10-2.遊園地




「よぅし! 全員集合だね! なら早速アトラクション巡りと行きましょー! 今日の目標は完全制覇! 行くよ! 今市いまいちくんっ!」



「へっ!? 僕!? ちょっと九重ここのえさんっ!?」



 叫んだ心奈が優馬の手を取ってずんずん先に進んでいく。


 取り残された飛鳥と再び視線が重なる。



「あー......その、もう体調はいいのか?」



「うん。あの後帰ってよく寝たらすぐに良くなった」



「そうか......」



 ......やばい、会話が全く続かない。こんな調子で1日持つんだろうか。



「おーい! 2人とも何やってんの? 早く早く!」



「今行くって!」



 前から叫ぶ心奈に答えて、飛鳥の隣に立つ。


 それだけで心臓がしんどい事になっているのが恥ずかしい。


 だけど、色恋沙汰にうおい京介でもさすがに心奈達が気を使ってくれていることくらいわかっているので、勇気を出して一歩踏み出してみる。



「じゃあ行くか。あいつら見失ったら困るし」



「う、うん」



 このぎこちない雰囲気が少しでも早く解消される事を願いつつ、前を進む心奈達を京介と飛鳥は並んで追いかけた。




*****




「京ちゃん! 京ちゃん! 次はあれ乗ろっ!」



「ちょっと待て心奈」



 目を輝かせた心奈が指差す先にあるのはフリフォール。


 あれに乗るとなると、休みなしで絶叫マシーン5連チャン目になる。


 優馬も飛鳥もすっかり顔が青ざめている。


 京介はと言うと、気持ち悪いとかそういうのはないのだが、さすがに疲れたので少し休みたかった。



「ねー! いこーよー! 時間がもったいないよぉー!」



 そんな乱暴に手を引っ張らないで欲しい。


 タスケテの視線を少し遅れて歩いている優馬と飛鳥に向けるのだが、ゾンビみたいになった二人は俯いてしまっているので目も合わない。



「ごめん京介。僕はギブアップ」



「私も......ちょっと休ませて......」



 近くのベンチに腰掛けてしまった飛鳥と一緒に優馬も座ってしまい、力無い笑みを向けてくる。



「夢咲さんはとりあえず僕に任せて、京介は九重さんのこと頼むよ」



「ちょい待て! なんでそうなる!? 今日の遊園地の目的は......」



 飛鳥との距離を縮める為だよな? と言おうとしたが、飛鳥の前でそんなこと当然言えるはずがない。



「心奈ぁ......」



「ひぇっ!?」



 ベンチに座る2人に背を向けて浮かれてはしゃぐ心奈を睨む。


 冒頭、お前が気を遣ってくれていると勘違いしてしまった自分を呪いたい。


 ヘビに睨まれたカエルみたいに固まってしまった心奈の隣に立って震える肩をそっと叩く。



「お前、マジで後で覚えとけよ......」



 いいだろう。そんなに遊びたいなら遊んでやる。



「フリフォールもいいが、あれに乗らないか?」



 京介が指差した先を見つめた心奈が首をかしげる。



「え? コーヒーカップ? あんな可愛いのに乗りたいの?」



 怯えた表情から一転、小馬鹿にするような表情に変えた心奈の発言に、思わず口の端が吊り上がってしまう。



 その顔覚えてろよ。すぐに泣きっ面に変えてやる。



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