ずっと一緒にいてね

八月森

週明けの教室にて

 朝の教室。

 ガヤガヤと騒がしいクラスメイトたちを眺めつつ、席についてスマホを弄っていたあたしの元に、いつものように一人の女子生徒が近づいてくる。

 小柄で童顔、茶髪のショートボブ。隣の席の夕奈ゆうなだ。


「おっはよー、朱里しゅりたん!」


「おはよ」


 朝からテンションの高い夕奈に対して、あたしは淡白に応える。まだ眠いのだ。


「あぁ……今日も朱里たんは顔がいいなぁ……長い黒髪も麗しいし、眠そうな瞳もたまらない! そっけない挨拶もいい! 愛してる!」


「はいはい、ありがと」


 いつものことなのでこれも淡々とあしらう。

 他人から大人っぽいと言われることが多いあたしからしてみれば、あんたみたいな可愛らしい外見のほうが羨ましい。調子に乗りそうだから口にはしないけど。


 と、そこで夕奈は不意に、あたしの顔をまじまじと見る。気づいたか。


「あれ……? 朱里たん、そのヘアピンは……」


 あたしの髪は、月をモチーフにしたヘアピンで留められ、飾り付けられていた。先週まではつけていなかったものだ。


「あ、これ? 可愛いでしょ。駅前の雑貨屋さんで買ってきたんだ」 


「い、いつ?」


「こないだの休みの日に」


「私、聞いてない!」


「だってあんた、その日部活だったでしょ」


「そうだけど、でも! ……というか、一人で? それとも……」


「えーとね、2組の――」


「待って! やっぱ話さないで! それ以上聞いたら私、嫉妬で爆発しちゃいそう!」


「爆発しちゃうんだー? それは見てみたいから詳しく教えたげる。その日は2組のさきと朝からお出かけしてね――」


「ぎゃー!? Sな朱里たんも素敵だけど今はやめてー!? あ、あ、ほんとに爆発する!」


 大仰な、けれど本人にとっては真剣なその反応を見て、あたしは眠気も忘れて笑みを浮かべた。


 小柄で可愛らしい外見が好き。

 浮き沈みの激しい性格が好き。

 大人っぽさにコンプレックスを抱えるあたしを、それでも好きって言ってくれるところが好き。

 だから、ずっと離さないで、一緒にいてね。

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ずっと一緒にいてね 八月森 @hatigatumori

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