第11話 第十回イベント-覚醒の兆し

エリアルヘロンのエンジンの軌跡が混沌とした戦場を切り裂く。



「どうしちまったんだ、ハナサギ、、、、」



防衛陣地から発進したエリアルシュトレインに乗ったミネーが唖然とする。



ハナサギからの応答は一つもない。



ハナサギの前に立ちはだかる全ての敵が切り裂かれてゆく。



「ミネー、あれどうなってるの?」



ヴァリュートのエリアルゴーストが隣に並ぶ。



「分からん。ただ、あれは尋常じゃない」



ブルーファイターズのアーマードスーツがその数をどんどん減らしていく。



「援護を、、、、」



「助け、、、、」



最後の一機が胸をエナジーブレードで貫かれ爆散した。



「うっ、はぁはぁはぁ」



ヘルメットからミネーの声が聞こえてくる。



「おい、ハナサギ!応答しろ!」



「あぁ、ミネー、、、、こっちは大丈夫だ」



俺は何をしていたんだ?だいぶゴツいアーマードスーツとやり合っていたような、、、、?



コックピットにアラートが鳴り響く。



「ソードビットン!?数が多い!」



急いでエリアルヘロンを後退させる。



レーダーが高速で飛翔する群体を捉えた。



ミネーとヴァリュートが警戒する。



「ついにお出ましだね」



「くそチート野郎が」



⭐️⭐️⭐️


「ロイがやられたか!遊びがいがありそうだな!」



カナが心底楽しそうに言う。



カナの機体、エリアルバレルディがエリアルヘロンの前に姿を現す。



二十基のソードビットンがエリアルバレルディの周りに集まる。



先端から緑色のブレードが放出される。



「ビットンの数多くないか?」



ミネーの指摘にヴァリュートが同意する。



「エリアルで装備出来るビットンは五基がデフォルト、改造を施したとしても積めるのは十基だよね」



「そうなのか?コイツのは十基以上あるようにしか見えないが、、、、」



俺が若干尻込みしたその時。



ソードビットンが突然動き出し、エリアルヘロンに攻撃を仕掛けてきたのだ。



「うわっ!いきなりかよ!」



ソードビットンの絶え間ない攻撃をなんとか感覚で防ぐ。



巻き添えを食った味方が複数堕ちる。



《レーダーに敵捕捉!数が多い、迎撃準備!》



ユカの指示が耳に残る。



「うぐっ、援護に行かなきゃ、、、、!」



襲いくるソードビットンを掻い潜り、エリアルバレルディに肉薄する。



振り上げたブレードが機体を真っ二つに切り裂かんとした時。



先ほどまでエリアルヘロンを襲っていたソードビットンがレーザーを撃ってきたのだ。



俺は被弾したエリアルヘロンを緊急回避させた。



「ちっ、ダメージ受けちまった」



どっかに残り体力みたいなゲージないのか?



探そうとした時、ソードビットンとガンビットンの猛攻が目の前を眩しく照らした。



「くそっ!ズルだろそれ!」



エリアルヘロンが最大速度で戦場を駆け巡る。



ガンビットンとソードビットンも難なく追従していく。



「今のうちに本体を叩くぞ!」



「言われなくても!」



エリアルシュトレインとエリアルゴーストがエリアルバレルディに突撃する。



しかし、行手を復帰してきたロイが塞ぐ。



「バレルディには指一本触れさせん!」



マルチユニットヴァレンシアがトンファー型のエナジーブレードを装備する。



「行くぞヴァリュート!」



「うん!」



一方、防衛陣地の格納庫からエリアルガスターとエリアルワンダーランドが全速力でハナサギのもとへ飛ぶ。



「さっきまでのキレがない。ほんとにどうしちゃったのかな」



「分からん、今はあいつを助けることに全力を!」



「ヨッシー、アリス!そっちにビットンが!く、、、、」



なんとか指示を出すので精一杯だ。脳みそがぐちゃぐちゃにかき回されている感覚だ。



「うっぷ!ゲロでるぅ!」



思わず口を押さえる。乗り物酔いまで再現してんのか、このゲーム!それ絶対要らない要素だろ!



相変わらずビットンの猛攻は続いている。



「はあ、はあ、誰か、、、、」



視界がぐらつく。



「どーなってんだ、、、、」




視界の端に近付いてくるエリアルバレルディが見える。



目の前が真っ暗になる。



また宇宙を漂いだしたエリアルヘロンを見てカナは機体を急停止させた。



「なんだ?あの動きは回避行動じゃないな」



カナが訝しむ。



「と言うか、ビットン攻撃を凌いだのか?初心者だと聞いていたが、、、、ロイを倒した男だ。侮れん」



カナが飛び回ってビットンを避けるエリアルガスターとエリアルワンダーランドを見る。



「あいつらがいくつか引きつけたのか。ま、あのビットンは攻撃のクールタイムもないし耐久度も極限まで上がっている。いくらライフルで撃とうがブレードで切りつけようが無駄。チーターを倒すにはチートがいるのよ」



エナジーブレードをエリアルヘロンのコックピットに突き刺す。



「はい、じゃねー」



エリアルヘロンが爆発四散する。 



カナが溜息をつく。



『とりあえず懸念材料は取り除いた。あと二回、確実にキルする』



「ロイ、そっちは大丈夫か?」



「まあなんとか。でもちょーっときついかも」



「ふっ、わかった。さっさと片付けてハナサギに集中するぞ」



⭐️⭐️⭐️


「う、うう、、、、」



俺はうめきながら顔を上げる。



や、やられたのか?賭け、、、、負けちまったんだな。このゲーム、乗り物酔いもあるんだな。へへ、後でミネーに聞いてみるか、、、、。

 


《ハナサギ君、大丈夫?ハナサギ君!》



「ユカさん、聞こえてます」



あれだけ脳みそをぐちゃぐちゃにかき回されたのに、思考も感覚も恐ろしいほどに鮮明としている。



《そ、そう?とっても苦しそうだったから、、、、》



ユカが心配そうに言う。



「もう大丈夫です」



エリアルヘロンがまた宇宙空間に飛び出す。



向かう先はただ一つ。



エリアルバレルディの所へ。



背中のクロスウィングが赫く輝き出す。


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