最後の一人






 男は絶望した。


 どれほどの人間を屠ってきただろう。ただひたすらに、元の世界に帰るために。帰りたい、その一心でここまで辿り着いた。


最後の一人になれば、戻れるとアレは告げたではないか。ここには、もう自分以外の存在はいない。自分が最後の一人となった。それなのに。


「私を元の場所へ返せ」



「何故、オ前ダケガ、オ前ダケガ……」

「許サナイ、一人ダケナンテ……」


男の魂に結び付けられた、何重、何百、何千もの鎖。その輪一つ一つが、かつて一人一人だったもの。殺し殺され、殺し殺され、縁を結び鎖となって、最後の勝者に纏わりつく。確りと解けることなく、その地へと縛り付けるモノ。


「俺は、帰るんだ、邪魔をするな!」

幾重もの黒い手が伸びる。


「帰リタイヨウ、帰リタイヨウ、連レテ行ッテヨウ」

「俺モ連レテ行ッテクレ」

「帰ル、帰ル、帰ル」



刀を振るっても、その手は、その鎖は一瞬は切れてもまた繋がって、再び纏わりつく。


男は力尽き、鎖の中に沈んでいく。






できた

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