第22話 混沌

地球防衛機構の艦隊は命からがら戦闘宙域を離脱し、地球へ戻ってきた。



「あのおっきな戦艦がラスボスかな?」



アリスが首を傾げる。



「パイロットとかいないのかな?」



「流石にいるだろ、黒蛇レベルのやつが。そうなるとクリアは絶望的だけどな」



ミネーが溜息をつく。



「プライマルとかブルーファイターズとかもこのイベントには参加してるんだろ?その人達も一緒に戦ってくれるだろ」



俺はあくまで楽観的に捉えることにした。



「プライマルがいるなら大丈夫だと思うけど、、、、」



ヴァリュートが長い顔をする。



「みんな仲良くしてくれるかなぁ」



「確かに。あいつらが協力してる想像がつかないな」



「仲間割れはせずとも、、、、って感じだね」



「おい、お前達」



リクが会話に割り込んでくる。



隣にファナリスもいる。



「なんですか?」



俺はリクの表情に不穏な気配を感じ取った。



「さっきの戦艦のことですか?」



「話が早い。あれはデモンズというエステア軍の最新鋭の戦艦らしい。なんでも、天体を破壊できるほどの火力を有しているらしいぞ」



「頭悪い設定だなぁ」



アリスが呟く。



「そういうことは言うんじゃない」



ミネーがたしなめる。



「なんの話だ?それでだ、我々地球防衛機構はこれを全兵力を持って迎え撃つことになった」



、、、、そりゃそうだわな。そんな物騒なモンほっとけないよな。



「分かった。いつやるんだ?」



「全兵力が集結次第、すぐだ。お前達がやってきてからまだ一日も経ってないってのに、、、、お前ら絶対死ぬんじゃないぞ。基地の近くに美味しい呑み屋があるんだ。デモンズぶっ倒して帰ってきたらそこでがっつり呑み明かそうぜ」



リクが白い歯をきらりと光らせながらその場を去った。



「俺も君たちのことをよく知らない。戦いが終わったらじっくり聞かせてくれないか?」



ファナリスが微笑みながら言う。



俺は寸分の迷いもなく頷いた。



「勿論!絶対生きて勝利してやろうぜ!」



俺とファナリスはガッチリ握手した。



「じゃあ、また後で」



ファナリスもその場から立ち去る。



「、、、、あのリクって人のセリフさ」



ヴァリュートがニヤニヤしながら言う。



「完全にフラグだな」



ミネーが真顔で言い放つ。



「え、あの人死ぬのか?」



俺は愕然とした。



「地球防衛機構の連中はNPCだ。一度やられたらプレイヤーみたいにリスポーンできない。ゲームとはいえ今生の別れになる」



ミネーが顔色ひとつ変えずに言う。



「悲しいの?」



アリスが尋ねる。



「え?死ぬかもしれないんだぞ?」



「そうだけど、、、、所詮ゲームだし。それに悲しくなるほど感情移入できてないんだ」



「さっきの戦闘でいっぱい話したけど、それはリクの人格に関わることじゃないし、何よりストーリーがやけっぱちなんだよね」



「地球防衛機構は最初から追加されているべきだった。中途半端なタイミングでエステア軍の敵を増やしてしまったことでストーリーがぶち込まれる形になってるんだ」



「それも最終局面のね。ホント運営さん大丈夫かなぁ。このままだと次のイベントは総力戦とかやってきそうだなぁ、、、、」



ミネー達の言っていることはフラグのことぐらいしかわからない。



今やるべきことがわかっているからそれ以外はどうでも良いのだ。



ヴァリュートは感情移入出来てないと言った。



所詮ゲームというのも分かる。それでも目の前で笑っていたのは人だ。現実世界に居ないだけでれっきとした人だ。



死亡フラグなんかへし折ってやる。



⭐️⭐️⭐️



ハナサギ、、、、私のカスタムしたエリアルイウデクスを撃破した。全力でないにしろ人工知能である私の計算を越えたプレイヤー。



、、、、興味深い。ヒトで言うところの興味を持ったのは創造主以来だ。



もう少し観察してみようか、それとも創造主の息子の取り巻きの命令通りにハナサギを排除するか、、、、。



悩ましい。またヒトのような感情が湧き上がった。



⭐️⭐️⭐️



「カガリさん、ピースコンパスのユカさんからメッセージが」



エレンがカガリに話しかける。



「デモンズの件か。全く、あいつらはハナサギのなにが気に入らないんだ。素晴らしいプレイヤーが増えればそれだけ『スペースウォーリャーズ』も盛り上がる。どうせデモンズも突貫で実装したやつだろう」



エレンが呟く。



「ハナサギ君が可哀想ですよ。このままだと次のイベントは、、、、」



「総力戦、だろうな」



カガリが苦々しく言う。



『どうしたものか、、、、』



「ハナサギ君には私が付きます」



エレンがキッパリと言い切った。



「あいつらが横槍を入れてくるかもしれません。彼一人ではおそらく対応が難しいでしょう」



「ああ、おそらく彼はリスポーン不可にされているかもしれない。俺も気にかけておく」



カガリも頷いて了承する。


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