第10話 第十回イベント-開催

俺はエリアルヘロンのコックピットに転送された。



「エリアルゴースト、出るよ」



ヴァリュートの機体がカタパルトから射出される。



「俺も行かなきゃな」



ヘルメットからアナウンスが聞こえる。



《カタパルト射出用意完了。エリアルヘロン発進せよ》



エリアルヘロンのエンジンが唸りを上げる。



一瞬の間にエリアルヘロンは宇宙へと飛び出した。



ユカの声が聞こえる。



《ハナサギ君、敵はもうデブリ帯の前にいる。戦闘準備は?》



「とりあえず、レーザーライフルで遠くの敵をチクチク攻撃しようかと」



《分かった。デブリ帯を抜けたあたりを最終防衛ラインに設定してある。そこを抜けた敵のみに近接格闘を許可します》



「了解」



とりあえずデブリ帯を抜けさせない。それだけに集中すれば良いんだな。



エリアルヘロンの隣にエリアルゴーストが並ぶ。



「一つ賭けをしよっか」



「賭け?こんな時に、、、、」



「良いじゃん。君が先に撃墜されたらなんでもボクの言うことを聞く、ボクが先に撃墜されたらなんでもハナサギ君の言うことを聞く。これでどう?」



「、、、、分かった」



俺が勝ったら四ヶ月分の家賃支払ってもらお、ゲヘヘ!



「よーし、決まりだね」



デブリ帯の隙間からチラホラ爆発のような光が見えている。



「あの光、、、、」



「うん、敵がターボレーザーに焼かれてるみたいだね。マップを見ればわかる。ボク達のクランのポイントが50になってるよ」



「え?もう三十機も倒したのか?」



はやすぎないか?いくらなんでも。



「防衛に特化してるからね。生半可な腕じゃここまで辿り着けない」



その頃、『ブルーファイターズ』の旗艦の司令室では。



「デブリ帯を突破できたパイロットはいません。クランリーダー、どうします?」



「ロイ、行け」



クランリーダーが隣の男に合図を出す。



「げー、もう?」



ロイと呼ばれた男はあまり乗り気では無いようだ。



「仕方ないだろ?私が出るのは混戦状態になってからだ」



クランリーダーが肩をすくめる。



「ちぇ、分かったよ。ったく、、、、」



ロイはぶつくさ言いながら司令室を出ていく。



クランリーダーがデブリ帯を眺める。



ピースコンパス、これまでのイベントにも碌に顔を出していない。



わからないことが多すぎる。



唯一わかっていることはハナサギというルーキーのことだけだ。



「クククク」



クランリーダーが笑い出す。



「楽しませてちょうだいね、ピースコンパス」


⭐️⭐️⭐️


「マルチユニットヴァレンシア、デブリ帯到達。キャノンキャンサー起動」



ロイのマルチユニットから赤色の粒子が散布される。



「超拡散モードオン。全機、突入準備」



ロイのマルチユニットが巨大なライフルを構える。



「高濃度キャノンキャンサー発射!」



赤いレーザーがデブリ帯を飲み込む。



「ターボレーザーはこれで封じた、ミサイルぐらいは自分でかわせ」



ブルーファイターズのアーマードスーツがデブリ帯を突き進む。



⭐️⭐️⭐️


「なんか赤いの飛んできたぞ」



俺はデブリ帯が赤く染まっていくのを確認した。



なんだ、また爆発か?



「ちょっと待って、ロイが来てるの?」



ヴァリュートが忌々しそうに言う。



「ユカさん、キャノンキャンサーを確認!レーダーは?」



《敵影多数接近!一機尋常じゃ無いスピードのがいる!》



「ちっ、全機、戦闘準備!エナジーブレードを装備して!」



「こっちのレーダーでも捉えたぞ」



とりあえず武装をエナジーブレードに変更する。



「敵、防衛ライン突破!全機交戦して!」



ヴァリュートが指示を出すと、味方達が一斉に動き出す。



そんな様子を見たロイも仲間に指示を出す。



「殲滅しろ。ハナサギとか言う白いエリアルは俺が相手する」



ブルーファイターズのアーマードスーツが散開して、それぞれの目標と会敵する。



戦闘が始まった。



あちこちでブレード同士がぶつかる光が輝く。



俺の相手は、、、、なんかこっち来てるやつがいるんだが?めっちゃ早いし!



エリアルヘロンがブレードを構える。



ロイの機体と衝突する。



光が爆ぜる。



あっぶね〜!



ロイの機体とエリアルヘロンが鍔迫り合いになる。



「貴様がエリアルヘロン、ハナサギか?堕とさせてもらうぞ!」



ロイがブレードを振り抜く。



ちっ!どんなパワーしてるんだコイツ。でも倒さないとやばいよな。



「はああ!」



エリアルヘロンがロイの機体、マルチユニットヴァレンシアに攻撃を仕掛ける。



「くっ」



マルチユニットヴァレンシアが持ち前の機動力を活かして回避する。



そのままブレードを振り下ろす。



エリアルヘロンがそれを受け止める。



「なっ、これを受け止めるか!」



マルチユニットヴァレンシアが距離を取る。



すぐにエリアルヘロンが追従する。



「逃がすかよ!」



「、、、、速い!」



ロイが驚く。



ハナサギもハナサギでエリアルヘロンのスピードに驚いていた。



「え?こんなスピード出せたっけ?」



二機のアーマードスーツが宇宙を駆け巡りながらぶつかる。



「どんな改造をしたらエリアルでこんなスピード出せるようになるんだよ!こっちはマルチユニットだぞ!?」



ロイが驚き叫ぶ。



「コイツ、俺の攻撃全部跳ね返してくる!やっぱ初心者にはきついな」



なんとかしてコイツのブレードを、、、、。



視界が狭くなっていく。



あ、また意識が、、、、遠のいて、、、、。



⭐️⭐️⭐️


「ロイのやつ、随分苦戦してるみたいじゃないか」



クランリーダーが笑いながら言う。



「ハナサギというパイロットと交戦している模様。敵方も増援を派遣しているようです」



「なるほど。ところでプライマル、テリアンのポイントは?」



「はい。プライマル300、テリアン105です」



「ふ、随分出遅れてしまったみたいだな。私も出る」



「カナ、、、、じゃなくてクランリーダー、気を付けて」



クランリーダーの名はカナ、と言うらしい。



「私を倒せる奴なんていないから、安心しな」



⭐️⭐️⭐️


「ハナサギ君、大丈夫?ハナサギ君?」



ヴァリュートが必死に呼びかけるが応答がない。



《ハナサギ君は撃墜されてないわ。ミネーを援護に向かわせるわ!》



ユカがそう言ってレーダーを確認する。



エリアルヘロンの点は微動だにしない。



「電波妨害されてるとか?」



アリスが尋ねる。



「それならレーダーが使えなくなってるはずだろ?パルスチェーンか?」



ヨッシーが反論する。



「なんにせよ、ヤバい状況だ。そろそろエリアルバレルディがくる」



ユカ達の面持ちが暗くなる。



⭐️⭐️⭐️


突如として動きを止め、漂い始めたエリアルヘロンにロイが困惑する。



「止まった、、、、?いや」



エリアルヘロンが体勢を立て直す。



「滑らかな動きだ。まるで人間のような動き、、、、」



エリアルヘロンがエナジーブレードを構える。



ロイが警戒する。



目の前からエリアルヘロンが消える。



「きえた!?」



ロイが驚いてあたりを見渡す。



「はっ!上か!」



エリアルヘロンが上から急降下してブレードを振り下ろす。



「くそっ!」



マルチユニットヴァレンシアが緊急回避してブレードを避ける。



「コイツ、、、、!」



ロイは混戦状態の戦場に戻ることにした。



『きっとカナが出撃してきている!俺一人じゃ荷が重すぎる!』



ヴァレンシアがデブリ帯の方へ全速力で飛んでいく。



エリアルヘロンがノータイムで追従する。



「なっ、追いつき、、、、!」



ヴァレンシアが真っ二つになる。



「なんだよ、コイツは!」



ロイはそう言い残して爆発に巻き込まれた。



エリアルヘロンはそのまま直進していく。



「あ、ハナサギ君!よかった」



ヴァリュートが安堵のため息をつく。



ユカとアリスも安堵のため息をつくが、ヨッシーがレーダーを見て驚く。



「おい、ハナサギとんでもないスピード出してるぞ?どんな改造をしたんだ?」



「ウェポンベイ以外何も触ってないわよ」



ユカが困惑する。



「どーなってんだよ、お前」



ヨッシーが苦笑いする。

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