第7話
すっげ、本当だったんだ、あの噂。禁止されている時間帯にわざわざダイブした甲斐があったぜ。ダイブの方法も載ってたしな。
噂になってたんだ。あの奇病は病気じゃ無いって。政府は隠しているけど、あるゲームの中に入って出られなくなっているだけだってな。そう、デスゲームの中で殺し合いをしてるんだって。
合法的に殺し合うんだぜ。俺も混ぜてくれよって思うだろ。
灰色の四角い建物の中で目覚めるって書いてあった。で、部屋の中にある武器を持つと外に出られて、赤茶けた荒野で只管戦い続けるんだって。本当だった。
これからは、殺し放題ってことだろ。
四角い建物を出て周りを見回した男は、その赤茶けた大地を踏みしめ、夕暮れのような空を見上げた。夕焼けに囲まれたいるのに、はっきりと辺りが分かるほど明るい。
嬉しそうに得物、大型の斧を片手に歩き出した。しばらく歩くと、向こうからやってくる姿がある。嬉々として迎え撃とうとしたその瞬間、男の体は燃え上がり、灰と成り果てた。
「防御一つできないなんて。ルーキーかな。あんまり成果はないか」
相手はそう呟いて、出現した段ボールから菓子パンと水、それから小さな宝玉を取り出した。
「お、ルーキーのくせに出るんだ。小さいけど。ルーキー同士でヤッたのかな。このサイズだと二、三人ぐらい? 」
その宝玉をツルッと飲み込んだ。宝玉は、力になるからだ。相手の力を自分のものにできる。能力がなくても、エネルギーぐらいにはなるのだ。
「まあ、久々の菓子パンだが、おやつ代わりにもらってくよ。
もうさ、最初からいた連中はレベルアップしてんだわ。
最初は、飛び道具とかなかったけど、レベルが上がると、色々できるようになってね。こんなふうに火魔法とか使えっちゃうわけ。
火魔法、スタンダードだよ。皆最初の頃に手に入れちゃえるよ。防御魔法とか防御方法持ってないともう辛いんだわ。だから、君等みたいに今頃現れる連中は、俺らみたいな古株のオヤツになっちゃう」
手頃な岩に座って、菓子パンをかじる。一見、寛いでいるようにも見えるが、辺りを伺い、探索スキルを常時かけていて、油断はない。
「いやー、人間て社会的動物だって、こんなんなって思うとはな。もう菓子パンになっちゃた奴に語っちゃうぐらい会話に飢えてんだよ。人間て、面倒臭い生きもんだよな」
男にとって、遠目でも自分が見付けたのが新たに出現したルーキーだとすぐわかっていた。あんなに無防備で、ヘラヘラ得物を担いで歩いているなんて、今どきルーキー以外にいない。
コンスタントに出現するルーキーは、古株にとっては相手にならない。だが、気晴らしにはなる。
男の周囲に展開した結界が何かを弾いた。
「お、運がいいのか悪いのか。さっそく次がお出ましか」
立ち上がり、気配の下方向へ一歩踏み出した。こちらから様子見で打ち込んだ火球は、はじき返された。
「おお、古株さんですね。それじゃ殺り合おうか」
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