3-1.親友、今市優馬の忠告




「ねぇ京介」



「ああん?」



 5時限目と6時限目の間の休憩時間。


 前の席から振り向いた金髪イケメン野郎に睨みをかせる。



「機嫌悪過ぎでしょ。なんで初っ端からそんな喧嘩腰なわけ?」



「もう、限界なんだよ......」



 苦笑いを浮かべる唯一親友と呼べる相手、今市優馬いまいちゆうまにそう告げて机に頬を押し当てる。


 結局心奈にコッペパンを全部平らげられてしまったため、案の定エネルギー切れを起こしたお腹から情けない音が鳴る。


 腹が減ったのも事実あるのだが、疲労感が半端ない。


 心奈に出会ってからと言うもの体力も精神もすり減らされっぱなしだ。


 教室の窓辺に視線を送れば、笑顔で心奈がクラスの女子と楽しげに会話している。



「てか京介さ、九重ここのえさんと付き合ってるの?」



「はあっ!?」



 思った以上に声が出てしまったようで、クラスの視線が集まる。


 本日これで3度目だ。


 窓辺に視線を送ると心奈が口元に手を当てて笑っていた。


 ......顔が熱い。



「なんでそうなるっ!?」



「いや、だって今も九重さんの事見てるし」



「見てないっ! お前の気のせいだ!」



「えー、そうかな? 九重さんもずっと京介の事見てるよ?」



「え?」



「授業中も、今もね。ほら」



 優馬が差し出した指の方を向くと笑顔の心奈に手を振られてしまう。



「ね? ずっと見てるでしょ? あんな笑顔、彼氏にしか向けないって」



「うっせえわ」



 しゃべる気力が失せて机に投げ出した腕に顔をうずめた瞬間、肩を叩かれる。



「京ちゃん京ちゃん、ビックニュース!」



「5時限目だってのに、やけに元気だな」



 京介のエネルギーを物理的に吸い取った心奈を顔をずらした隙間から横目で睨む。



「どしたの? そんなしちゃって。京ちゃん物凄くご機嫌ナナメだね」



「お腹減ったんだって」



 京介の代わりに答えた優馬に心奈が「あー」とマヌケな声を上げて手を叩く。



「だからあんぱんあげよっかって言ったのに。あたしの食べかけだけど」



「なにそれ、ご褒美じゃん」



「優馬テメェ、黙らんと舌引っこ抜くぞ」



「あははっ。相変わらず面白いね今市くんは」



「おっ。流石噂の未来人。僕達話すの初めてなんだけど」



「あ、そっかそっか。初めて話すのは大学からでした。よろしくね、今市くん」



 なんか勝手に仲良くなって握手し始めた二人に何故かムッとしてしまう。



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