10-1.遊園地





「予定より早く着いてしまった」



 週末の土曜日。


 待ち合わせ場所の時計台の下で空から降り注ぐジェットコースターの轟音と絶叫を目で追いかける。


 さすが土曜の有名遊園地と言った感じで、開園から数分しか経っていないのに、辺りはすでに人であふれかえっている。


 集合場所を決めていても、注意を払って人混みに目を凝らしていないと見落としてしまいそうだ。



「おーい! 京ちゃん!」

 


 そんな雑踏の中でもよく通る、ソプラノボイスがした方を向く。


 空で照りつく太陽みたいな眩しい笑顔を引っさげて、手をブンブン振りつつ心奈がこちらに向かって走って来ていた。



「お待たせー! ひょっとしてあたしが最後?」



「いや、2番目だ」



 息を切らせる心奈の格好は白くつばの広いハットと白のワンピース姿で、元気な印象を与える心奈にとても似合っているのだが、少し早い夏を感じさせる装いに少々目のやり場に困ってしまう。



「ちぇー! 1番乗り目指してたのに、京ちゃん早過ぎ。あ、さては昨日楽しみで眠れなかった口だな?」



 ニヤニヤからかうような表現を向けられて鬱陶うっとうしい。



「お前と一緒にすんな」



「と言う割にはまぶたがちょっと重たそうだけど?」



「うっ.........それは楽しみというより別の理由でだな......」



「ふふ。そりゃそっか。憧れの夢咲さんと遊園地であそべるんだもんねぇ」



「うっせぇ」



 ニヤニヤする心奈にズバリ言い当てられて、顔が熱くなる。


 初恋の幼馴染との遊園地デート。


 取り巻きが2人ついてくるとはいえ、そう思うと嫌でも胸の動悸どうきが加速してしまう。


 今日の服装もこの日の為にわざわざデパートで店員さんに小一時間くらい話してしてコーディネートしてもらったので、よっぽど変では無いと思うのだが、着慣れていないせいで正直自信はない。


 やけに京介を見つめている心奈の視線が気になって彼女に尋ねてしまう。



「その......この格好、変じゃないか?」



「変じゃないよ。むしろカッコいいよ」



「そ、そっか......」



 なんかそこまで褒めてくれるとは思ってもいなかったので逆に照れてしまう。



「うん。安心して。きっと夢咲さんも気に入ってくれると思う」



「おーい京介、九重さーん。ごめんごめん、入り口が混んでててさ」



 笑顔の心奈の背後から雑踏ざっとうでも目立つ金髪イケメン野郎やってきた。


 そしてその隣には白のTシャツにデニムのショートパンツ姿でキャップをかぶった飛鳥がいた。



「2人とも一緒だったのか」



「うん。入り口でばったり夢咲さんと出会ってね。それで一緒に来たんだ」



「そうか......」



 一瞬、飛鳥と視線が合ったのだがすぐに逸らされてしまう。


 なんと言うか気まずい。


 そんな空気を破ったのは心奈だった。

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