羽休め パート3

!~よたみてい書

第1話

 仕事の業務が終わった。

部下たちの指示、上がってきた仕事の確認。

いつもの作業をこなした。


 今日の仕事は比較的簡単に感じられた。

私の調子が良かったのか。

それとも部下たちが仕上げた仕事が重いものではなかったからか。

どちらにせよ、今日は仕事が終わった後だというのに、まだまだ元気が有り余っている。

私の魂が、まだ元気ですよと訴えかけている。


 私は左腕に巻いている腕時計に視線を向けた。

現在時刻は19時を回っている。


 街中の様子は、いつもと変わらない夜闇に包まれていた。

それを建物から漏れる明かりと街灯が振り払っている。

私たちはその恩恵で今日も平和に夜でも安全に暮らせている。

この環境を作ってくれた誰かさんには感謝しなければ。


 薄暗い街路を歩いて帰宅している途中、ふと横の建物が気になった。

大型総合デパートが電灯で自信をアピールしている。

私はデパートのそのアピールに簡単に負けてしまった。

今日の夕ご飯の食材が冷蔵庫に無いと予測したため、私の足取りはとても速い。




 夕ご飯の食材を買いに来たというのに、私は今、デパートの3階に立ち寄っている。

3階の雑多な商品コーナーでウィンドウショッピング中だ。

欲しいものが見かけたらそのまま購入しよう。

そんな思いを抱きながら店内を見て回っていると、騒がしい音が私の両耳を刺激してきた。


 何事かと騒音の方角を見る。

そこには、たくさんの遊具が設置されていた。

俗にいう、ゲームコーナー。

子供はもちろんのこと、大人も遊べる賑やかなスペースだ。

意外なことに、ゲームで遊んでいる年配の方も少なくなかった。


 その様子を眺めながらゲームコーナーを横切ろうとしたとき。

私はあるものに目を奪われた。

クレーンゲームというガラス張りのゲームの中に、可愛らしい鳥のマスコットのぬいぐるみを発見した。

両手で抱えるのにちょうどいい大きさで愛らしい。


 私は財布から500円を取り出し、硬貨投入口に挿入する。

丸い2つのボタンを操作して、天井につるされているクレーンを上下左右に移動させていく。

 そしてもう一つのボタンを押し込むと、クレーンが直下のぬいぐるみに目掛けてゆっくりと落ちていく。

クレーンは挟み込もうと両側に開いていき、そのまま鳥のぬいぐるみを掴んだ。

しかし、ぬいぐるみはすぐにクレーンから滑り落ち、箱の中で寝転がる。


 私はそのまま4回ぬいぐるみ取得を試みて、最後の挑戦をしていた。

ボタンを操作して、クレーンでぬいぐるみを無事に挟み込むところまでは来た。

だけど、何度やってもぬいぐるみはクレーンの捕獲から逃げ出す。


 私も危ない何かに捕まりそうな気配を感じ取ったので、ゲームコーナーを後にした。

 

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