの平原にやってきた。森からは道沿いに歩いてきたからか、はたまた運が良かったのか、モンスターには一度も出会わなかった。そんなに離れた距離でもなかったしな。
「この辺りが出現地域だと聞いたが…」
辺りにブルースライムがいないか見回す。探しながら歩いて少しすると、前方に青いグミ状の物体が見えてきた。
『ブルースライムですね。あなた様、試しに鑑定眼を使ってみてください』
メルフィーナの言われるがまま、俺は鑑定眼を発動させた。発動のさせ方が分からなかったが、使いたいと思うと既に発動していた。自分の体を動かす感じだろうか。スキルを所持していれば発動は容易のようだ。
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ブルースライム 0歳 性別なし ブルースライム
レベル:1
称号 :なし
HP :5/5
MP :0/0
筋力 :1
耐久 :1
敏捷 :2
魔力 :1
幸運 :2
スキル:打撃耐性
スキルポイント:0
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これが鑑定眼か。対象のデータを丸々読み取ることができるようだ。
『鑑定眼は生物だけでなく、未鑑定のアイテムにも有効です。あなた様の鑑定眼はS級。生物やモンスターであれば自身の100レベル上の相手まで、アイテムはS級まで鑑定可能です』
大抵の奴には有効じゃないか…… 待てよ、俺がメルフィーナのステータスを見たときは鑑定不可で表示されていたぞ。つまり、メルフィーナのレベルは100を超えてる?
『一応、神ですので』
お前を召喚する為に、俺はMPをいくら消費すればいいんだ… っと、話がそれた。まずは目の前のブルースライムだ。
ブルースライムにじりじりと近づく。まずは契約を成功させたいのだが、相手の同意が必要だ。スライムと会話して同意させればいいのだろうか?
『言葉を理解しないモンスターであれば、倒さない程度に弱めるといいでしょう。そこで契約を発動させれば、あちらから同意してきます。仲間にしてほしそうにってやつです』
メルフィーナさんはゲーム知識も豊富のようだ。魔法では倒してしまいそうだし、ウッドロッドで応戦するとしよう。
「とうっ!」
そこそこの力を込めてブルースライムに打ち込む。スライムはポヨンポヨンと転がりながら数メートル吹っ飛んだ。鑑定眼を発動させる。
「残りHP3、契約してみるか」
体勢を立て直しているスライムに手をかざし、契約を念じる。
「うおっ、体から何かが抜ける感覚がするぞ、これ大丈夫か!?」
『契約には成功・失敗に関わらず、残りMPの半分を消費します。魔力を大量に使った影響でしょう』
「そういうことは先に言ってくれ… まあいい、契約は成功か?」
ブルースライムを見ると、段々と白く輝き出していた。眩しっ。
『おめでとうございます。契約は成功です』
「これで成功なのか」
『今回契約したモンスターには名前がまだありません。あなた様が名付けてみてはいかがでしょうか』
ふむ、名前か。俺のネーミングセンスが火を吹くと中二的になってしまうからな。ここは無難にいくべきか。いや、ファンタジー世界なら許されるよな。
「よし、今日からお前の名前はクロトだ。これからよろしく頼む!」
クロトはプルプルと震えながら飛び上がる。そして、光は粒子となって俺に吸収されていった。これが魔力体になるってやつか。前に聞いたメルフィーナの話通りなら、これでクロトは俺の魔力と同化されたはずだ。
「おーいクロト、聞こえるか?」
クロトの言葉は聞こえないが、感情が直に伝わってくる。これは喜んでいるのか?
『意思疎通は言葉を介さずとも可能です。配下同士でも大丈夫という安心仕様なのです!』
あ、クロトが少し怯えた。メルフィーナ、怖がらせるなよ。
差し詰め、配下ネットワークとでも名付けるべきか。実際に会話するより手早いし、戦闘にも役立ちそうだ。
「次は召喚だな。さっきの契約でMPを半分使ったとしたら残りは10。足りるか?」
『このレベルのスライムであれば大丈夫です。召喚術についての補足ですが、配下のHPが0になってしまうと死んでしまい、契約が強制解除されてしまいますのでご注意を』
この世界では『HPがなくなる=死』ってことになるのか。聞くとゲームのように教会で生き返る、なんてことも当然ないらしい。クロトはこれから共に行動する大切な仲間だ。ドジを踏んでそんなことにならないようにしないとな。
『HPが1でも残っていれば、召喚を解除することであなた様の魔力に戻すことが可能です。魔力体になれば時間経過でHPとMPを自動回復していきますので、これを上手く活用してください』
ふんふん、勉強になる。さて、メルフィーナ先生のお墨付きも頂いた、召喚を発動する。そうだな、まだ自分の魔力圏内がどれほどか知らないし、目の前に召喚しよう。
魔法陣が一瞬で出現したかと思ったら、次の瞬間にはクロトがそこにいた。召喚はなかなかのスピードで行われるようだ。
「1つ目の目的は達成した。いよいよ討伐依頼だな」
『クロトに同族殺しをさせるとは。あなた様、なかなか鬼畜ですね』
「ぐふっ」
俺が己の思慮の浅さに悶えていると、クロトが念を飛ばしてきた。
「スライム族は強者が弱者を吸収して成長するから大丈夫だって? クロト、無理しなくてもいいんだぞ」
クロトは体を震わせながらやる気をアピールしてくる。いや、クロトがいいなら問題ないんだけどさ。
「倒した相手を吸収するのは問題ないが、討伐の証拠として今回はスライムの核は解体するぞ」
クロト的には一部でも吸収できればOKなようだ。残りMPが心許ないが、俺も魔法を少し試すとしよう。俺たちは標的を探し始める。
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