4-2.心奈の手料理
「なんて顔してんの? そもそもあたしは、あたしじゃない他の誰かと京ちゃんを一緒にするためにわざわざ未来から来たんだよ? そんな簡単に諦める訳ないじゃん!」
「なんだそれ......」
「今日は探りを入れただけ。それで自信失ってどうすんの? 明日から本腰入れて夢咲さん攻略だ!」
うおーっ、と一人で勝手にテンション上げて夕陽に向かって握り拳を掲げる心奈に沈んでいた気持ちを忘れて思わず吹き出してしまう。
「お。笑ってくれた。えっへっへー」
ため息をついて笑う心奈の横に並ぶ。
「ちなみに京ちゃんには拒否権ないからね」
「仕方ないな......ま、上手くいく気はしないけど」
「ふふっ。ありがとっ」
二人で並んで校舎を出てしばらく歩いた所で今朝母親に言われたことを思い出す。
そういえば今日、帰りが遅くなるから適当に買って食べてと言われていたんだった。
母親の夜食を含め、スーパーに買い出しに行く予定だったことをすっかり忘れていた。
「どうしたの?」
立ち止まった京介に心奈が首を傾げる。
「あ、いやー......母さんに今日スーパーで買い出しするように言われてたの忘れてた」
取り出したスマホの画面に目を落とす。
一度家に帰って買い出しするとなると、ご飯にありつく頃には結構な時間になってしまいそうだ。
(制服でスーパー行くの、嫌なんだよな......)
京介の家は母子家庭で小さい頃から一人でスーパーに行く機会が多々あったのだが、制服だと哀れみの視線を向けられているように感じてしまうのであまり行きたくないのが本音だ。
だが、どこかの誰かさんに昼飯を半分奪われたので、正直お腹も限界。
そんなことを考えているとお腹からきゅるきゅると情けない音が鳴ってしまう。
「......じゃあオレスーパー寄ってくから」
「久美子さん今日も帰るの遅いの?」
「は?」
首を傾げる心奈を見つめて身体が固まる。
「なんでお前がオレの母さんの名前知ってんの?」
「いやだから、未来の京ちゃんの妻だってずっと言ってるじゃん!」
眉を
(本当にこいつがオレの将来の妻なのか?)
事が事なので、未だに心奈が言うことを全部が全部信じられてる訳ではないのだが、母親の名前を言い当てられてしまうと、そう思わさざるを得ない。
「付き合ってからずーっとあたしが二人の料理作ってたんだよ?」
「そうなのか?」
「あたし料理得意だからさっ」
「ええっ......」
「なにその反応!? 失礼過ぎない!?」
ない胸を張った心奈が京介の反応にぷりぷりと起こり出す。
「その目、信用してないな? だったら今日、あたしに晩ごはん作らせてよっ! 京ちゃんの大好物で舌を
行くぜスーパー! と、鼻息荒く大股で前を歩く心奈に京介は大人しくついていくのだった。
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