7-1.合同体育_縮まる距離
「お前のせいでほんとに散々だ!」
恨みと一緒に心奈に向けて強めのチェストパスでバスケットボールを送り出す。
「おわっ!? ちょっと! あたし女子だよっ! 優しくパスしてよねっ」
ハムスターみたいに頬を
「二人とも災難だったね。よりにもよって罰が昼休みに体育の準備とか運が悪すぎる」
「でもこれはチャンスだよ」
優しい軌道でパスする優馬のボールをがっちりキャッチした心奈が不敵に笑う。
正直、嫌な予感しかしない。
「バスケで活躍すれば、夢咲さんに近づけちゃうんじゃない?」
「おまえなぁ......万年帰宅部のオレに何期待してんだよ。優馬からもなんか言ってくれ」
おそらく飛鳥がプレーしているんだろう、人だかりのできたコートの方を向く人の話を全く聞いていない心奈の横顔にため息が漏れる。
「あはは。まあ難しいとは思うけど、やってみればいいんじゃない? どうせサボる訳にはいかないんだしさ」
「えー......」
「よぉしじゃあ決まりだねっ! あたし達でチーム組んで戦おーっ!」
腕を突き出した心奈は徐々にチームを作り始める集団に声を掛けに行くのだった。
*****
結論、結果は惨敗だった。
「だから言ったろ......」
体育館の端でタオルを顔にかけて大の字で寝転ぶ心奈に声をかけてみたが反応はない。
「てかお前ちっこ過ぎて、シュート全部ブロックされてるじゃねぇか!」
「むがぁ! ちっこい言うなっ! 京ちゃんだって、一本もシュート入んないじゃん! なによあのヘロヘロホーム! ダッサッ!」
「なっ......へ、ヘロヘロとはなんだ! ヘロヘロとは!」
「なによー! うっ......」
胸を押さえた心奈がその場にへたり込む。
「おい大丈夫か?」
「あはは......うん、大丈夫。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったみたい。貧血かな?」
「いいからちょっと座ってろ。あんま無理すんな」
「うん。あっ! そんなことより見て! 夢咲さん試合するみたいだよ!」
心奈が指差した先のコートで飛鳥が屈伸していた。
近くで見ようよ、とさっきまでフラフラしていた事をもう忘れたみたいに立ち上がった心奈に軽くデコピンを見舞う。
「いたっ!?」
「ちょっと座ってろって言っただろ? 大丈夫。こっからでもよく見えるし」
体育館になった笛の音と同時に試合が始まる。
(ん? なんか昨日に比べて飛鳥の動きが鈍いような......)
「ほえー。相変わらずすごいね夢咲さん」
(気のせい、か?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます