第5話 一緒に寝るくらい仲良くなったから、心配にもなる
授業が終わると、視界の端で心ちゃんが全力疾走していた。なにか急用でもできたのだろうか。
まあ、急用ができたのは俺も同じだ。
いつの間にか引き出しに入っていたカードを取り出す。
『今夜十九時、ルルイエのカギを頂戴しに参上する』
そんな、俺にはよく分からないことが、カードには書いてあった。
なにそれ、ルルイエのカギ? 見たことも聞いたこともないけど、ダークさんが選んだってことは、それなりに貴重な物なのかな。多分一般公開されている物だろうし、俺はそれが公開されている場所に向かえば良いわけで……
いや、そもそもそれがなにか分からないのに、行きようがないよな。
そりゃ調べて行けば良いんだろうけど……なんだかめんどくさい。この街に住んでいて聞いたことがないということは、この街とは離れた場所のはず。あまり遠出はしたくないんだよなぁ。
「なあひかり! これ見たか!」
しぶしぶスマホを取り出そうとした俺だったが、そんな俺の視界がなにかに遮られた。
「うおっと、なにこれ?」
「怪盗ダークの予告状だよ! 今すげぇニュースになってるんだってさ!」
「予告状? えっと……」
『ご覧ください! こちらの藤堂家に、つい先程予告状が届きました!』
藤堂家。確か有名な財閥だったはず。その本家はとても豪邸で、外観はまるで美術館のよう。
「確かに美術館みたいだけど……ここって家だよね? 家からも盗むんだ」
「まあ、そういうこともあるんじゃないか? ただ、今回はちょっと特殊なケースだ。この藤堂家。コレクションしているお宝を一般公開してるんだよ。だから今回ターゲットになったルルイエのカギも公開されている。その公開されているものを公衆の面前で盗む! 怪盗ダークは、この機会に更なる知名度アップを狙っているんだろう!」
多分、盗みやすくて俺が入れるからだと思う。
「だが、ここでの注目すべきは怪盗ダークではない!」
「え?」
「怪盗ダークが来る場所に、奴は必ず現れる!」
「それってもしかして、探偵ハート?」
「そう! まだ来ていないようだが、これまで惜敗続きの探偵ハート。そんな探偵ハートは、戦いを重ねる度に怪盗ダークに迫っているんだ」
「それじゃあ、今回ダークさんを捕まえられる可能性が……」
「かなり高い!」
それって、ダークさんピンチ?
……仲良くなっちゃったからか、ちょっと不安になってきた。普通に考えればこのまま捕まるべきなんだろうけど、今晩いろいろ文句言うつもりだったし、なんだかモヤモヤする。
「そこで、お前に一つ提案がある」
「提案?」
「この藤堂家。行ってみないか?」
「それは良いけど、予告状来たのに入れるの?」
「そうだ。実はな、怪盗ダークは探偵ハートにしか攻撃しないから割と安全なんだ。加えて、怪盗ダークが来た場所には客が増えるっていうジンクスがあってな。エンターテイメントとして公開することが多い」
「お宝盗まれる確率上がりそうだね」
「お宝一つ減る代わりに客が増えるんだ。施設側としても、それほど悪い条件じゃない。それに、探偵ハートは誰が居ようがお構いなく、怪盗ダークだけを狙えるしな」
狙うという言葉を聞いて、ダークさんの足の怪我を思い出した。ダークさんにあんな怪我を負わせられるのだ。実力は拮抗していると見ていいだろう。
……ホントに大丈夫なのかな。
ひとまず俺達は、ここから一時間ほど電車を乗り継いだ先にある藤堂家へと向かった。
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