8-2.秘めた想い




「そうだったのか。てっきりオレ、お前に嫌われてんのかと思ってた」



「そんなこと一度も思った事ないっ! なんでそう思うわけ!?」



「や、昨日だって家まで送るまでの帰り道、終始無言だったじゃん」



「それはその.........久しぶりだったから緊張したし、それに」



「それに?」



「............嫉妬しっとっていうか......」



「え?」



「な、なんでもないっ!」



 もにょもにょとした声で呟くのでうまく聞き取れずに聞き返すと、突然打って変わって大声を出して再びベッドに潜り込んでしまった。


 熱のせいで情緒がおかしくなっているんだろうか。


 なんて言ったのか気になるが、それよりも飛鳥から嫌われてなかったという事実がただただ嬉しい。


 もっと話していたいのだが、話し込んで体調を悪化させるわけにはいかない。


 今はとにかく身体を休めてもらった方がいいだろう。



「ま、とりあえずちゃんと休んで身体治せ。じゃあな」



「えっ......行っちゃうの?」



「そりゃあ、な」



 飛鳥の体調のこともあるが、保健室に連れて行っただけで帰りが遅くなれば、変な噂になりそうだし、人気者の飛鳥と二人っきりで保健室にいたなんて知れれば、男子達に嫉妬の炎で焼かれかねない。


 そもそも保健室に運んだだけでも怪しいんだから早いところ体育館に戻るべきだ。


 飛鳥に背を向けて保健室から出ようと歩を進めた時だった。



「京介......」



 弱々しい声と一緒に引かれた体操服のシャツ。


 振り返ればさっきより顔を赤くさせた飛鳥が上目遣い気味に見上げていた。



「また......」



「また?」



「また、話してもいい?」



「ああ。てかお前......」



 真っ赤な顔を向けてくる飛鳥の額に触れて自分の額も触ってみる。



「ひっ......」



「めちゃくちゃ熱いぞ? マジでちゃんと病院行った方がいいと思うぞ」



 額に手を当てるため、必然的に近くなってしまった飛鳥の顔が更に真っ赤に染まっていく。



「だ、大丈夫だからっ!」



「お、おい」



 突然布団に包まってしまった飛鳥は終始大丈夫というだけで、京介が保健室を出て行くまで布団から出てくることはなかった。

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