2-1.幼馴染より気になるあいつ




「学年主席、クラス委員、バスケ部エース、圧倒的ルックス。それでいて周りに優しい人気者。非の打ち所がないってのは、まさにこの事だね」



 人の席に腰掛けて腕を組み、似合わない神妙なつらを浮かべてうんうんうなる心奈を見下ろす様に眺める。


 さっき階段で話し込んでしまい二人揃って授業をサボってしまった京介と心奈は、この休憩時間の前半でこってりと先生からありがたいお説教を頂いてたった今教室に戻ってきたばかりだ。



「唯一のは救いは夢咲さんが幼馴染って事か......」



「なんで救いなんだよ?」



「幼馴染って、なんか小さい頃は良い関係だったとかそう言うのよく聞くじゃん?」



「少女漫画の読み過ぎだ」



 付き合いきれないと言う意味を込めて、特大のため息をついて心奈に背中を向けると、てのひらを掴まれてしまう。



「は?」



 感じる体温。振り返った先にいた心奈が眉を曲げて不満を頬に蓄えて膨らませている。



「ちょっと待ってよ! まだ話してる途中だよっ」


 再び集まるクラスメイト達の視線。


 徐々に加速していく心臓の鼓動が苦しくてまぶたを強く閉じる。



「どしたの? 体調悪い?」



 瞼を開けた先にいたのは相変わらず手を握ったまま首を傾げる心奈。その顔に羞恥心は微塵も感じられなくて、もやっとする。



「別に......」



 ......なんか自分だけドキドキしてバカみたいだ。


 やられっぱなしはしゃくなので、心奈に握られた掌を握り返してその細い白い腕を引っ張って無理やり京介の席から立たせる。



「きゃっ!? な、なに?」



「売店行こうぜ。腹減ったし」



 自分でやっておいてなんだが、もの凄く恥ずかしい。


 だが、恥をかいた分、多少の成果はあったのかもしれない。


 先ほどまで余裕を見せていた心奈の頬がなんとなく紅くなっている......気がする。

 


「そ、そうだねっ! 確かにお腹空いたや。まだいいパン残ってるかなー?」



 元気よく返事した笑顔の心奈を連れ立ってやけに視線の集まる居心地の悪い教室を京介は再び後にした。





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