6-2.幼馴染との進展




「わかりやすくキョドってる!? ねぇちょっと! ふざけてないで答えてよー!」



 肩をつかんでゆさゆさ揺らされつつも黙秘を貫いていると、首をかしげる優馬と目が合ってしまった。



「昨日の夜なんかあったの?」



「別にー」



「帰ってる途中、夢咲ゆめさきさんにばったり会って、家まで送ってたんだよね?」



「へぇー。それで京介黙秘貫いてんだ。ま、言えないって事は言えないような事が合ったって事だよねぇ?」



「ねぇ?」



 ニヤニヤニヤニヤ。


 人を小馬鹿にするような笑みをたずさえて京介に迫る心奈と優馬。


 とりあえず心奈にデコピンを見舞っておく。



「みぎゃあっ!? なんであたしだけ!?」



「バラしたお前は重罪だ」



 目尻に涙を浮かべておでこをさする心奈。


 しばらくすると怒りの表情を浮かべた心奈に再び肩を掴まれ、前後に激しく揺さぶられる。



「くそぉ! ここまでされたら意地でも昨日夢咲さんとどうだったか聞いてやるぅ!」



「あはは。京介、観念した方がいいんじゃない?」


 うおおっと、闘志を瞳に灯した心奈におもちゃのように激しく扱われていると、優馬が苦笑いを浮かべてくる。


 この様子から察するに、京介の首がもげても心奈は諦めなさそうだ。



「わかったよ! 話せばいいんだろ、話せば!」



「うんうん! どうだった? ラフロマンス!?」



 揺さぶるのをやめてクリクリした大きな瞳を輝かせて心奈が顔を近づけてくる。



「ラブロマンスて......」



 期待がにじみ出る心奈の顔から視線を外す。



「いや、その......なんというか......」



 言いづらい。非常に。



「なんというか!?」



 こんな顔されて、期待されていると尚更。


 だが、ここでしらばっくれる訳にも行かないので観念して白状することにした。



「お前と別れたあと、飛鳥を家まで送ったんだけど」



「うんうん!」



「一言も話さずに家の前で別れて帰ったわ」



「............え? ご、ごめん。なになに? 家の前で別れて?」



 耳に手を当てて聞き返してくる心奈の仕草に顔が一気に熱を持つ。



「だ、だから何も話さずに別れましたっ!」



「ヘタレ」



「ヘタレ言うなっ! だから話したくなかったんだよ!」



 熱くなった顔を隠すように再び机に突っ伏す。


 言われなくても自分がヘタレだってわかってる。



「久しぶりに会って、一緒に歩いて、聞きたい事色々あったけど、緊張して頭が真っ白になって、何も話せなかったんだよ......」



 腕の中で呟いて唇を噛み締める。


 久しぶりに彼女の隣を歩いて、自分が思った以上に遠い存在になってしまったと悟ってしまった。


 片や学校のマドンナで優等生。片や赤点スレスレのモブキャラ。



「.........もう、昔みたいには話せねぇよ」



 唇が止まらない。


 まるで呪詛を吐くようにネガティブな言葉を紡いでいく。




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