第3話
オレは毎日が苦痛だった。朝起きて、学校に行って、くだらねえ話を聞いて。世の中には色んな決まり事があって、それを守らなきゃいけないって教わって。すげえ、窮屈だ。権力も無けりゃ、金もねえ奴は、這いつくばって生きてかなきゃならねえ。だから俺も這いつくばって、金持ちに阿って生きてかなきゃならない。ほんとやってらんねえ。
だから、ゲームとかに嵌まったのかもな。実際に、ゲームの中だから自分の手の感覚とか無かったけど、楽しかった。だから、フルダイブ型が出たときにもすぐに金を貯めて購入した。
それが、こんなことになるなんてな。人生ってわかんねえよなあ。
最初の獲物で得た収穫はショボかった。まあ、このゲームに恐れをなして自殺を図った死にぞこないにトドメをさしただけだから、仕方なかったのかもしれねえ。
あの後、何人か殺ったがちゃんと殺した場合は、苦労しただけ報酬が良くなった。あの死にぞこないも、もう少し待っててくれれば、もっとイイ報酬に変わったのによお。
箱の形状で中身が変わるみたいだ。段ボール箱はハズレ、たいしたモンは入ってねえ。
木の箱はまあまあかな。弁当やジュース、上手くいけばビールとかが入っている。
金属の箱はもっと色んな料理が入っている。飲み物もワインとかウイスキーとか入っていたりもした。食い物や飲み物が中心だけど、それでオレには十分だ。
それぞれの部屋の主が死ぬと崩れて小山になる。お陰で物陰ってやつができて、運が良ければそっから他の連中を観察することができるってわけだ。
持ち主が生きてれば、四角い形のままだ。で、面白いことに、一定の時間が経つと四角い部屋は移動するんだよ。シュンって。どっか行っちまう。
部屋から出てきた奴を待ち伏せして殺っちまおうと思って、見張ってたらシュンって消えちまいやがった。まあ、ということは部屋から出る直後ぐらいは安全だって事だ。
それだけじゃねえ、部屋に戻りたいと思うと近くに現れるんだわ、オレの部屋が。チョー便利じゃん。
それぞれ自分の部屋で寝ることや食べることができる。オレは収穫物は部屋に持ち込んでいる。一気に食べ切れるわけでもないからな。
ドアを閉めると、外からは侵入ができなくなるからだ。イヤー、よく出来てるぜ。ちゃんと寝れて休息もでき、ゆっくりと食事もでき、万全の体制で狩りができる。
この世界が何処かなんて俺にはどうでもいい事だ。こんな充実した毎日が送れることに主催者には感謝したいぜ。
この世界、生きてるのが楽しい。充実している人生ってこういうのを言うんだろうな。
俺にはここに来る直前の記憶がない。だから、何でここに居るのかわかんねえけど、そんなことはどうでもいいよな。
人殺しちゃ駄目だの、盗んじゃ駄目だのそんなことばっかでさ。
で、将来は馬車馬のように働けってか。やってられねえって。
本当にここは天国みたいだ。
ドアを開け外へでる。暫くあてもなく獲物を探しながら歩いていく。崩れた建物の残骸の向こうで争う音がする。そっと伺うと50m程先か、男が二人、血みどろになりながらやり合っている。
お互いにゆとりがないのか、こっちには全然気がついていない。とうとう決着が着いたようだ。漸く一人が倒れ、そこには金属製の箱が残された。その金属製の箱は見たことも無い色だった。
虹色に輝いている。あれはきっと良い物が入ってそうな気がする。欲しいな。
残った男も血だらけで肩で息をしてるぜ。そっと後ろから近づいてズブッと刺した。
「え、あ……」
それで、箱になった。油断したお前が悪いんだ。これも良さげな箱だ。オレは、自分の部屋を呼び寄せて2つの箱を持ち込んだ。今日はすげえ楽に箱を手に入れられたし、大量だぜ。
まずはオレが殺した奴の箱を開けてみた。食料と飲料の他に、何か紅い宝玉のようなものがある。
大きさは掌よりも小さめか。こんなもの、何に使うんだ。ここじゃ宝石なんかは価値がない、と思ったんだが。触れてみると、飲み込んでみたくなった。なんというかこれを飲まなきゃ損だ、みたいな感じがするんだ。
心の中からこの宝玉を飲み込めと強く感じる。馬鹿言うな、こんなもの飲めるわけ無いだろうとは思うんだが。オレの意思とは関係なく、掌にのせた宝玉をオレは飲み込んじまった。
ツルンとその宝玉はオレの喉を通り、腹の中へ。その途端、体の中から力が湧き出てくるのを感じる。なんだこの、熱さは。体の芯から燃え上がるような、それでいて心地よい力の脈動を感じる。
オレは力を手に入れた。
手に入れたのは二つ。一つは先の箱に入っていた宝玉による炎を扱う力。
それからもう一つの虹色の箱に入っていた宝玉からは、雷を落とす力だ。
使い方は、力を手に入れた時からわかっている。1キロぐらいまで離れていても目にさえ見えれば、落雷を落とせる。多分、これが最初に言っていたボーナスっていう奴なのだろう。沢山殺した奴を殺せば、このボーナスが貰えるんだろう。
ああ、ますます楽しくなってきた。
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