第4話 悪夢

 オーウェンは気づいた時にはコナーと旅に出ていた。無理やり連れだされた日から半年程たっていた。

 オーウェンはコナーと共にかつて国があった場所や都市、住む場所をなくした人が集まってできた村を巡っていった。見つからなければ野宿した。

 どこへ行っても何もなく、寂れていて、都市も中央と似たようなもので大した発見はなかった。

 食料がなくなれば化物を狩って、火を起こし焼いて食べた。化物の肉が硬くて切りづらいことだけは新たに知ったことだった。

 毎日その繰り返しだった。

 今日もオーウェンは化物を倒し、コナーがその肉を切って焼く。

 コナーが焼きあがった串に刺さった肉を差し出した。しかし、オーウェンは空腹を感じていなかった。

「要らない」

「あれだけ動いたんだからエネルギーを消費してるだろ。食っとけ。……食事は生きるために大切だ」

 コナーが串を押し付けてくる。オーウェンは渋々受け取り、口に入れる。肉は硬く、反発する。不味く味のない肉をどうにか噛み切り胃に押し込んだ。


 食事のあとは寝るだけだった。襲われないよう交代で火の番と見張りをする。

「オーウェン、先に寝ろよ。戦闘もあったし疲れてるだろ」

 今夜はオーウェンが先に眠ることになった。

 旅に出て時間がたち、オーウェンは少しづつコナーと話せるようになっていった。コナーが無視されても世話を焼いてくるから諦めたともいうが。

 その甲斐あって、オーウェンは少しづつ以前の自分に戻っていった。しかし、それでもあの日救えなかった罪悪感は消えずに重くのしかかっている。


 眠るたびにオーウェンはあの日の夢を見る。ケヴィンがいなくなったあの日の夢を。

 夢の中ケヴィンが笑い、すぐ血が流れだす。目の前にいるのに、オーウェンが手を伸ばしても届かない。

 足を踏み出しても、体が重く、近づくことが出来ない。

「く……くそっ! なんで」

 

「オーウェン!」

 自分を呼ぶ声がして目を覚ました。

「大丈夫か、オーウェン」

 コナーがオーウェンの顔を覗き込んでいた。

 オーウェンの額から汗が流れる。

「ああ……うん、平気だ。目が覚めた。代わる」

 悪夢を見た後で眠れる気がしなかった。少しの沈黙の後に、わかったと返ってきた。交代してコナーが眠りについた。 


 オーウェンは寝ている彼の顔を見る。

 あの任務以降、人と関わることを止めた。失うのがつらいなら関係を築かなければ良いと思った。それなのに、この男はどれだけ距離を取っても話しかけてきた。挙げ句の果てには、旅に出るから着いてこいと言ってオーウェンを連れ出した。


 どうしてコナーは俺を選んだ?

 オーウェンは任務から帰ったときのことを思い出す。

「あの時お前は何て言っていたんだ?」

 四十七地区から戻った時、コナーはひどい顔をしていた気がする。


「           」


 抱きしめられたときに言われた一言が思い出せない。

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