15:踊る人体模型 解決編 追加の赤い警備員
「帰ったかな?」
「多分」
俺とカコは2階の廊下の窓から首を出して目黒先生とユリちゃん先生の帰宅を見届ける。
赤いジャージのユリちゃん先生と白衣を着た目黒先生が並んで職員用通路から出ていった。
「なんで車で来なかったんだ?」
「多分当日まで誰が踊り子になるか
「ああ、そういう事か」
言われてみれば
事前に鍵を預かるのも前年の踊り子である目黒先生なら簡単だろうし、毎年どこで練習してるのかはクラスで話に上がってたりもした。
「来年からどうなるのかな? 確かこの学校の先生だろ踊り子って毎年」
「うん、前に聞いた話だとなんでも大正時代にこの学校が出来た時に亡くなっちゃった女の子がいて……その子が
「良く覚えてるな……俺はそんなのどこで聞いたかすら覚えてないのに」
「4年生の時の地域の歴史を調べようで、私と一緒に近所のおじいちゃんに聞きに言ったじゃない……」
「そうだったっけ」
「そうなの……でもその頃って確か……変な
「……2年前? ああ、校門の前に立つ女!!」
ちょうどそのころはみんな家に閉じこもりがちでその話題は大いに俺たちの娯楽として、クラスの話題になっていた。
詳しくは思い出せないけど雨の日に学校の校門に居て、不思議に思った塾の帰りの子が声をかけられたんだっけ……『どうしたの?』って。
そうしたら確か腕を掴まれて……驚いたその子が必死に逃げて近くのお店に駆け込んだんだっけ。
実際に俺の父さんと母さんもその通報を受けて、しばらく学校の帰り道で見守りをしていたことがあったなぁ……。
「不気味だよね~、結局それ以来見つからなくて……去年あたりから話にも上らなくなったけど」
「あったあった……」
そこで俺はある事を思い出す。
カコの言う通りその話題は不自然な程に急に消えた……。
「雨の日の花子さん!! なんで忘れてたんだ俺!」
「ひゃっ!?」
ついうっかり、急に立ち上がってしまいカコがびっくりしてしまう。
悪いと思いつつも、俺は自分の記憶力にすごく残念な感想があふれてきていた。
あった、確かにユリちゃん先生たちが言う6つ目の学校の不思議!! 『雨の日の花子さん』があったじゃないか!!
がしがしと頭を掻きむしり、きっかけをつかんだ俺の頭にその不思議の事があふれるように思い出せるようになった。
一番最近生まれた学校の不思議を俺はすっかり記憶の彼方に追いやっていた。
「そうだ……この学校の不思議は5つじゃなかった」
「ゆ、ユウキ? 急にどうしたの?」
「カコ、お前他に知ってる噂あるか?」
「き、急に言われても……」
俺はカコの肩を
多分大事な事を俺は思い出せないでいる気がして……そんな俺に
なんでこんなに焦っているのかわからないけど……なんでこんなに直近の噂を思い出せなかったんだろうか。
――カツーン
――カツーン
そんな俺たちの元に、ゆっくりとした足音が耳に届いた。
学校内でそんな音が響く理由なんて俺たち以外に誰かが歩いていなければあり得ない!
「え? もう誰も校内に居ないはずなのに」
カコもいち早く気づいて大急ぎで俺たちの教室に逃げ込む、俺もその後に続いて教室に入って念のため扉をゆーっくり、音が鳴らない様に閉めて鍵をかける。
そんな間にも足音は近づいてきていた。
そしてだんだん、その音は大きく響き……俺とカコは扉を背にしたまま息を殺して手を握る。
……なんか息遣いも聞こえてきた。
――ふしゅーー、ふこぉぉぉぉぉ
な、なんだこの声。
不気味さが際立っていて俺の背筋に冷たい汗が一筋流れる。
「カコ、声を出すなよ」
カコの耳に口を寄せて、
俺たちは
でも、万が一の時は俺がカコを逃がすんだ……飛びついても何をしてもカコを逃がせばきっと助けを呼んでくれる。
そのまま数分、待っていると一度通り過ぎた後に俺たちの教室の前までその足音が引き返してきた。かつんかつんと規則正しい足音と……誰かを探すためだろうか? 赤い光がさっきからちらちらと視界に入ってくる。
――誰かいるのかい?
唐突に、俺たちの教室の前でその足音は止まった。
なんで!? 音は立ててないのに!!
「ごめんユウキ、私……双眼鏡を廊下に置いて来たかも」
ひそひそと俺に耳打ちするカコ……しかし、それを責める訳にはいかない。
誰が来たか見てないから何とも言えないけど、どうするか決めかねる俺……逃げるかやり過ごすか。
……荷物が広げっぱなし。これはもうどうしようもない。
……目くらまし、無理……持ってきた懐中電灯はそんな強い灯りではない。
「こうなったら……一度逃げるぞ」
「うん」
俺とカコは学校で繰り広げる深夜の逃走対決へと覚悟を決めた。
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