2-2.幼馴染より気になるあいつ





「さっそく本題なんだけど、完全無欠の夢咲さんを落とすにはどうすればいいのか......」



 結局さっきも話していた例の階段に戻ってきた京介は階段に座ってアゴに手を当て、「うむー」っと唸っている心奈の隣に腰掛け、奇跡的に売店で売れ残っていた人気のコッペパンを一口かじる。



「少女漫画とか恋愛小説でよく聞く、伝説の幼馴染補正がないとなると......」



 はむっ、と声を出して小動物みたいに同じく売店で購入したあんぱんにかじり付いたら心奈が目を細めて京介の頭から身体に向けて視線を滑らす。



「な、なんだよ......」



 充分に咀嚼そしゃくした後、喉を鳴らしてあんばんを飲み下した心奈がフッと笑う。



「正直厳しいね」



「......とんでもなく失礼だな」



 お前それでも自称未来の妻かと言いたくなったが、恥ずかし過ぎるので不快な表情を作るだけにとどめておく。



「あ」



「なんだよ」



「もちろんあたしは京ちゃんのこと、声も顔も性格も全部好みだから誤解しないでね?」



「......うっせぇ」



「あははっ! 照れてる照れてるぅ」



「お前こそ顔赤いぞ」



「そりゃー告白まがいな事言えば、さすがのあたしも照れますよー」



「こ、告白......」



 突然の言葉に心臓が嫌な跳ね方をする。


 なんというか、心奈に出会ってからというもの、非常に心臓に悪い。


 そんな京介の気持ちなんて知りもしないだろう、心奈が再び話し始める。



「でね、その夢咲さんなんだけど、あたし独自の調査によると、結構な数の男子から告白されているみたい」



「へ、へぇー。あの飛鳥あすかがねぇ」



「動揺してるなー? ほんと、京ちゃんってわかりやすい」



「......悪かったな」



「ふふっ。京ちゃんと話すようになったの大学に入ってからだから、高校生の京ちゃんと話すの新鮮で楽しいな」



「......あそ」



 突然そんな笑顔向けないで欲しい。


 本当にいちいち心臓に悪い。



「それより、さ」



「ん?」



 ちょいちょいと自分の唇を人差し指で続く心奈が上目遣い気味に見上げてくる。



「な、なんだよ......」



「もぉ! 相変わらず察しが悪いなぁ!」



「はあ!?」



 え。キ、キス!?


 眉を曲げて人差し指でなぞる心奈の形のいい桜色の唇は瑞々みずみずしくて、妙になまめかしい。


 おねだりする様に人差し指をちょんちょん触る心奈の姿に思わず喉が鳴る。



「ねぇ。何考えてるか知らないけど、あたしが欲しいのそれね?」



 目を細めた心奈が京介の持つコッペパンを指差す。



「あ、あー......これ、ね」




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