第2話

 フルダイブ型VRマシンが開発され、世界的に浸透してきた昨今ではあるが、それに伴う奇病が蔓延していた。


一部の者たちがダイブした後に意識が戻らないというものだ。特定のゲームというわけでもなく、特定の会社のマシンというわけでもない。原因が特定されず、フルダイブ型VRマシンの危険性が問題視された。


 この奇病に罹った者は、昏睡状態であるにも関わらず点滴などの栄養補給や水分補給、排泄の世話などといった健康ケアが一切いらない状態になっている。ただ、眠っているだけなのだ。


これが間違いないと証明されたのは、一人暮らしで半月近くも発見が遅れた奇病の罹患者が発見されたことでだった。


彼は、そんな状態にも関わらず生きていた。健康状態も全く問題が無かったのだ。そのため、患者はすべて病院ではなく、新たに設置した施設のベッドに集められてることになった。


奇病の発症者について、調査によって明らかにされた共通性は同じ時間帯にダイブしたということだけであった。


取り敢えずの注意喚起として、その時間帯のみ使用が中止された。だが、フルダイブのVRMMOが禁止になることはなかった。



 困惑した関係者に、奇病で入院していた患者の一人が覚醒したという情報がもたらされた。


 早速、医者の許可と付き添いのもと、聞き取り調査が行われた。


彼の証言は、非常に不思議な話でその内容から、情報統制がなされた。しかし、どこからかその情報は漏れていった。SNSなどで徐々に噂話として語られるようになった。


禁止されていた時間帯はあるが、その時間にダイブできないわけではなかった。そして、その時間帯に敢えてダイブする人間も少数とはいえ、後を絶たなかった。


奇病発症者数は少しずつ増加していった。


 彼が帰還した後、集められた奇病発症者は、その後、徐々に心拍停止によって死亡するものが相ついでいった。急に心拍停止状態に陥り、眠ったままの状態で亡くなっていく。彼らに何が起きたのか、こちらから知る術は無い。


「かれらは、何処かここではない場所で殺し合いをしているのだろうか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る