第3話 冒険者ギルド

 やってきました冒険者ギルド。なかなか立派な作りの御宅です。それでは中を拝見致しましょうか!


『その変なテンション何なんですか?』

「高揚してるのか、俺にもよく分からん」


 中に入ると、まず目に入るのは受付カウンター。ギルドの受付嬢らしき娘達が冒険者の対応をしている。可愛い子が結構いるな。カウンター横には酒場があり、昼間だというのにもう酒を飲んでいる者もいる。RPGに出てくる典型的なギルドだ。俺としては想像通りで嬉しいのだよ。筋肉質のオッさんばかりかと思ったが、若い男女もかなりいるようだ。


 カウンター前の列に並び、待つこと少々。俺の番が回ってきた。


「こんにちは!本日はどのような御用件でしょうか?」


 茶色のおさげが可愛らしい彼女は、気持ち良いくらい元気な声で挨拶してくれた。元気っ子って良いね。


「冒険者の登録をしたいのですが」

「登録ですね、かしこまりました。それでは、こちらの用紙にご記入をお願いします。代筆は必要ですか?」

「大丈夫です」


 言語理解、文字の読み書きも転生により習得済みである。メルフィーナさまさまだな。記入するのは名前と職業のみか。随分簡単だな。名前にケルヴィン、職業に緑魔導士……と。


「ケルヴィン様ですね。少々お待ちください」


 職業を緑魔導士にしたのには理由がある。この世界の召喚士は激レア級の職業なのだ。


 似た能力を持つ職業には調教師というものがある。こちらは召喚術ではなく、モンスターを調教して配下に置く方法をとる。MPを消費せず、調教したモンスターを常に侍らせておくことが可能だ。スキルランクを上げることで配下の数も増やせるらしい。ここは召喚士と同じだな。


 召喚士のメリットはモンスターに限定せず、人間、エルフ、はたまたゴーレム等の無機生物にも有効なところだ。更にはステータス強化、配下間との意思疎通、己の魔力圏内であれば好きな場所に召喚が可能。MPを代償にした分、見返りが大きいのだ。


 そんな召喚士になれる者は極限られており、1つの国に1人いるかいないか。発見され次第その国のお偉いさんに目をつけられてしまう。ファンタジー世界で自由を謳歌したい俺にはそんなの邪魔なのだ。できるだけ召喚士のことは隠していきたい。


「お待たせ致しました。こちらがギルド証になります」


 彼女からギルド証を渡される。翼が描かれた青いカードにFと書いてある。


「それでは簡単にギルドのシステムについて説明させて頂きますね」


 説明を聞くに、冒険者には7つのランクがあるらしい。彼女がボードを見せてくれた。


=====================================

F級(新人)   ←ケルヴィンさん!

E級(駆け出し)

D級(一般)

C級(熟練)

B級(達人)

A級(化物)

S級(人外)

=====================================


 可愛らしい字で俺のランクを示してくれている。うん、とっても分かりやすいですよ。


「ケルヴィンさんは登録したばかりですので、F級からのスタートとなりますね。ギルドではいたる所から依頼を受け付けており、依頼をランク分けして冒険者の方々に掲示しています」

「つまり、今はF級の依頼しか受けられない、ということでしょうか?」

「1つ上のランクの依頼までなら可能です。でも、依頼を失敗しますと違約金が発生するので注意してくださいね」


 ふんふん、無鉄砲に上位ランクの依頼には手を出せないってことか。


「依頼を連続10回達成しますと、冒険者ランク昇格です。達成する依頼回数は上位ランクのものでも同数とします。ただし、C級の昇格からは試験がありますので気をつけてください」

「了解です」

「パーティにご自分以上のランクの方がいる場合、受けられる依頼の上限はそこまで上がりますが、仮に依頼達成したとしてもご自分のランクの達成数にしかなりません。余程の特例でもない限りは地道にやっていくことになりますね! あ、ちなみに実力者の力を借りて依頼を達成するのは違反ではありませんので、このあたりは好きにして頂いて結構です」


 パーティについては今は保留だな。メルフィーナはまだ召喚できないし。それにしても、助力を得て依頼を達成するのはずるにはならないのか?


「それでは自分の力で達成したことにはなりませんが、いいのですか?」

「強力な助力を得ることができるのも、またある意味で冒険者の力ですからね。ギルドの依頼を受ける為にはそのランク相応の冒険者である必要がありますが、そのお仲間は必ずしも冒険者である必要はありません。例えば、傭兵を雇うのもありですね。それに他人任せで昇格していったとしても、先ほどご説明した通りC級からは試験があります。流石に試験は独力で受けて頂きますよ」


 試験がそういった輩のストッパーになっているんだな。更に上を目指す為には己を磨くことが必要な訳だ。


「依頼には討伐、護衛、採取、特殊の4種類があります。討伐の場合、倒したモンスターの体の一部が討伐証明として必要になりますので、忘れずに持ってきてくださいね」


 む、証拠が必要になるのか。乱獲しても持ち切れない場合がありそうだ。


「初心者に手頃な依頼はありますか?」

「そうですね、こちらはいかがでしょう」


ブルースライム×3の討伐

薬草×5の採取

飼い猫の捜索(特殊依頼)


 基本を押さえた依頼できたな。特殊依頼ってのは他のどれにも属さない依頼ってことか。


『あなた様、手始めにブルースライム討伐依頼で契約をしてみてはいかがでしょうか? 初めての召喚術にはうって付けのモンスターですよ』


 うん、考えることは一緒か。俺も早く召喚術を試してみたいんだ。もちろん人目につかないようにね。


「ブルースライムの討伐依頼を受けたいと思います」

「こちらですね。かしこまりました」


 依頼を正式に受け、ギルドを出た。後に聞いたが先程の彼女はアンジェと言うらしい。これからお世話になることも多いだろうな。さて、次は装備を整える。それほど金には余裕がないので武器と回復アイテムだけだが。


『ウッドロッドですね。物理的攻撃力は皆無ですが、微弱な魔力が宿っています。魔法の助けにはなるでしょう』


 これで持ち金はほとんど使った。今日の宿代の為に、いざ参る!

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