3-3.親友、今市優馬の忠告
結論、幼馴染の夢咲飛鳥は凄かった。
「ほえー。また入れた。これで何点目?」
「20点目だ」
彼女がゴールネットを揺らす度に体育館に押しかけた生徒達が割れんばかりの歓声を上げる。
素人目でも一人だけ動きが違うのがよくわかる。
卓越した運動神経、それに他の選手より頭一つ大きい恵まれた
「どこぞのちんちくりんとは大違いだ」
「......その、ちんちくりんを未来の京ちゃんは好きになったんだよ?」
「あそ。信じられねぇーわ」
手すりに持たれかかってコートで
近くにいたと思っていた飛鳥が遠くに行ってしまったんだと改めて実感する。
昔みたいに泣きながら京介の背中をついて来た、小さかった幼馴染はもういない。
コートの中心でスポットライトを浴び続ける飛鳥の姿がそう告げているようで、見ていて辛かった。
「......もう、行こうぜ」
手すりから離れて
「せっかくなんだから最後まで見てこうよ!」
「見ても無駄だって」
「無駄って......あの人、京ちゃんの好きな人なんでしょ?」
「.........だからだよ」
「え?」
「はいはーい。二人ともストーップ」
大歓声の中でもはっきりわかる手を叩く優馬の声。
「心奈ちゃん、ちょっと京介いじめ過ぎ。オーバーキルもいいとこだよ」
肩を叩いてへらりと笑った優馬が心奈の方に視線を向ける。
「なんで心奈ちゃんが京介を夢咲さんとくっつけさせたいかは謎だけど、夢咲さんは辞めといた方がいい」
「な、なんでですか」
「......京介には悪いけど、さすがに遠過ぎる」
「でも、京ちゃんと夢咲さんは幼馴染だし、なにかのきっかけさえあればきっと......」
「もういいって」
「京ちゃん......」
「もういいんだ。優馬の言う通りだ。あいつは......飛鳥はもう、遠いところに行っちゃったんだ。それが今日、よくわかったよ」
再び会場が歓声で満たされる。また飛鳥がシュートを決めたようだ。
「そんな態度するなよ。逆に
「でも......」
「ほんと、もういいんだよ」
眉を力無く八の字に曲げて上目遣いを向ける心奈の頭を乱暴に撫でる。
「帰ろう」
熱気の
最後に振り返ってコート上で
(あれ気のせいか? 今飛鳥と目が合ってるような......)
一瞬、期待してしまった自分を否定するように首を振る。
飛鳥が今更視線を送るとは思えない。
それにこの大観衆だ。きっと勘違いに違いない。
「京ちゃん?」
「ごめん。今行く」
さよなら初恋。
妙に視線の重なる幼馴染にひらりと手を振って京介は先を歩く心奈と優馬の横に追いつくのだった。
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